改訂新版 世界大百科事典 「エストレマドゥラ」の意味・わかりやすい解説
エストレマドゥラ
Extremadura
スペイン西端の地方で,カセレス,バダホス2県からなり,ポルトガルとの境界にある。大陸性気候で,夏は乾燥し非常に暑い。主要産業は畜産業,農業。羊毛,豚,コルクを産し,小麦,オリーブ,綿花も栽培される。エストレマドゥラの名は,〈ドゥエロ川の向こう〉を意味するように,キリスト教徒がドゥエロ川でイスラム世界と対峙していた時代に由来する。再征服(国土回復戦争)が宗教的熱狂を伴って進められる13世紀,この地方から好戦的貴族の集団,サンチアゴ騎士団,アルカンタラ騎士団が誕生した。アルフォンソ11世はマリア降臨伝説の村グアダルーペに壮大な修道院建造を命じ,サラド川の戦(1340)でイスラム軍を破った。以後グアダルーペは巡礼地となった。エストレマドゥラの戦士たちはナスル朝グラナダ王国征服に貢献すると,次には新大陸への冒険に向かった。〈征服者たちの祖国〉といわれるように,この地からピサロやコルテスをはじめ多くの征服者を輩出した。コロンブスが西インド諸島の島にグアダルーペと命名し,そこで最初のインディオの洗礼が行われたことから,この地方のグアダルーペは今日イスパニア文化圏統合の象徴となっている。16世紀以降広大な未耕作地は強大な牧羊組合(メスタ)の地となった。1952年のバダホス計画で,灌漑整備,再植林,農業の近代化が推進され,16世紀以来の移民の問題が解消された。しかし,大土地所有制や地域経済の後進性を今日でもかかえている。
執筆者:岡住 正秀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報