下手人(読み)げしゅにん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

下手人
げしゅにん

「げしにん」とも読まれる。江戸時代庶人に科せられた刑罰の一つ。元来は,みずから手を下して人を殺した者の意であるが,江戸時代に入って刑名となり,利欲にかからない殺人,乱心による殺人,あるいは殺人教唆などに対して科せられた。『公事方御定書』には,「首を刎 (は) ね,死骸は取り捨てるが,様斬 (ためしぎり) には付さない」とあって,処刑の方式は死罪と同じく打首 (うちくび。斬首) である。しかし,下手人の場合は,死罪と異なって,屍体をためし切りにされることも,田畑,家屋敷,家財を没収されることも,また引廻を付加されることもなかった。つまり,これらの付加刑の有無が,下手人と死罪を分つ指標になっているのである。

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デジタル大辞泉の解説

げしゅ‐にん【下手人】

《「下手」は物事に手をくだす意》
直接手を下して人を殺した者。殺人犯。げしにん。「下手人を捕らえる」
江戸時代、庶民に適用された斬首刑。死刑のうちでは軽いもので、財産の没収などは伴わない。げしにん。
事件の張本人。げしにん。
「仲正が所行然(しか)るべからずとて、―など召し出されんずるにて」〈著聞集・一六〉

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世界大百科事典 第2版の解説

げしゅにん【下手人】

解死人(げしにん),下死人(げしにん)ともいう。殺人ないし致死の加害者を意味したが,江戸時代においてはむしろ幕府および諸藩等で死刑刑種の一つとなった。幕府では庶民に対する死刑のうち最も軽いもので,〈通例之人殺〉の刑とされたが,それには次の3条件が必要であった。(1)社会的身分が同じで,かつ主従,親族,師弟,名主地主など,上下支配の関係をもたないこと。(2)毒殺,辻斬など特別な態様や,利欲を動機とした計画的犯罪(〈巧(たくみ)〉)でなく,いわば単なる〈喧嘩口論〉の場合。

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大辞林 第三版の解説

げしゅにん【下手人】

〔中世・近世には「げしにん」。「下手」は物事に手を下す意〕
人を殺した人。殺人犯。 「同心が-を捕らえる」
悪事の張本人。 「仲正が所行しかるべからずとて、-など召し出されんずるにて/著聞 16
江戸時代、庶民に科された斬首の刑。殺人犯およびそれに準ずる罪に適用された。庶民に対する死刑のうち最も軽いもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

下手人
げしゅにん

江戸時代の死刑の一種。もともとは手を下して人を殺した者という意味であるが、江戸幕府法上、手を下して人を殺した者は死刑に処せられるべきであるという思想から、牢屋(ろうや)で斬首(ざんしゅ)される死刑の一種を示すのに用いられた。死罪も同じく牢屋で斬首する刑で、利欲にかかわる殺人に科せられ、下手人は利欲にかかわらない喧嘩(けんか)口論などによる殺人に科せられた。死罪に比べ、下手人には様斬(ためしぎり)や家・屋敷などの没収はなかった。[石井良助]

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精選版 日本国語大辞典の解説

げしゅ‐にん【下手人】

〘名〙
① みずから手を下して事をなした者。特に、犯罪などをおかした者。張本人。げしにん。
※権記‐長保二年(1000)一〇月一〇日「請云、止召重尹可捕下手人者、仍所被仰也」
※歌舞伎・毛抜(1742)「さしづめ下手人(ゲシュニン)に若殿を出す心か」 〔唐律‐鬭訟・疏議〕
② 江戸幕府の死刑の一種。主として、一般の殺人罪を犯した庶民に適用された刑で、死刑としてはもっとも軽く、死骸が試物(ためしもの)にされず、田畑、家屋敷などの没収刑も付加されなかった。げしにん。
※随筆・折たく柴の記(1716頃)下「前代の御初に、伯父殺せしもの下手人の法に行はれし例あり」
[語誌]本来、①の挙例唐律‐鬭訟・疏議」などに見える法律に関わる漢語。日本でも、漢文体の資料には「下手人」の表記が多い。読みの確例としては、「げしゅにん」より、むしろ「げしにん」(解死人)の方が古くに見られる。これは「げしゅにん」から「げしにん」への変化はかなり早い時期になされ、それが勢力を伸ばしていたことの現われか。明治期も「げしにん」が優勢だが、現在は「げしゅにん」が普通。

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世界大百科事典内の下手人の言及

【下手人∥解死人】より

…下手人(げしゆにん)という直接の実行者をさす言葉は,すでに8世紀の養老律にみられ,以後今日までほぼ同じ意味でもちいられているが,いっぽう14世紀ころより,解死人・下死人とも書き,〈げしにん〉とよませる言葉があらわれる。《邦訳日葡辞書》には〈実際の罪人の代りに捕らえられたり,刑に処せられたりしている者。…

※「下手人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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