カネミ油症(読み)カネミゆしょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

カネミ油症
カネミゆしょう

1968年6月頃から福岡県を中心に西日本で多発した PCB中毒症。全身の発疹や発熱,顔面浮腫などを中心とする症状が続き,死亡者が出て,油症新生児 (黒い赤ちゃん) も多数生れた。製造工程で PCB食用油に混入したことによる食品公害病と判明したため,被害者団体が訴訟を起し,製油会社のカネミ倉庫と PCB製造元の鐘淵化学工業に勝訴した。この事件以後,政府は PCBを特定化学物質に指定し,使用制限などの措置をとった。

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知恵蔵の解説

カネミ油症

1968年に北九州を中心とした西日本で起きた、カネミ倉庫(本社・北九州市)が製造・販売した食用油(米ぬか油)による国内最大級の食品公害事件。クロルアクネ(塩素ざそう)、色素沈着、手足のしびれ、脱力感、頭痛、嘔吐、食欲減退、心臓疾患、肝臓障害、腎臓障害など、全身にわたる症状から「病気のデパート」と言われた。肌の黒い赤ちゃんも生まれ、1万4000人以上の被害者が届け出た。当初、原因は、食用油の製造工程で熱媒体に使用されていたポリ塩化ビフェニール(PCB)が食用油に混入したためとされていたが、2001年、PCBに含まれていたダイオキシン類が原因物質であることを厚生労働省が認めた。患者の認定基準が皮膚症状中心だったため、認定された患者数は約1900人にすぎなかった。原因物質の判明により認定基準が見直されたが、被害者救済は今なお不十分なままである。被害者が、損害賠償訴訟を起こし国の責任が認められたため、受け取った仮払金の返還を国が求めており、被害者は健康被害に加えて、経済的にも苦しめられていたが、2007年6月に仮払金返還債権免除特例法が成立した。

(畑明郎 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 / 2008年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

カネミ油症

1968年、カネミ倉庫製の米ぬか油を食べた人が黒い吹き出物などの皮膚症状や内臓疾患を発症。翌年までに約1万4千人が被害を届け出た。 油の製造過程で混入したPCBや、PCBが加熱されてできるダイオキシン類が原因。国内最大の食品公害で、ダイオキシン類による初の食中毒事件とされる。認定患者は2322人(2017年度末時点、故人含む)で福岡県や長崎県に多い。

(2018-10-07 朝日新聞 朝刊 1社会)

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世界大百科事典内のカネミ油症の言及

【製造物責任】より

…製造物責任は,アメリカの判例で発展したが,ヨーロッパ共同体(EC)は,1985年に製造物責任指令を理事会が採択して加盟国に指令に従った立法を義務付け,その後ヨーロッパ連合(EU)に加盟する大部分の国はその義務を果たした。日本で,食用油の欠陥による身体傷害をもたらした森永ヒ素ミルク中毒事件カネミ油症事件,医薬品の副作用による健康被害をもたらしたサリドマイド事件やスモン病事件などは製造物責任に該当する事件である。従来は,過失がなければ責任がないという過失責任の原則を定める民法の規定(民法709条)のもとで,解釈により製造者に重い責任を認めるべきだという考え方が学説,裁判例で採用されていたが,1994年にようやく製造物責任法(1995年法律第85号)が公布され,95年7月1日から施行されるに至った。…

【油症】より

…調査の結果,翌11月に,患者の皮下脂肪と,患者の食品調理に用いられていたカネミ倉庫(株)製油部製のライスオイル(米ぬか油)に,鐘淵化学工業製のカネクロール400(PCBの一種)が含まれていることが明らかにされた。これ以来,この福岡を中心として長崎などにも多発していた〈奇病〉は油症あるいはカネミ油症と呼ばれるようになった。病気の原因となったPCBは,〈カネミライスオイル〉製造に際し,脱臭工程で油を加熱するための熱媒体として用いられたものであり,これがピンホールあるいは工事ミスによって油に混入したものとされる。…

※「カネミ油症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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