デジタル大辞泉
「オストロフスキー」の意味・読み・例文・類語
オストロフスキー(Aleksandr Nikolaevich Ostrovskiy)
[1823~1886]ロシアの劇作家。ロシア‐リアリズム演劇の祖。作「内輪のことだ、勘定はあとで」「雷雨」「森林」など。
オストロフスキー(Nikolay Alekseevich Ostrovskiy)
[1904~1936]ソ連の作家。革命運動で活躍。自伝的小説「鋼鉄はいかに鍛えられたか」など。
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精選版 日本国語大辞典
「オストロフスキー」の意味・読み・例文・類語
オストロフスキー
- [ 一 ] ( Aljeksandr Nikolajevič Ostrovskij アレクサンドル=ニコラエビチ━ ) ロシアの劇作家。ロシア近代国民演劇を確立。代表作「貧乏は罪ならず」「雷雨」など。(一八二三‐八六)
- [ 二 ] ( Nikolaj Aljeksjejevič Ostrovskij ニコライ=アレクセービチ━ ) ソ連の小説家。革命運動で活躍。自伝的小説「鋼鉄はいかに鍛えられたか」など。(一九〇四‐三六)
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オストロフスキー
Aleksandr Nikolaevich Ostrovskii
生没年:1823-86
ロシアの劇作家。モスクワの官吏の家に生まれ大学法科に学んだが,演劇への情熱をおさえがたく中途退学。しかし父親のたっての希望から数年間裁判所に勤務,この体験をもとに戯曲の執筆をはじめ,処女作《内輪のことだ,勘定はあとで》(1850)以下,翻訳や合作を除く自作脚本だけでも47編が数えられる。これらの作品の半数は現在も上演され続けており,各世代の俳優は彼の作中の人物に扮することにより成長するといわれ,現代に通じる劇作の生命を物語っている。彼の作品は《森林》(1871)に代表される地主・商人階級の偽善と貪欲,打算と非情の世界,《実入りのよい地位》(1857)のように小役人,代言人,零落した寡婦など日々の糧にあくせくする市井人の生態,《才能と贔屓(ひいき)客》(1881)その他の舞台に生きようとする健気(けなげ)な志を抱きながら俗世間の荒波に押し流される役者の境涯,ロシア史を舞台とする一連の史劇と《雪娘》(1873)のような民間伝承もの,この四つに主題が大別されよう。彼の作劇法の特色は曲折に富む筋のおもしろさ,人物の鮮やかな形象と性格,そして題名やせりふがそのままことわざとなる簡潔で的確,しかも陰影と表現の豊かな舞台の言葉である。晩年の彼は当時の帝室劇場であったマールイ劇場の改革にとりくみ,その文芸部長と付属演劇学校長を兼ね,同劇場を中心とするロシア国民演劇の写実主義的伝統の確立に巨大な功績を残した。
執筆者:野崎 韶夫
オストロフスキー
Nikolai Alekseevich Ostrovskii
生没年:1904-36
ソ連邦の小説家。ウクライナに生まれ,釜たき,水夫などの労働のかたわら,小学校教育だけをやっと終えた。1919年,赤軍に志願して国内戦に参加したが,翌年重傷を負って除隊,以後は政治活動に専念,24年共産党に入党。27年からは寝たきりの生活に入り,翌年には視力も失われた。彼は自己の生き方や思想形成を主人公パーベル・コルチャーギンに投影した自伝的長編《鋼鉄はいかに鍛えられたか》(1932-34)を書き,一人の青年が革命と国内戦の中でいかに自覚的な共産主義者に育っていったかを示した。34~36年,長編《嵐に生まれ出る者たち》を執筆,第1部を完成したところで死去。
執筆者:原 卓也
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オストロフスキー(Aleksandr Nikolaevich Ostrovskiy)
おすとろふすきー
Александр Николаевич Островский/Aleksandr Nikolaevich Ostrovskiy
(1823―1886)
ロシアの劇作家。モスクワ大学法科を中退し、裁判所の役人となったが、演劇への情熱を断ちがたく、ついに劇作に没頭、生涯47編の戯曲を書き、ほかに翻訳と合作の脚本がある。処女作『内輪のことだ、勘定はあとで』(1850)をはじめ『雷雨』(1859)、『熱き心』(1868)、『最後のほどこし』(1877)は地主、商人社会の内面を暴き、彼らの偽善と貪欲(どんよく)、無知と横暴、打算と悪徳を、『森林』(1871)、『才能とひいき客』(1881)や『罪なき罪人』(1883)は、人々に喜びを与えようとするけなげな志をもちながら、非情な社会の荒波に押し流されてゆく、哀れな地方の役者の生活を描いた代表作。さらに『雪娘』(1873)を頂点とする詩情豊かなロシアの伝説や歴史に取材した一連の作品がある。これらに一貫する作劇法の特色は、曲折に富む筋立てのおもしろさ、登場人物の鮮やかな形象と性格、彼らの明快な言動である。オストロフスキーほど簡潔で的確、しかも陰影と表現に富む舞台のことばを駆使し、ロシア社会のあらゆる階層の生活と情景を生き生きと再現した作家はまれであり、「ロシア国民演劇の父」の名にふさわしい。また演出者、教育家としても活躍、当時の保守的な帝室マールイ劇場の改革のために闘い、晩年はその演劇学校長を兼務。同劇場は「オストロフスキーの家」ともよばれ、彼の作品のほとんどすべてを上演してきた。
