日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボストン美術館」の意味・わかりやすい解説
ボストン美術館
ぼすとんびじゅつかん
Museum of Fine Arts, Boston
ボストンにあるアメリカ最大級の美術館。市民の熱意と数人のコレクターの作品寄贈により、1870年に設立され、1876年に正式開館。ハンチントン通りの現在地に新しい建物が建設、公開されたのは1909年のことである。エジプト、ギリシア・ローマ、彫刻・工芸、染織、絵画、版画、素描の各部門からなるヨーロッパとアメリカ美術のコレクションのなかには、ハーバード大学とボストン美術館の共同発掘でもたらされた『メンカウラ王と王妃』、ローマ国立美術館(テルメ美術館)の『ルドビージの玉座』と同種の『ボストンの玉座』とよばれる浮彫り台座、そしてルネサンスから現在に至る絵画のなかではとくに近世以降のコレクションが充実している。そのなかには60点以上のミレー、34点のモネ、『ブージバルの踊り』を含む19点のルノワールの作品などがある。
しかし、この美術館を特徴づけているのは、なんといっても東洋美術のコレクションである。大森貝塚を発見したハーバード大学動物学教授モース、彼の紹介で東京帝国大学で教鞭(きょうべん)をとったフェノロサ、その友人で7年間日本に滞在した外科医ビゲローWilliam Sturgis Bigelow(1850―1926)ら、ボストン出身の熱心な日本美術収集家により、『法華(ほっけ)堂根本曼荼羅(まんだら)』『大威徳明王像』『平治(へいじ)物語絵巻』、尾形光琳(こうりん)の『松島図屏風(びょうぶ)』、そのほか仏像、工芸、浮世絵版画など、日本美術第一級の名品が収集されている。これには、この美術館の東洋美術部に勤めて収蔵品の整理・購入に携わった岡倉天心の存在を忘れることはできない。中国美術では徽宗(きそう)皇帝が張萱(ちょうけん)の原本を模した『搗練(とうれん)図巻』などがある。
[湊 典子]
『『浮世絵聚花1~3・補巻1・2 ボストン美術館』(1978、82、83、85・小学館)』▽『ヤン・フォンティン、呉同編集『東洋陶磁11 ボストン美術館』(1980・講談社)』▽『『原色世界の美術第14巻 アメリカ・ボストン美術館ほか』(1987・小学館)』▽『『ラミューズ9――世界の名画と美術館を楽しむ ボストン美術館』(1992・講談社)』▽『アン・ニシムラ・モースほか編著『ボストン美術館日本美術調査図録 第1次調査』(1997・講談社)』▽『『週刊世界の美術館12・83 ボストン美術館Ⅰ・Ⅱ』(2000、2001・講談社)』▽『辻惟雄監修『ボストン美術館肉筆浮世絵』全3巻、別巻(2000・講談社)』▽『堀田謹吾著『名品流転――ボストン美術館の「日本」』(2001・日本放送出版協会)』