カルト(英語表記)cult

翻訳|cult

デジタル大辞泉 「カルト」の意味・読み・例文・類語

カルト(cult)

宗教的崇拝。転じて、ある集団が示す熱烈な支持。

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精選版 日本国語大辞典 「カルト」の意味・読み・例文・類語

カルト

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] cult )
  2. 祭礼儀式。
  3. ある人、事物に対する熱狂的崇拝。また、そのような人々の集団。特に、少数で組織される狂信的宗教集団。転じて、邪教の意でも用いられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「カルト」の意味・わかりやすい解説

カルト
cult

なんらかの体系化された礼拝儀式,転じてある特定の人物や事物への礼賛,熱狂的な崇拝,さらにそういう熱狂者の集団,あるいは邪教的な宗教団体を意味する語。普遍的に見られる宗教現象だが,とくにアメリカ社会において顕著で,無視できない意味を有している。アメリカはキリスト教聖地のようなイメージを国の内外に誇示してきたが,広大な空間にさまざまな種類の人間が住み,生活や社会に安定が乏しいため,多くの人が孤独と不安をかかえ,オーソドックスな信仰には必ずしも心を満たされないでいる。しかも同時に,アメリカは文化的なフロンティアであるため,さまざまな理想を求める集団が活動する余地も大いにある。したがってこの国では,多様な宗教が布教されてきた。既成秩序を奉じる人の目から見ると,その多くが,上記の最後の意味でのカルトということになる。見方によっては,ピルグリム・ファーザーズモルモン教徒も,カルトの外観を呈した。ハーモニー・ソサエティオナイダ・コミュニティは,小集団に終始し,さらにカルト的であった。しかしそのそれぞれが,アメリカ文化の推進力となってきている。最近カルトが問題にされるのは,チャールズ・マンソンCharles Mansonとその〈ファミリー〉による女優シャロン・テートSharon Tateらの虐殺(1969年8月9日)や,ジム・ジョーンズJim Jonesのひきいる〈人民寺院People's Temple〉の信者900余人の集団自殺(1978年11月18日)など,狂信的で陰惨な事件が続いたからである。アメリカには,いま大小あわせて約3000のカルトがあり,信者は300万にのぼると推定される。彼らの渇望するものを汲み上げ,その精神的エネルギーを堅実な方向に発展させることは,アメリカ文化全体のかかえる重要な課題であろう。
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知恵蔵 「カルト」の解説

カルト

カルトはラテン語で「崇拝」や「儀礼」を意味するcultusを語源とし、学術用語としては、カリスマ的指導者を中心とする小規模で熱狂的な信者の集まりを指す。しかしマスコミでは、時として犯罪行為を犯すような、反社会的な宗教集団を指す用語として使われ始めた。さらに、指導者に絶対服従させ、信者の自主性を著しく阻害し、犯罪行為を繰り返すような宗教集団のことを破壊的カルトと呼ぶようにもなった。一般に、カルトと呼ばれる集団が注目され始めたのは、1969年、米国でチャールズ・マンソンを中心とするマンソン・ファミリーという宗教集団が、女優シャロン・テートとその友人を惨殺した事件あたりからである。このような反社会的カルトに対する危機感から、米国では2つのタイプの運動が展開してきた。1つは、カルトからの脱会者やその家族・子供、カルトに入信した人の家族などからなる「反カルト運動」であり、もう1つは、信仰や神学の立場から、カルトに反対する「対抗カルト運動」である。いずれも米国の伝統的な信仰、家族、倫理を破壊するものとしてカルトをとらえている。対抗カルト運動の原型は、エホバの証人やモルモン教などの新宗教に対する反対運動として、既に19世紀に始まっており、主に保守的なクリスチャンを中心メンバーとしている。反カルト運動の団体は、とりわけ70年代中頃から数多く現れ、諸団体が相互に連携するネットワークも形成されている。反カルト運動に共通する点は、カルトへの入信を洗脳やマインド・コントロールによるものと考えることであり、そのことからディプログラマー(deprogrammer)と呼ばれる、洗脳などを解除する専門家の役割が重要視されている。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)


カルト

過激な新興宗教団体。全米で2000以上あり、「救世主」を名乗る教祖を頂いた熱狂的信者の閉鎖的集団、という性格が強い。マインド・コントロールによる信者獲得、教祖への絶対服従などで、様々な社会問題、家庭問題を引き起こす。米国でカルト問題が大きく浮上してくるのは、「ファミリー」と名乗るカルト集団による、1969年のいわゆるシャロン・テート事件あたりからで、78年には南米ガイアナの密林で「人民寺院」信者900人以上が集団自殺した人民寺院事件が起きた。80年代後半以降の、移民の増加、家族の崩壊、貧富差の拡大などによる社会構造の急激な変化は、疎外された者たちが互いを求め合い、カリスマ的指導者に絶対服従する傾向を助長したといえる。93年2月、デビッド・コレシュを指導者とし、狂信的な終末論で知られる新興宗教団体ブランチ・デビディアンは、テキサス州ウェイコ郊外で捜査当局と多数の死傷者を出す銃撃戦を演じて武装籠城(ろうじょう)。FBIによる強制排除に際し、72人が放火により集団自殺して、カルトの危険性を改めて印象付けた。97年3月には、ヘブンズ・ゲート(天国への門)と呼ばれるカルトが、カリフォルニア州サンディエゴで「すい星接近に合わせて」集団自殺し、死者39人を出した。70年代末から80年代にかけて、市民レベルでカルトを監視する動きも活発になり、カルト・アウェアネス・ネットワーク(CAN:Cult Awareness Network)、アメリカ家族協会(AFF:American Family Foundation)などの非営利組織(NPO)が生まれた。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカルトの言及

【礼拝】より

…一般に,信仰対象や人格対象に対して信順・帰依・感謝の気持をあらわす行為。仏教では〈らいはい〉と読むことが多い。普通,低頭,合掌,拍手,祈り,読経(どきよう)などをともなう。公的な場において儀礼的,形式的に行われることもあれば(公的礼拝),単独に個人の信仰の深みから行われることもある(私的礼拝)。このように礼拝は,崇拝が純粋に宗教的であるのに対して,聖と俗の両面にかかわっているところに特徴がみられる。…

※「カルト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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