カフェ(英語表記)café[フランス]

精選版 日本国語大辞典 「カフェ」の意味・読み・例文・類語

カフェ

〘名〙 (café)⸨カフェー
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉二「西印度より来るものは、蔗糖、煙草、加非(カッフェー)、棉花、皮革、樹膠(ゴム)等なり」
(イ) コーヒーを中心にした喫茶店
※うたかたの記(1890)〈森鴎外〉上「学校の向ひなる、『カッフェエ、ミネルワ』といふ店に入りて」
(ロ) 女給が接待し洋酒等を飲ませる、明治末から昭和初期の日本に見られた洋風の飲食店。現在のキャバレー、バー、喫茶店等の要素をあわせ持っていた。
社会百面相(1902)〈内田魯庵〉ハイカラ紳士「未だ僕は珈琲店(カフェー)の女の臍繰を巻上げて代理公使から叱られた事は無い!」

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デジタル大辞泉 「カフェ」の意味・読み・例文・類語

カフェ(〈フランス〉café/〈イタリア〉caffè)

コーヒーのこと。
コーヒー店。喫茶店。
大正・昭和初期に、女給が酌をして洋酒類を飲ませた飲食店。カフェー。カッフェー。キャフェ
喫茶店のように、さまざまな人が気軽に集まれる場所。「子育てカフェ

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改訂新版 世界大百科事典 「カフェ」の意味・わかりやすい解説

カフェ
café[フランス]

〈カフェ〉とはもともと〈コーヒー〉を意味していたが,やがて転じて〈コーヒーを飲ませる店〉をも指すようになった。このような店は,アラビアメッカでは,すでに15世紀から存在していたらしいが,エジプトトルコを経,ベネチアを窓口としてヨーロッパに伝わった。フランスでは,17世紀半ば,中東との貿易港マルセイユにまず姿を現す。1672年,パリにも,ごく簡単な屋台のカフェが出現したが,1686年シチリアの人プロコープProcopeが,現在のアンシエンヌ・コメディ街に本格的な店を構えたのが,カフェ隆盛の発端となった。プロコープの店は,文人や役者のたまり場となり,啓蒙時代にはボルテール,ディドロ,ボーマルシェなどが常連となり,世論形成にも一役かったという。革命期にはダントンマラーロベスピエールなども,この店の客となっている。17世紀以来,貴族や上層ブルジョアには,社交の場として〈サロン〉があったが,しだいに勢力を伸ばしてくる中小ブルジョア,とくに行動的知識人にとっては,カフェが,政治や芸術をめぐって議論をたたかわせ,新しい思想を練り上げるための絶好の場となった。パレ・ロアイヤルには,多くの評判のカフェが集まっていたが,そのひとつ〈カフェ・ド・フォア〉はジャコバン・クラブのたまり場で,1789年7月12日,ネッケル罷免の報せに,カミーユ・デムーランが机にとび乗り〈カフェを出て革命を!〉と訴えたという逸話で名高い。革命後,カフェと政治との直接的なかかわりは薄れ,ブルジョア社会に対抗する政治・社会運動の拠点は,民衆の談論の場であった居酒屋の手に移る。カフェはこうして,芸術家や街のしゃれ者たちの集う場としての性格を強める。ロマン派の作家たちも,モンマルトルの画家たちも,それぞれ好みのカフェに集まった。これはヨーロッパに共通して見られるところで,ローマの〈カフェ・グレコ〉にはイプセンやゴーリキーが姿を見せ,ウィーンのカフェは世紀末芸術の温床となっただろう。このように,カフェは,ヨーロッパ文化史の縮図である。
執筆者:

