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折衷主義 せっちゅうしゅぎeclecticism

翻訳|eclecticism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

折衷主義
せっちゅうしゅぎ
eclecticism

(1) 哲学や神学において,独自の体系を築くのでも,ほかの1つの体系に依拠するのでもなく,いくつかの体系から,それぞれの正しいと思われる要素を抜き出してきて1つの体系にまとめることをいう (語源的には「選び出す」を意味するギリシア語の動詞 eklegeinに由来する) 。したがってそれは体系間の混合を意味するシンクレティズムと区別される。ギリシアやアレクサンドリアの哲学の後期にその傾向は現れ,特にカルネアデスキケロに顕著。啓蒙期の哲学者たちにもその傾向は認められる。折衷主義は多くの場合,非独創的と同義に,蔑称として用いられるが,V.クーザンはこれに積極的意義を認めて自分の体系をその名で呼んだ。 (2) 芸術において,他の作家または過去のもろもろの芸術動向から様式的特徴を借用し,それらを融合しようとする考え方。 16世紀末にボローニャで活動した L.カラッチとその周辺の画家たちや,19世紀後半の建築家,P.ラブルースト,C.コッカーレル,G.ゼンパーなどに顕著に認められる。

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デジタル大辞泉の解説

せっちゅう‐しゅぎ【折衷主義】

eclecticism》相異なる哲学・思想体系のうちから真理あるいは長所と思われるものを抽出し、折衷・調和させて新しい体系を作り出そうとする立場。

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大辞林 第三版の解説

せっちゅうしゅぎ【折衷主義】

〘哲〙 〔eclecticism〕 相異なる哲学上・宗教上の見解のうちから正しいと思われるものを選び出して調和させようとする考え方。古代哲学ではキケロ、近世哲学ではウォルフ・クーザンなどにみられる。
建築・家具などの様式で、独自の様式を創造せずに過去の歴史的様式を模倣すること。1830年代以後のフランスの建築・工芸などにみられる。歴史主義。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

折衷主義
せっちゅうしゅぎ
eclecticism英語
clectismeフランス語
Eklektizismusドイツ語

折衷とは一般にあれこれと適当に取捨することで、思想、見解、意見などの相異なり矛盾する要素までも選択しまとめることをいう。思想、哲学上の見解は古来多様であるから、なんらかの折衷はその歴史とともにみられる。しかし、その傾向が顕著になったのは、独創性、創造性を失った古代ギリシア末期のヘレニズム時代の哲学においてであり、早くもその前半の中期ストア学派(セネカら)、そして、とくに後半のアカデメイア学派(ラリッサのフィロン、キケロら)やアリストテレス学派(ローマのアンドロニコス)などにも著しく、しばしば一括して折衷学派ともよばれる。
 近代では先進国イギリスの思想を摂取したフランス、ドイツなどの啓蒙(けいもう)哲学にもその傾向がうかがわれるが、とくに、19世紀フランスのV・クーザンは哲学史の講義という目的にも促されて古今の思想の折衷を試み、「折衷主義」の代表者と目された。また、たとえばプロテスタントとカトリックのように相異なる神学の折衷はシンクレティズムsyncretism(混合主義)とよばれ、宗教的折衷主義であり、神仏混淆(こんこう)などもその一例といえる。
 折衷、混合はいずれも創造性の欠如と稚拙さ、安直と姑息(こそく)、皮相性などを意味する侮蔑(ぶべつ)的含みをもつ。しかし、程度の差はあれ、思想や哲学的見解が他の立場や伝統的遺産の取捨選択のうえに成り立つ総合的営為である限り、総合と折衷との現実の区別は発見しにくい場合もある。ただし、独創的で正しい総合は、他の見解との異同が細部にわたって明らかであり、自己の積極的基準に基づく批判的精神と新たな洞察を宿す点において、単なる折衷や混合とは異なる。[杖下隆英]

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世界大百科事典内の折衷主義の言及

【ドラローシュ】より

…パリに生まれる。ワトレClaude‐Henri Wateletとグロに学び,新古典主義的技法でロマン派が多く行った歴史画の主題を描くという,いわゆる〈折衷主義〉(〈ジュスト・ミリューjuste milieu〉と呼ばれた)の代表的画家である。主題の扱いは感傷的なものを好み,新興ブルジョアジーに多く顧客を持ち,非常な好評を得た。…

※「折衷主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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