日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭化カルシウム」の意味・わかりやすい解説
炭化カルシウム
たんかかるしうむ
calcium carbide
カルシウムの炭素化合物。工業的には単にカーバイドまたはカルシウムカーバイドという。酸化カルシウムとコークスを電気炉中で約2000℃に加熱溶融して製造する。これは不純物を含み灰黒色を呈する。カルシウムの液体アンモニア溶液にアセチレンを通じて生じた結晶を真空中で加熱すると、純粋の無色の結晶が得られる。Ca2+イオンとC22-イオン(アセチレンからプロトンが解離して生じたアセチリドイオン)のイオン結晶。乾燥空気中では安定であるが、350℃で酸化される。窒素とは約600℃以上で反応し、カルシウムシアナミドCaCN2を生成する。水と反応してアセチレンを発生する。
CaC2+2H2O→C2H2+Ca(OH)2
このアセチレンは有機合成用に多く用いられたが、現在では、この用途は石油を原料とする方法に置き換えられている。主要な需要は石灰窒素の製造原料および溶切断用アセチレンバーナーに向けられている。製鋼における脱硫、脱酸剤としても用いられる。
[鳥居泰男]