オリバレス伯公爵(読み)オリバレスはくこうしゃく(その他表記)Conde-Duque de Olivares, Gaspar de Guzmán y Pimentel

改訂新版 世界大百科事典 「オリバレス伯公爵」の意味・わかりやすい解説

オリバレス伯公爵 (オリバレスはくこうしゃく)
Conde-Duque de Olivares, Gaspar de Guzmán y Pimentel
生没年:1587-1645

スペインフェリペ4世寵臣。当初,聖職者を志し,サラマンカ大学に学んだが,兄の死によって家督を相続したのを契機政治の世界に入った。フェリペ4世の皇太子時代に侍従となってその知遇を得,1621年の即位と同時に政治の実権を握った。独断専行の多い強気の野心家であったが,不眠不休で国事に励む有能な政治家でもあった。対外的には,カトリック擁護をスペインの使命と考え,国威宣揚のために三十年戦争への介入など,ヨーロッパの問題に積極的に関与した。国内では,新しい国家体制の確立を目指して強力な中央集権化政策を断行したが,自治の侵害を恐れる地方の反発を招き,40年よりカタルニャポルトガルをはじめ各地が反乱を起こし,スペインは瓦解の危機に瀕した。かくして,彼の強引な政策は内外ともに破綻し,43年に解任された。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「オリバレス伯公爵」の解説

オリバレス伯公爵(オリバレスはくこうしゃく)
Conde-Duque de Olivares (本名 Gaspar de Guzmán y Pimentel)

1587~1645

スペインの政治家。フェリペ4世の王太子時代に侍従を務めて信任を得,1621年の即位後は寵臣として政治の実権を握った。宮廷では専横的権力をふるったが,行財政改革に邁進する有能な政治家でもあった。各地方が強い伝統的特権を保持している「複合王政」スペインに中央集権的王政を導入しようと試み,対外的にはオランダとの戦争再開,三十年戦争への関与など好戦的な姿勢を貫いた。しかし40年代に入ると国内各地で反乱があいつぎ,43年に失脚した。

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世界大百科事典(旧版)内のオリバレス伯公爵の言及

【カタルニャ】より

…両王の結婚による半島の統一はこのように,決して画一的ではなかったし,また両国の諸制度,法体系,言語はそれぞれ生き続けていたのである。 ところが,1620年代にカスティリャのオリバレス伯公爵が画一的に半島を統治する政策を打ち出したため,カタルニャでは暴動が勃発した(1640)。このとき,フランスはカタルニャを支援し,オリバレス伯公爵の政策は失敗に帰したが,カスティリャとフランス王国の間で結ばれたピレネー条約(1659)により,ルーシヨン(ピレネー山脈の東端にあったカタルニャ領土)はフランスに奪い取られてしまった。…

【ケベード】より

…公爵の失脚と共に下野するが,21年フェリペ4世が即位すると宮廷に復帰した。しかし時の実力者オリバレス伯公爵と不和になり,国王のナプキンの下にオリバレスを中傷した詩をしのばせた罪にとわれ,4年間牢につながれるが,オリバレスの失脚によって釈放され,その2年後に没した。このような波乱に富んだ生涯を通して,スペイン社会の虚偽に満ちた現実をまのあたりにしたケベードは,さまざまなジャンルを用いてこの現実を描いたが,そこには一貫して現世的なものに対する蔑視や,死こそが唯一の真実であるといった信念が見られる。…

【スペイン】より

…このような状況の母体となったスペインの自然および17世紀までの歴史については〈イベリア半島〉〈スペイン帝国〉などの項を,また日本との関係については〈南蛮貿易〉などの項を参照されたい。
〔歴史〕

【18世紀スペイン】
 現代スペインの起源は,カスティリャ国王フェリペ4世(在位1621‐65)の寵臣オリバレス伯公爵の次の言葉に集約できる。〈陛下,ポルトガル王国ならびにアラゴン王国,バレンシア王国,バルセロナ伯国の国王であられるだけではなく,“スペインの国王”として君臨されてこそ満足すべきでありましょう〉。…

【スペイン帝国】より

…一般に16世紀から17世紀前半にかけて,ヨーロッパ,アメリカ,アジアの諸地域を支配し,かつ西ヨーロッパの列強に伍したころのスペインを指す。そして文化史の視点からは,この時代はスペインの黄金の世紀Siglo de Oroと呼ばれる。なお,〈スペイン帝国〉とは後世に造られた呼称であって,当時のスペイン王は自分の版図をカトリック王国Monarquía católicaと呼び慣らわした。さらに自国領以外の土地およびその住民に対する統治行為の意味に〈帝国〉を解するならば,〈スペイン帝国〉は1898年まで続いた。…

【フェリペ[4世]】より

…在位1621‐65年。治世当初より1643年まで,寵臣である野心的なオリバレス伯公爵が絶対的な権力を振るい,スペインの栄光を求めてヨーロッパ問題に積極的に介入し,また国内の統合促進を目ざして強引に中央集権化を図った。しかしいずれも失敗に終わり,スペインは国力を消耗して二流国に転落した。…

※「オリバレス伯公爵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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