炭化カルシウム(読み)タンカカルシウム(その他表記)calcium carbide

デジタル大辞泉 「炭化カルシウム」の意味・読み・例文・類語

たんか‐カルシウム〔タンクワ‐〕【炭化カルシウム】

カルシウム炭化物生石灰コークス電気炉で熱して得られる灰色の固体。水を加えるとアセチレンを発生する。石灰窒素の製造原料化学式CaC2 カーバイド炭化石灰

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精選版 日本国語大辞典 「炭化カルシウム」の意味・読み・例文・類語

たんか‐カルシウムタンクヮ‥【炭化カルシウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( カルシウムは[オランダ語] calcium ) カルシウムの炭化物。生石灰をコークスなどと電気炉中で加熱・反応させて製する。化学式 CaC2 無色透明な正方晶系の結晶であるが、普通には不純物のため灰色となっている。アセチレン・石灰窒素の原料、製鋼用脱硫・脱酸剤、アセチレンランプのガス発生料などに用いられる。カルシウムカーバイド。カーバイド。炭化石灰。

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改訂新版 世界大百科事典 「炭化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

炭化カルシウム (たんかカルシウム)
calcium carbide

化学式CaC2アセチレン化カルシウムカルシウムアセチリドともいい,工業的にはカルシウムカーバイドあるいは単にカーバイドという。1891年はじめて工業的に電気炉で合成され,最初は溶接,金属切断あるいは灯火用アセチレン製造原料としてつくられたが,20世紀初めころ石灰窒素の製造が工業化されて,その原料としての需要が拡大した。さらに第1次大戦のころにはアセチレンからアセトアルデヒド,酢酸,エチルアルコールなど多くの有機工業薬品がつくられるようになり,その後急速にカーバイド工業は発展して第2次大戦後の1960年ころまで大規模な生産が続けられた。しかし1955年ころからアセチレンを出発原料としない石油化学の発展によってカーバイド工業は急速に低落し,さらに石灰窒素が尿素にとって代わられ,また石油系LPGなどが溶接断分野に登場したことなどもあって,生産量も激減してきている。

純粋なものは常温で無色,正方晶系結晶。通常は不純物を含み灰色。融点2300℃,比重2.22(18℃),屈折率1.75。乾燥していると安定。350℃以上で酸化され,窒素と熱すると600℃以上ではカルシウムシアナミドCaCN2となる。

 CaC2+N2─→CaCN2+C

常温で水と反応してアセチレンC2H2を発生し,多量の熱が出る。この反応は空気中の水蒸気によっても起こるので,密閉容器に保存する必要がある。

 CaC2+2H2O─→Ca(OH2+C2H2

このとき工業用カーバイドでは不純物として硫黄リン,窒素,ケイ素などを含むので,アセチレンのほかに硫化水素ホスフィンアンモニアなどが混じってくるので悪臭がある。4種の変態があり,それぞれの安定領域は三斜晶系25℃以下,正方晶系25~447℃,単斜晶系440℃以下(準安定),立方晶系450℃以上。結晶構造は,Ca2⁺とC22⁻とが塩化ナトリウム型構造に並んだ炭化カルシウム型構造で,C22⁻のC-C結合距離は1.19Å。

酸化カルシウムと炭素の混合物を強熱してつくる。

 CaO+3C─→CaC2+CO

純粋なものを得るにはカルシウムシアナミドを真空中で加熱する。

 2CaCN2─→CaC2+2N2+Ca

工業的には生石灰と炭素材を電気炉中約2000℃で反応させる。工業製品の純度は77~84%である。

アセチレン原料として有機化学工業に用いられ,また石灰窒素の原料である。高温で金属化合物と反応して,還元,脱酸,脱硫,脱ハロゲンなどの作用があるため,冶金工業に用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

