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エルスケン

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

エルスケン
えるすけん
Ed van der Elsken
(1925―1990)

オランダの写真家。アムステルダム生まれ。独学で写真を学び、1947年より故郷でフリーランスの写真家として活動を始める。49年カメラ片手にヒッチハイクでパリに赴(おもむ)き、その日暮らしの享楽的な生活を送っていた同世代の若者たちと寝食をともにしながら、彼らの虚無的で奔放な青春像を記録。このときの写真が、20世紀最大の写真展「ファミリー・オブ・マン」展(1955)の企画者、エドワード・スタイケンの眼にとまり、評価されはじめるなど反響を呼び、54年には生涯の代表作となった写真集『セーヌ左岸の恋』Love on the Left Bankにまとめられた。その後、「ファミリー・オブ・マン」展の出品者にも選ばれ、国際的に知られる写真家となった。オランダに戻ってからはアムステルダムを拠点にし、その街をテーマにするとともに旅をしながら世界各地で撮影した。58年にはアムステルダムのジャズ・フェスティバルに参加したジャズの巨人たちを捉えた写真集『ジャズ』Jazzを出版。翌59年には、フランス領赤道アフリカを取材した写真集『バガラ、中央アフリカ』Bagara, Central Africaを出版。同年、世界旅行を敢行し、アジア、北米、中南米まで足をのばして撮影した。このときの写真は64年の写真集『Sweet Life』に結実する。また1960年代以降、写真と並行してドキュメンタリー映画の制作にも力を入れた。
 出世作『セーヌ左岸の恋』は、パーソナルなドキュメントを、虚構を織りまぜた人間ドラマとして仕立てた作品であり、その内容とともに手法も評価された。さらに、コントラストが強く、荒々しいタッチのイメージも斬新な表現として注目された。当時、ヨーロッパではドイツを中心に主観的写真の運動がおこっていた時期でもあり、作家の個性を前面に出したエルスケンの作品は、ドイツのオットー・シュタイナートによって開催された展覧会、第2回「主観的写真」展(1954)にも出品されている。しかし、彼自身は、時代の潮流に与(くみ)することなく、極めて直感的な写真家として活動した。自己を世界に投げ出して現実と一体化するという自分の写真の方法を、彼は「パーソナルな写真」と呼んだ。「パーソナル」とはいってもジョン・シャーカフスキーが後にその著書『鏡と窓』Mirror and Windowで使ったその意味とは異なる。例えば、同時代のヨーロッパの写真家であり同じく「ファミリー・オブ・マン」展に出品していたロバート・フランクが有していた、個的でありながら批評的なまなざしとは本質的に異なっている。エルスケンの場合、あくまでも人間性への限りない愛情と尊敬に基づいた、世界への個人的なコミットメントという意味であった。
 直感的で情感に満ちた語り口の作風は、写真家本人の気取らない性格とともに、多くの人々から共感をもって受け止められた。1959年(昭和34)には初来日し、細江英公など当時の意欲的な写真家たちと親しく交流して、日本の写真界にも少なからぬ影響を与えた。また、その作品は世代を超えて日本でも幅広く支持されている。日本は被写体としても重要で、1980年代にも来日を重ねている。日本で撮った仕事は、前出の『Sweet Life』と『ニッポンだった』(1987)、『日本発見』(1988)にまとめられている。
 90年12月、エルスケンは癌との闘病の末にこの世を去った。近づく死を前にして、集大成となる写真集『ワンス・アポン・ア・タイム』Once Upon a Time(1990)を編集し刊行、また同名の大回顧展がアムステルダムのステデリク美術館で開催された。さらに、彼は自らの闘病の姿を被写体として死ぬ直前までビデオで記録しつづけ、その作品「Bye」をオランダと日本のテレビで公開した。最期まで、写真家・映像作家としての自らのアイデンティティを貫いた。[深川雅文]
『吉本普一郎訳『Sweet Life』(1968・東京写真専門学院出版局) ▽中野恵津子訳『エルスケン巴里時代 1950―1954』(1985・リブロポート) ▽中野恵津子訳『エルスケンニッポンだった――1959・1960』(1987・リブロポート) ▽ポール・ネルム、大沢類訳『ジャズ 1955―1959・61』(1988・リブロポート) ▽中野恵津子訳『ワンス・アポン・ア・タイム』(1993・リブロポート) ▽大沢類訳『セーヌ左岸の恋――エルスケン写真集』(1998・東京書籍) ▽中野恵津子・大沢類訳『ニッポンだった&After――エルスケン写真集』(2000・東京書籍) ▽「Once Upon a Time エルスケン写真展展覧会図録」(カタログ。1993・朝日新聞社文化企画局) ▽Bagara, Central Africa (1959, De Bezige Bij, Amsterdam) ▽Eye love You (1977, Holkema & Warendorf, Amsterdam) ▽Amsterdam!; Old Photographs (1980, van Holkema & Warendorf, Amsterdam) ▽Paris!; Old Photographs (1981, Booking International, Amsterdam) ▽Ed van der Elsken; Fotografie + Film 1949-1990 (catalog, 2000, Kunstmuseum, Wolfsburg)』

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