エルー(英語表記)Paul Louis Toussaint Héroult

デジタル大辞泉 「エルー」の意味・読み・例文・類語

エルー(Paul Louis Toussaint Héroult)

[1863~1914]フランス冶金やきん学者。電気分解による金属アルミニウム製法(ホール‐エルー法)や電気製鋼炉エルー炉)を発明した。

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改訂新版 世界大百科事典 「エルー」の意味・わかりやすい解説

エルー
Paul Louis Toussaint Héroult
生没年:1863-1914

フランスの電気化学・冶金技術者。溶融塩電解によるアルミニウム製造法,およびエルー炉と呼ばれるアーク電気炉の発明者。ノルマンディーのなめし皮工場主の子に生まれ,1882年パリ鉱山学校に入学。父の死で中退し,家業を継いだ。そのかたわらアルミニウムの電解採取法について実験し,アメリカのC.M.ホールとは独立に,86年までに氷晶石の溶融浴中で黒鉛を電極として電気分解するとアルミニウム金属が得られること,および酸化アルミニウムが溶融氷晶石中に溶解することを発見した。87年にはスイス冶金会社がノイハウゼンで,88年にはフランス電気冶金会社がフロジェで,エルーのアルミニウム電解採取法を工業化した。88年エルーは同法の特許を得た。ラ・プラスに大容量水力発電所を建設して経営に当たるかたわら,電気炉の研究を続けた。94年には炭化カルシウムの製造法,続いてコランダムフェロクロムフェロシリコンなどの製法も開発した。1900年に特許を得たエルー炉は,炉中に2本の黒鉛電極を直立し,電極-装入物間のアークの発熱,および装入物中を通過する電流の抵抗発熱を利用して,装入物の溶融,精錬を行うもので,低炭素合金鉄や鋼の製造が可能である。さらにエルーは,この炉を傾注式にし,3本電極で3相交流を使用するなどの改良を加えた。10年代以後の電気製鋼の急速な発展はエルー炉の発明によるところが大きい。
アーク炉 →アルミニウム
執筆者:

エルー
Paul-César Helleu
生没年:1859-1927

フランスの版画家,画家。モルビアン地方に生まれる。世紀末のいわゆるベル・エポックのパリやロンドンの社交界の婦人像を数多く版画化し,ファッションにも影響を及ぼした。ドライ・ポイントの技法による流麗な刻線に妙技を発揮。その作品の多くは社交界絵画に特有の唯美的な甘さを持つが,ときに冷たい優美さをたたえた佳品もある。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エルー」の意味・わかりやすい解説

エルー
えるー
Paul Louis Toussaint Héroult
(1863―1914)

フランスの冶金学者(やきんがくしゃ)。アルクールに生まれ、1882年パリの鉱業大学に入学、金属の電気化学的製法の研究を行った。1886年溶融氷晶石中の酸化アルミニウムを電気分解してアルミニウムを製造する直接電解法(エルー法)の特許を得た。翌1887年には5ボルト、4000アンペアのエルー式電解炉の建設を指導した。電解法は、電力技術の進歩を背景に、従来のナトリウム還元法より格段に経済的な方法として急速な普及をみせた。エルーは電解炉でさまざまな金属製造の試験を行い、1900年にはくず鉄を利用して鋼鉄をつくることに成功、1902年アーヘン工業大学より名誉工学博士号を贈られた。

[高橋智子]

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百科事典マイペディア 「エルー」の意味・わかりやすい解説

エルー

フランスの冶金学者。1886年米国のC.M.ホールに遅れること1〜2ヵ月で独立にアルミニウムの電解冶金法を発明。1888年に特許を得た。のち製鋼用電気炉(エルー炉)を発明するなど電気冶金に寄与。炭化カルシウム,コランダム,フェロクロムなどの製法開発でも知られている。
→関連項目ホール

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世界大百科事典(旧版)内のエルーの言及

【鉄】より

… 20世紀に入ると転炉,平炉と並んで電気炉製鋼法が工業化された。P.L.T.エルーの1900年のアーク炉による製鋼の工業化がその発端である。平炉と転炉は主として普通鋼の製造に使用され,電気炉は主として合金鋼の製造の分野でるつぼ鋳鋼法に代わって大発展を遂げた。…

※「エルー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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