ドストエフスキーの最後の長編小説。1880年刊。地主フョードル・カラマーゾフには,ドミートリー,イワン,アレクセイ,スメルジャコフの4人の息子がいる。ドミートリーは美女グルーシェンカを父フョードルと争っている。イワンは父を深く嫌悪している。子でありながら下男としてしか認められていないスメルジャコフは,イワンの意識下の願望を実現すべく父を撲殺する。その下手人としてドミートリーが捕らえられる。事の真相を知ったイワンは発狂の兆しを見せ,スメルジャコフはイワンに失望して自殺する。このおぞましい家族の劇こそ,美しい理想を失った〈現代ロシア〉の実相であり,同時に,ロシアの新生を告げる陣痛でもある,と作者は考えていた。老修道僧ゾシマと三男アレクセイ,彼を慕う少年たちは,その新生ロシアを予告している。この小説は発表当時から大いに歓迎されたが,20世紀に入り西側世界でも驚嘆をもって迎えられ,ジッド,ツワイク,T.マン,カミュ,フォークナー等の作家に新たな思想小説の手本として,また現代文明への警告の書として深く広い感化を与えた。日本では大正初めから英訳・邦訳によって読まれ,特に第2次大戦後は,イワンの語る〈大審問官〉が現代の政治的・精神的黙示と解釈されたりして,雄大深遠な思想小説として高く評価されている。
執筆者:中村 健之介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...