オレンジ(ミカン科)(読み)おれんじ(英語表記)sweet orange

  • Citrus sinensis Osbeck
  • ミカン科

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ミカン科の常緑小高木。別名スイートオレンジ、アマダイダイ(甘代々)。原産地はアッサムで、中国およびインド、中近東を経て地中海、東アフリカに伝播(でんぱ)し、さらに世界に広まった。日本へは1888~1891年(明治21~24)ころ渡来した。冬季が温暖で乾燥する地帯に適し、熱帯から温帯南部に多い。花は5月ごろ開き、やや小形で白色、芳香に富む。果実は円形ないし楕円(だえん)形で、150~250グラム。果皮はむきにくい。香気が強く、甘味に富む。ビタミン類も多く、果肉100グラム中にビタミンC6ミリグラムのほかビタミンB類にも富む。

品種

枝がわりや実生(みしょう)変異が多く、100余品種が知られる。ヒュームH. H. Humeはアメリカにある品種群を次のように4大別した。

(1)スペイン系 スペイン人により導入され、フロリダに多い。大果で肉質はやや粗く、多雨にも耐える。インディアンリバー、パーソンブラウンなどの品種がある。

(2)地中海系 地中海沿岸から南ヨーロッパでおきた品種群で品質はよい。夏季乾燥する地方に適する。バレンシア、パイナップル、ジョッパ、ジャッファなどの品種がある。福原オレンジはユズ台に接いだジョッパの枝がわりといわれる。

(3)血ミカン系 南ヨーロッパ原産で、熟果の果皮や果肉は濃紅色。品質はよいが、血色が嫌われ減少しつつある。マルチーズブラッド、ルビーブラッドなどの品種がある。

(4)ネーブル系 多くの品種の果実は心皮の形成が二重ないし三重となってできたネーブルnavel(へその意味)をもつ。ネーブルオレンジはブラジル起源でセレクタオレンジの枝がわりといわれる。日本には1889年に導入された。比較的矮性(わいせい)で、雌性器官は受精能力があるが、花粉不稔(ふねん)のため種子なし果を結ぶ。しかし、よい花粉のできる品種と混植すると種子ができる。12月下旬から収穫され、品質はよい。本種には多くの枝がわりがある。結果率のよい鵜久森(うくもり)(1938年発表)、早熟の吉田や大三島、早熟で貯蔵性のある丹下(たんげ)、糖度が高く3、4月まで貯蔵のきく森田、甘くて豊産の清家(せいけ)その他がある。実生から得られたトロビタオレンジ(1916年発表)は果形は丸く150グラム程度で、へそはない。品質はよく豊産である。バレンシアオレンジはポルトガル領アゾレス諸島で発見された品種で、アメリカに導入(1870年)以来、広く栽培され、日本にも1903年(明治36)に入ったが耐寒性が弱い。本品種は世界一の生産量を示す。ほかにワシントンネーブルもよく知られている。

生産

オレンジの世界の総生産量(2005)は5985万8000トンで、ブラジル、アメリカ、中国、インド、イタリア、スペインなどが多い。日本(2004)では1110ヘクタール、1万4300トンを産し、年々減少している。

食品

生食のほかジュース、マーマレード、果皮の砂糖漬け、砂糖煮など利用面は広い。オレンジジュースは搾り汁を88~90℃に数秒つけ、製品中のフレーバーを分解する酵素を分解し、この液10キログラムに対し1.45キログラム前後のショ糖を加えて真空脱気してつくる。濃縮ジュースは、これをさらに43℃以下で真空濃縮して、糖度65度前後に加工したものである。多くはビタミンCを添加してある。オレンジマーマレードは生果10キログラムに対し、ショ糖1.1キログラム、粉末ペクチン25グラム、酸を少々加え、糖度を70度程度に煮つめてつくる。

[飯塚宗夫]

文化史

オレンジの名は、サンスクリット語のナガルンガNagarunga、ヒンディー語のナルンジーNarungeeからアラビア語のナルンジNarunjiを経て英名となった。ナガルンガは、サンスクリット語の文献では酸っぱいサワーオレンジ(ダイダイ)を意味し、疲労回復や消化促進の薬に使われた。甘いスイートオレンジは、いつ、どこで誕生したのかはっきりしていないが、紀元後の早い時期に、中国あるいはベトナムからインドへ伝わり、14世紀までにはイタリアに達していた。本格的にヨーロッパに広がるのは、1498年インドに到着したバスコ・ダ・ガマの航海以降で、東洋から直接導入されてからである。なお、西洋の結婚式にオレンジの花が使用されるのは、白い花を純潔の象徴とし、またオレンジの実の多産性と木の常緑性から子供に恵まれ、繁栄するようにと願う慣習からである。

[湯浅浩史]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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