ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルバカン」の意味・わかりやすい解説
エルバカン
Erbakan, Necmettin
[没]2011.2.27. アンカラ
トルコの政治家。トルコ初のイスラム原理主義者の首相(在任 1996~97)。イスタンブール工科大学で機械工学の学位を取得し,ドイツ連邦共和国(西ドイツ)アーヘンのライン=ウェストファーレン工科大学に学んだ。1969年無所属で国会議員に当選し,翌 1970年イスラム政党を設立したが,1971年に軍事政権から党の活動を禁止された。1972年イスラム政党を再結成し,副首相を 2回務めたが,1980年再び軍部により党の活動を禁止され,1987年まで政治家としての活動も禁止された。政界復帰後,イスラム政党の福祉党の指導者となり,1995年の選挙を前に,北大西洋条約機構 NATOからの脱退,イスラエルとの軍事協力の廃止,シリアやイランとの関係強化を訴えた。福祉党は定数 550の議会で 158議席を獲得して最大勢力となり,トルコの選挙史上初めてイスラム政党が勝利を収めた。難航した連立工作の末,1996年7月正道党と連立政権を樹立。エルバカンと正道党のタンス・チルレル党首が交替で首相を務めることになったが,福祉党による国家のイスラム化を危惧した軍部により辞任を強いられ,1997年6月に首相の座を退いた。福祉党は 1998年初めに解党。エルバカンは 5年間にわたって政治活動を禁じられたうえ,世俗主義のトルコ政府を非難した 1994年の演説で憎悪をあおったという理由で 2000年に有罪判決を受けた。2002年には福祉党解党時に党の資金を横領したかどで有罪になり,2年以上の自宅監禁を言い渡された。2003年に政治活動を再開し,イスラム政党の至福党に参加した。
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