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果樹園芸 かじゅえんげい fruit horticultur

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

果樹園芸
かじゅえんげい
fruit horticultur

果実の採取を目的とする園芸。生産物の販売を目的とするものと家庭の自給用のものとがある。日本は南北に長い立地条件のため,みかん,ぶどう,りんごをはじめ果実の種類が豊富である。大部分が国内で消費されるが,みかん,りんごなどはカナダ,旧ソ連などへ少量ではあるが輸出されている。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

果樹園芸
かじゅえんげい

果樹を対象として行う園芸をいう。人類が作物の栽培方法を覚え、狩猟や採集の生活から脱して定住生活に入ると、果樹もまた栽培されるものとなってきた。果樹類は開花、結実に相当の年月を必要とする。栽培にあたっては、幼苗期はもちろん、生産年齢に達してからのちも鳥獣や外敵を防ぎ、行き届いた管理が必要で、園芸という文字どおり畑に柵を巡らし、その中できめ細かな栽培管理を行う営みにもっともふさわしい作物である。この営みは古代より芽生えていた。[飯塚宗夫]

果樹の特徴

〔1〕木本(もくほん)植物としての特性 (1)永年性の木本作物であるので、収穫までに長年月を要するが、収穫の年数も長い。幼苗期は4~5年で、収穫期はモモのように短くて10余年、ミカンのように長いと50年以上にも及ぶ。栽培管理の成果は単年度で現れるばかりでなく、少なくとも2、3年は継続する。(2)育種に長年月を要する。(3)果樹の多くは遺伝子的には不純(正確にはヘテロという)である。このため、繁殖は実生(みしょう)(有性)繁殖によらず、接木(つぎき)、取木、挿木などの栄養(無性)繁殖によってその形質を保持する。(4)接木繁殖では、台木の性質を栽培に利用して、結果期の促進、品質の向上などを図ったり、また、樹高を制限したり、台木のもつ病虫害抵抗性などを利用することができる。リンゴの矮性(わいせい)台木、ブドウのフィロキセラ免疫台木などはその例である。(5)栄養系によって伝染するウイルスやファイトプラズマは接穂(つぎほ)など栄養系に伝わるので、栄養系による繁殖では、採穂母樹の無毒性の検定が必要である。(6)果樹には自家不結実性をもつものが多く(ナシ、サクランボなど)、また、雌雄異株性のものもしばしばある(キウイフルーツ、ピスタチオなど)。自家不結実性のものでは交配親和性の品種を、雌雄異株性のものでは雄の木を混植する必要がある。
〔2〕経済的特性 (1)果樹は1個体の専有面積が大きいが、空間の利用も大きい。(2)果樹園開設にあたっては、大きな投下資本を必要とする。したがって、他品種への植え替えはむずかしい。(3)果実は労働付加価値のきわめて高い商品で、そこに栽培技術が生きる。(4)果実は多面的利用が可能であるうえに、柑橘(かんきつ)類やバナナのように貯蔵輸送性のきわめて高いものもある。貯蔵輸送性あるいは加工性に富む果樹は、大企業的栽培が可能である。
 果樹園の開設にあたっては、果樹のもつ上記諸特性を十分考慮し、園地の選定、生産基盤の整備、果樹の種類・品種の選定、整枝・栽培方法などの決定について、長期的見通しのもとに万全の注意を払う必要がある。[飯塚宗夫]

