カトリック教会の司教座聖堂。ラテン語のエクレシア・カテドラリスEcclesia cathedralis(司教座cathedraのある聖堂)に由来するフランス語で、わが国では大聖堂あるいは大会堂などの別称も使われる。カテドラルの名称は当然フランスで一般に用いられ、イタリアでは主としてドゥオモduomo、ドイツではドームDomまたはミュンスターMünsterが用いられている。イギリスではカスィードラルcathedralと転訛(てんか)し、イタリア(南部およびシチリア)にもカッテドラーレcattedraleの名称を使用している例がある。またローマのサン・ピエトロ・イン・バティカノやサン・ジョバンニ・イン・ラテラノのように、とくに格式の高い聖堂はバジリカbasilicaと尊称される。
カテドラルは司教が居住し、かつ司教区の名称をとった都市に建てられているのが普通である。同じ都市に、より大規模かつ華麗な聖堂が存在する場合も珍しくないが、カテドラルには創建の古さその他の歴史的事情によって、その名称と格式が与えられている。ヨーロッパのカテドラルの多くは11世紀以降に建立されており、その建築様式のほとんどがロマネスクまたはゴシックである。イタリアではロマネスクからゴシックへの移行期に造営されたピサ、シエナのドゥオモには両様式が採用されているのに対し、フィレンツェのそれはゴシックである。フランスのシャルトルのカテドラルは創建時はロマネスク様式によるものであったが、二度にわたる火災で倒壊した部分はゴシック様式によって再建されたから、一部に旧様式を残すのみである。パリのノートル・ダム、アミアンのカテドラルは典型的なフランス・ゴシックによるものである。ドイツのウォルムスとケルンのドームはそれぞれこの国のロマネスクとゴシックを代表する。イギリスの場合ダーラムとリンカーンのカスィードラルがやはりロマネスクとゴシックの代表例であるが、ヘンリー8世の修道院禁圧時代(1536~39)以後にカスィードラルになった例が多く、それらの様式も多様である。
[濱谷勝也]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…さらに,この芸術の成立と発展の基礎として,中世都市の形成・隆盛の事情が考えられる。ゴシック美術はまず第1に都市の司教の大聖堂(カテドラル)であり,教区教会堂であり,都市世俗建築であり,後期ゴシック美術にいたってはさらにこのことは著しい。都市の住民・ギルドが聖職者・王侯とならんで,この芸術の有力な支持者であったし,国王はしばしば都市確立を助成し,またベネディクト会のサン・ドニ修道院(パリ北郊)院長シュジェールSuger(1080ころ‐1151)はよく民意を迎えた。…
…特にこの椅子から行われる説教や宣言は〈エクス・カテドラex chathedra〉(司教座宣言,教皇の場合は聖座宣言)といわれ,公式で正統な教えとされ,それがローマ教皇によってなされた場合には,忌避しえない,不可謬なものと見なされた。この座のある教会が司教座聖堂ecclesia cathedralis,いわゆるカテドラルである。司教座聖堂は1司教区内に一つが普通であるが,バチカンのサン・ピエトロ大聖堂とラテラノのサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ教会のように,二つある場合も例外的には存在する。…
…教会堂ともいう。聖堂のうち,司教座(カテドラcathedra)の置かれたものをとくに司教座聖堂または大聖堂と呼び,フランス語でカテドラルcathédrale,イタリア語でドゥオモduomo,ドイツ語でドームDomまたはミュンスターMünsterという。教会教会堂建築(2)日本で,孔子をまつった建物,すなわち孔子廟を聖堂(または聖廟)と呼ぶ。…
※「カテドラル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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