日本最初のコーヒー店は1888年(明治21)4月に東京下谷黒門町に開店した可否茶館だが,カフェとかカフェーを称する店の出現は1911年のことになる。その年の春まず銀座日吉町にカフェ・プランタンが開かれ,続いて8月に銀座尾張町角にカフェ・ライオン,11月に南鍋町にカフェ・パウリスタが開店した。プランタンは洋画家松山省三の経営になるもので,洋風料理と洋酒を売物にし,1908年開業の日本橋小網町のメーゾン鴻の巣とともに画家,文士,演劇人らのたまり場となり,新しい芸術運動の温床ともなった。パウリスタは1杯5銭のブラジル・コーヒーと軽便料理で人気を集めた。これらに対して精養軒の経営になるライオンは,多数の美人女給を擁して接待にあたらせ,以後日本でカフェーといえばこの形式の酒場をいうようになった。昭和初年までこうしたカフェーは全盛をきわめ,とくに大阪系の大カフェーは濃厚なサービスで売った。また,都心以外の地域にも多くのカフェーができ,昭和期の女流作家たちの中には林芙美子,宇野千代,佐多稲子など,そうした店で女給づとめをした人も少なくない。第2次大戦後,カフェーの名称は風俗営業の一形態を示す行政用語として使用されるだけになり,一般的にはコーヒーその他の軽飲食物を提供する店は喫茶店,女性のサービスを伴う酒場はバーやキャバレーなどの名称で呼ばれるようになった。
喫茶店
執筆者:

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百科事典マイペディア 「カフェ」の意味・わかりやすい解説

カフェ

コーヒーまたはコーヒー店の意。17―18世紀フランスや英国で流行し一種の社交場となった。日本では1888年東京下谷黒門町に可否茶館が開かれたのが最初で,1911年銀座日吉町にカフェ・プランタン,同年銀座尾張町にカフェ・ライオン,次いでカフェ・パウリスタができ,大正末には全国に普及した。形態はバーに近く,女給を置いて飲食のサービスをする一種の遊興場であった。
→関連項目オープン・カフェ

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旺文社世界史事典 三訂版 「カフェ」の解説

カフェ
café

特にフランスにおいて,コーヒーなどを飲ませる飲食店
アラビアでは古くから存在し,エジプト・トルコをへて,ヴェネツィアからヨーロッパに伝わった。フランスにおいては17世紀半ばにマルセイユに初めて誕生した。台頭しつつあるブルジョワにとっては,カフェが政治をめぐる議論を交わすための場であった。その後カフェは芸術家たちの集う場としての性格が強くなっていった。

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リフォーム用語集 「カフェ」の解説

カフェ

コーヒーなどを飲ませる飲食店。かふぇを設計・計画する際には、住宅と違い、通風や採光を考え、大きな開口を設けたり安らぐことの出来るプランニングを心掛ける事が望ましい。

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デジタル大辞泉プラス 「カフェ」の解説

カフェ

バラの園芸品種名。木立ち性で、茶色がかったオレンジ系の花色で大輪の花をつける。四季咲き。作出国はドイツ。枝変わりにピンク系の「コーヒー・ルンバ」がある。

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世界大百科事典(旧版)内のカフェの言及

【オーストリア】より

…そして,農村の生活が古俗豊かで堅実,地味,朴とつであるのに比べて,ウィーンの典雅で華麗な雰囲気はまことに対照的である。その都市文化はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団や国立オペラ劇場,ブルク劇場あるいはフォルクスオペラ劇場,ウィーン少年合唱団の華やかな名声でもって最もよく象徴されるが,市民の生活を特徴づけるものはカフェである。ウィーンはおそらくヨーロッパで一番カフェの多い街である。…

【喫茶店】より


[ヨーロッパ]
 コーヒーとともに普及したヨーロッパの喫茶店は,西アジア起源のものである。17世紀にフランスやイギリスに生まれたカフェやコーヒー・ハウスcoffee houseは,とくに重要な社会的・文化的・政治的な機能をもった。 フランスのカフェはトルコから伝わり,マルセイユ(1654)経由で普及し,異説もあるが,1672年パリ最初のカフェがアルメニア人パスカルによって始められたといわれる。…

【コーヒー】より

…特有の芳香と快い苦みがある。カフェインを含むため,神経を興奮させる作用をもつ。〈珈琲〉の字があてられる。…

※「カフェ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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