日本の果樹栽培史

果樹類原生種の少ない日本では、日本グリ、日本ナシなど栽培化されてはいるが、その種類はきわめて少なく、古くから外国種の利用が重んぜられた。『万葉集』に現れるスモモやモモも中国から伝わった。導入が明確な目的のもとに行われたのは、垂仁(すいにん)天皇のとき、常世国(とこよのくに)から非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)を探してきた田道間守(たじまもり)(『日本書紀』)が初めであろう。1186年(文治2)甲斐(かい)国八代(やつしろ)郡(明治初期の祝村、現在の山梨県甲州市勝沼町地区)で発見された甲州ブドウは、ヨーロッパブドウの血を受け継ぐもので、鎌倉時代に広まった。そのころまでには、ナツメ、ユズ、ザクロ、ビワ、カキなども知られている。とくに柑橘類とブドウは園地として栽培され始めた。さらに室町、安土(あづち)、江戸と続く時代をみると、キンカン、ワリンゴ、アンズ、クネンボ(九年母)、ハタンキョウ、イチジク、中国系サクランボなどが登場し、甲斐のブドウ、丹波(たんば)のクリ、紀州のミカン、大和(やまと)のカキ、越後(えちご)のナシ、伏見(ふしみ)のモモなどの産地がみられたが、本格的な外国果樹の導入と栽培は明治になってからである。
 なかでも開拓使官園(1871)、内藤新宿試験場(1872)、三田(みた)育種場(1874)などで行った導入果樹の試験栽培や配布その他の業績は大きく、リンゴ、アメリカブドウ、スイミツトウ、サクランボなどが広く普及していった。1902年(明治35)には農事試験場園芸部が設置され、本格的な試験、研究も始まった。これより先、1872年(明治5)には札幌農学校の前身である開拓使仮学校が、1890年には帝国大学農科大学(現東大農学部)が創設され、学生の指導と研究が行われてきた。
 日本の近代化に伴い果樹園芸も徐々にではあるが発展し、大正、昭和に入った。太平洋戦争の始まった1941年(昭和16)には果樹の栽培総面積は20.2万ヘクタール、生産量は140万トンを超えていた。しかし、戦時中は主食が優先されたため廃園するものも多く、戦後の混乱期には、最高時に比べ面積で61%(1947)、収量では47%に減少した。この混乱期を経て、生活が安定してくると、果実の需要は伸び、価格も高騰して生産は増加した。この間に日本園芸農業協同組合連合会(1952)が結成され、生産者の先達的役割を果たし、一方では、果樹農業振興特別措置法(1961)の施行をみ、さらに諸大学や研究機関の充実なども手伝って、日本の果樹園芸は大躍進を遂げた。その結果、1973年(昭和48)の栽培面積は42.3万ヘクタール、収量は650万トンを超えた。近年、輸入果実の増加や豊かな食糧事情も手伝って、国産果樹の生産は過剰ぎみとなり、収量は漸減し、1999年(平成11)現在約410万トンとなっている。主要な果樹はミカン、リンゴを主とし、クリ、ブドウ、カキ、日本ナシ、モモ、ナツミカン、ウメなどで、栽培面積も広い。[飯塚宗夫]

日本の果樹園芸の特徴

(1)北から南に細長く広がる国土のため、寒冷地向き果樹から亜熱帯果樹まで多品目の栽培ができる。(2)品種改良や新品種の開発が盛んで、柑橘類は栽培北限の産地で多様な変異が生まれ、カキもまた多様性に富み、いずれも二次中心地となっている。(3)傾斜地果樹園が多く、機械化大栽培には不向きの園が多く、生産コストは高い。(4)全国の果樹栽培面積は29.5万ヘクタール(全作付延べ面積の6.4%、1998)、果樹農家は48.9万戸(1995)であるが、平均的農家の経営規模はきわめて小さく、1ヘクタール未満が87%を占め、2ヘクタール以上はわずか3%である。狭い土地を利用して邸内での果樹栽培も多い。(5)発育期は高温多湿のため、病気や害虫の発生が多い。病虫害防除のため、多大の経費と労働力を要する。(6)消費者の嗜好(しこう)は一般的に味と外観に重点が置かれるところから、とくに外観をよくするために費やされる作業量は大きい。[飯塚宗夫]