炭化カルシウム
たんかかるしうむ
calcium carbide

カルシウムの炭素化合物。工業的には単にカーバイドまたはカルシウムカーバイドという。酸化カルシウムとコークスを電気炉中で約2000℃に加熱溶融して製造する。これは不純物を含み灰黒色を呈する。カルシウムの液体アンモニア溶液にアセチレンを通じて生じた結晶を真空中で加熱すると、純粋の無色の結晶が得られる。Ca2+イオンとC22-イオン(アセチレンからプロトンが解離して生じたアセチリドイオン)のイオン結晶。乾燥空気中では安定であるが、350℃で酸化される。窒素とは約600℃以上で反応し、カルシウムシアナミドCaCN2を生成する。水と反応してアセチレンを発生する。

  CaC2+2H2O→C2H2+Ca(OH)2
このアセチレンは有機合成用に多く用いられたが、現在では、この用途は石油を原料とする方法に置き換えられている。主要な需要は石灰窒素の製造原料および溶切断用アセチレンバーナーに向けられている。製鋼における脱硫、脱酸剤としても用いられる。

[鳥居泰男]


炭化カルシウム(データノート)
たんかかるしうむでーたのーと

炭化カルシウム
  CaC2
 式量  64.10
 融点  2300℃
 沸点  ―
 比重  2.22(測定温度18℃)
 結晶系 正方(純粋なもの,ほかに3変態ある)
 屈折率 (n) 1.75
 硬さ  3

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化学辞典 第2版 「炭化カルシウム」の解説

炭化カルシウム
タンカカルシウム
calcium carbide

CaC2(69.10).IUPAC組成方式名称は二炭化(2-)カルシウム(calcium dicarbide(2-)).工業製品名としての通俗名はカーバイド.コークスと生石灰を,電気炉で2000 ℃ 以上に加熱してつくる.4種類の変態がある.常温では正方晶系,450 ℃ で立方晶系に転移する.無色の結晶.ただし,工業製品は不純物(炭素など)のため,黒灰色の塊.Ca2+ とC≡ C2-が岩塩型構造の結晶をつくるが,C≡ C2-は Cl のように球対称でないため,ひずんでいる.密度2.22 g cm-3(18 ℃).Ca-C 2.60,2.81 Å,C-C 1.19 Å.融点2300 ℃.水と反応してアセチレンを発生する.乾燥空気中では室温では安定であるが,350 ℃ 以上では酸化される.N2 と600 ℃ 以上で反応してカルシウムシアナミドCaCN2となる.高温では還元性で,多くの酸化物などを還元する.たとえば,CuS,CuO→Cu.おもな用途は石灰窒素肥料の原料,そのほか小規模アセチレン発生用(実験室・野外など).以前はレッペ反応で各種の有機化合物を合成するためのアセチレンを炭化カルシウムからつくったが,現在は石油化学製品にかわった.金属製造用の還元剤にも用いられる.消防法第3類危険物・自然発火性物質及び禁水性物質指定.[CAS 75-20-7]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「炭化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

炭化カルシウム
たんかカルシウム
calcium carbide

化学式 CaC2 。慣用名はカーバイド。カルシウムアセチリド,アセチレンカルシウムともいう。カルシウムシアナミドを炭素とともに真空中で加熱すると生成する。無色結晶,融点 2300℃。水と作用してアセチレンを生じるので,アセチレンの原料として工業的に用いられる。

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百科事典マイペディア 「炭化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

炭化カルシウム【たんかカルシウム】

カーバイド

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世界大百科事典(旧版)内の炭化カルシウムの言及

【アセチリド】より

…またI族以外の金属酸化物を過剰の炭素と加熱しても生成する。カーバイド(炭化カルシウム)CaC2は代表的なアセチリドである(カーバイドcarbideは,正しくはアセチリドを含む炭化物の総称)。無色の化合物が多いが,銅(I)(赤褐色),希土類元素(イットリウム,ランタン,ニオブなど。…

※「炭化カルシウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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