[野崎韶夫 2016年1月19日]
オストロフスキー(Nikolay Alekseevich Ostrovskiy)
おすとろふすきー
Николай Алексеевич Островский/Nikolay Alekseevich Ostrovskiy
(1904―1936)
ロシアの小説家。労働者の家庭に生まれ、火夫や釜(かま)たきの仕事をしながら小学校を卒業、ソ連共産党の地下活動に参加する。1919年赤軍に入隊し、前線で重傷を負って除隊、失明とほとんど半身不随の肉体的試練と闘いながら自伝的長編小説『鋼鉄はいかに鍛えられたか』(第1部1932、第2部1934)を執筆、ソ連文学の模範的作品として高い評価を得る。この作品の成功により、35年にレーニン賞を受賞。続いて長編『嵐(あらし)に生まれいずる者たち』(1934~36)の執筆にかかったが、第1部を完成したのみで、尿毒症のため32歳で死去。
[安井侑子]
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オストロフスキー
Ostrovskii, Aleksandr Nikolaevich
[生]1823.4.12. モスクワ
[没]1886.6.14. コストロマ,シチェルイコボ
ロシアの劇作家。モスクワ大学法学部中退後,家庭裁判所に書記として勤務し,さまざまな家庭問題に触れ,さらに商事裁判所に転勤してブルジョアジーや商人たちとじかに接し,それらが彼の劇作に豊かな素材を与えることになった。約 50編の戯曲で,ロシア国民演劇の確立者となったばかりでなく,当時,帝室劇場であったマールイ劇場の改革のために努力し,晩年はその文芸部長と付属演劇学校の校長を兼務し,ロシアのシェークスピアと仰がれるにいたった。おもな作品は『破産者』 Nesostovatel'nyi dolzhnik (1850) ,のち改題されて『内輪のことだ,あとで勘定を』 Svoi lyudi-sochtëmsya (50発表,61初演) ,『貧乏は罪にあらず』 Bednost' ne porok (53) ,『雷雨』 (59初演) ,『熱き心』 Goryachee serdtse (68) ,『森林』 Les (70) ,『雪娘』 Snegurochka (73) など。
オストロフスキー
Ostrovskii, Nikolai Alekseevich
[生]1904.9.29. ウクライナ
[没]1936.12.22. モスクワ
ソ連の作家。自伝小説『鋼鉄はいかに鍛えられたか』によって,国内戦のさなかに一青年が不屈の闘志をもつ共産党員に成長する過程を描き,1935年にレーニン勲章を与えられた。主人公パーウェル・コルチャーギンの形象には,ウクライナの貧農の子として生れ,革命の嵐に身を捧げ,しかも病魔のため両眼を失い,なおかつ堅固な意志をもち続けた作者オストロフスキー自身の姿がそのまま反映されている。
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「オストロフスキー」の意味・わかりやすい解説
オストロフスキー
ロシア(ソ連)の作家。革命後の内戦時代に少年の身で党活動に協力。隻脚,不治の関節炎,失明に苦しめられながら,その体験をつづった《鋼鉄はいかに鍛えられたか》(1932年―1934年)は,共産主義的人間の生き方を示すものとして,社会主義リアリズム文学の模範となった。
オストロフスキー
ロシアの劇作家。モスクワ生れ。闇(やみ)の王国といわれるロシア商人社会の風俗をリアリスティックに描いた数多くの戯曲で知られる。代表作は《雷雨》(1859年),《森林》《雪娘》など。
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世界大百科事典(旧版)内のオストロフスキーの言及
【ロシア文学】より
…ひとことでいってロシア演劇の名を高からしめたのは劇的表現力に富んだロシア民族の生んだ名優と名演出家であって,必ずしも演劇の基礎であり,〈文学的部分〉である戯曲ではない。劇作のみに専念した作家としてあげられるのは,A.N.オストロフスキーとスホボ・コブイリンの二人にすぎない。大劇作家という観点から見れば,A.N.オストロフスキーとA.P.チェーホフの二人につきる。…
※「オストロフスキー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」