栽培管理作業

栽培にあたっては、果樹類のもつ植物的特性と栽培圃場(ほじょう)の環境特性、さらに生産立地の特性とを総合して、永続的に収入をあげるようにもっとも経済的な栽培管理が行われる。
 果樹栽培では、果実とそれを養う葉、枝、幹、根の栄養体との間にほどよいつり合いがとれていると、毎年、品質がよく適当な収量が保証される。これには樹体の炭水化物(C)と窒素(N)の比率(C/N)を適当に保つことが必要で、窒素が多すぎると栄養成長が盛んとなり枝葉が繁茂しすぎ、炭水化物が多すぎると生殖成長が盛んとなり花がつきすぎる。これらの生理的調節は植物ホルモンによるところが大きい。なかでもオーキシン、ジベレリン、アプシジン酸、サイトカイニンなどと、エチレンのほどよい代謝とが重要である。栽培にあたっては、樹体の生理がほどよく調節され、高品質の果実を毎年適当量生産するように管理する技術が必要となる。台風や干魃(かんばつ)など不測の気象環境を防ぎ、安定した生産を支えること、収穫した果実の鮮度を保持し出荷することも、重要な管理技術の一面である。
 次に、主要な栽培管理作業技術を、果樹の生育歴にあわせてあげておく。休眠期には基肥の施用、剪定(せんてい)と整枝、開花期には花数を減らす摘蕾(てきらい)、摘花、摘房、確実に結果させるための人工授粉、なりすぎを防ぐための摘果、病虫害や薬害から果実を保護し果皮を美しく保つための袋かけ、発育盛期には枝の茂りすぎを防ぎ樹姿を保つための緑枝の剪定・芽かきと枝の誘引、追肥の施用、収穫前は早期落果防止、果実の色づけをよくするための収穫前除袋、果実に日光を当てるための摘葉、偏りなく着色を促すために果実の向きを変える玉回し、収穫、選果、調整、貯蔵、出荷、これら諸作業に並行して随時行う薬剤散布、灌水(かんすい)、下草管理、防風、防鳥、その他の作業がある。これら作業の適・不適によって、収入は大きく異なってくる。
 なお栽培技術面では、開園のための基盤整備、育苗などに関しても広い範囲の知識を必要とする。2000年(平成12)に農林水産省によって公表された果樹農業基本方針によると、成園10アール当り1年の労働時間を、ミカンで3.4トン収穫する場合93時間、リンゴ3.6トンで158時間、二十世紀のようなナシ4.3トンで263時間に収まるように目安をたて、栽培の近代化を進めている。[飯塚宗夫]

世界における主要果樹の動向

オリーブを除いた生鮮果実の全世界の生産量(1998)は4億3470万トンで、うち約40%をアジアが占める。日本産は1%にも満たない。種類別生産量のうち、生産量の多いものはオレンジ(6621万トン)、バナナ(5862万トン)、ブドウ(5740万トン)、リンゴ(5606万トン)である。ブドウは果実としての利用のほか、イタリア、フランス、スペインなどではぶどう酒用にも多く生産されている。
 主要果実生産の上位国は、柑橘類、パイナップルを除き、それぞれの果実の原生地域あるいはそれに隣接する地域の国が含まれており、果樹栽培発展の過程における原生地の風土的、歴史的な重要性がわかる。柑橘類やパイナップルは、いずれも輸送性、加工適性、栽培性などが優れ、経済的大規模栽培に向く。このため、人件費が安く、広い土地があり、しかも気候的に適地をもつ熱帯圏の国では資本さえあれば大農園を開くことができる。たとえばアッサム地方を原種の生育地とするオレンジが中国から地中海域を経て遠くアメリカにも渡り、カリフォルニアに大産地を形成した。ブラジルを原生地とするパイナップルは、タイやフィリピンで大資本のもと、加工場とともに大発展した。中央アメリカにみるバナナ産業も同類で、アメリカ資本の進出が大きい。果樹性ナッツ類をみると、アメリカではアーモンドとペカン、ヨーロッパではヘイゼルナッツ、西アジアではクルミ、ピスタチオなどが多い。アメリカは、柑橘類、リンゴ、アーモンド、クルミ(ペカンを含む)などについてはすでに世界最大の産出国で、バナナ、パイナップルなど海外への投資分も含めると、果樹園芸面での力は大きい。[飯塚宗夫]
『佐藤公一他編著『果樹園芸大事典』第2次訂正追補(1989・養賢堂) ▽農林水産省編『ポケット園芸統計』各年版(農林統計協会) ▽小林章著『果樹園芸大要』改訂版(1982・養賢堂)』

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世界大百科事典内の果樹園芸の言及

【園芸】より

…果樹,野菜,観賞用植物などを資本と労力をかけて集約的に栽培することで,対象とする作物の種類によって,果樹園芸,野菜園芸,花卉(かき)園芸に分類される。また,生産物の販売を目的とする園芸を生産園芸,趣味として行う園芸を趣味園芸,または家庭園芸という。…

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