改訂新版 世界大百科事典 「オキナグサ」の意味・わかりやすい解説
オキナグサ
Pulsatilla cernua (Thunb.) Spreng.
山地の草原に生えるキンポウゲ科の多年草。根茎は直立し,太い根があり,根生葉を叢生(そうせい)する。根生葉は羽状複葉で,小葉は中~深裂し,さらに欠刻する。葉柄の基部は広がって葉鞘(ようしよう)となる。春,花茎を出し,1個の花を頂生し,その下に無柄の茎葉を輪生する。この茎葉輪はしばしば総苞と呼ばれる。植物体は白い長軟毛におおわれる。花は鐘状でうつ向いて咲き,萼片は6枚,平開せず外面は白い絹様毛を生じ,内面は暗赤紫色。おしべは多数。めしべも多数で有毛,花柱は長い。花後,花茎は伸長して高さ30~40cmになる。果実は瘦果(そうか)の集りで,各瘦果の花柱は伸びて4cm内外になり,3~4mmの白色の毛を羽毛状に生じる。和名の翁草は,白色の長い花柱をもった瘦果の集りを白髪の老人の頭に見たてたことによると思われる。本州,四国,九州,朝鮮,中国に分布する。本種に近い中国産のP.chinensis(Bunge)Regelを漢名で白頭翁というのも同じ意想である。
オキナグサ属Pulsatillaはイチリンソウ属にごく近縁で,瘦果の花柱が長く伸びることによってのみ区別され,しばしばイチリンソウ属に含められる。約30種が北半球に広く分布する。日本にはオキナグサのほかにツクモグサP.nipponica(Takeda)Ohwiがあり,北海道,本州の高山帯にまれに生える。
執筆者:田村 道夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報