折衷とは一般にあれこれと適当に取捨することで、思想、見解、意見などの相異なり矛盾する要素までも選択しまとめることをいう。思想、哲学上の見解は古来多様であるから、なんらかの折衷はその歴史とともにみられる。しかし、その傾向が顕著になったのは、独創性、創造性を失った古代ギリシア末期のヘレニズム時代の哲学においてであり、早くもその前半の中期ストア学派(セネカら)、そして、とくに後半のアカデメイア学派(ラリッサのフィロン、キケロら)やアリストテレス学派(ローマのアンドロニコス)などにも著しく、しばしば一括して折衷学派ともよばれる。
近代では先進国イギリスの思想を摂取したフランス、ドイツなどの啓蒙(けいもう)哲学にもその傾向がうかがわれるが、とくに、19世紀フランスのV・クーザンは哲学史の講義という目的にも促されて古今の思想の折衷を試み、「折衷主義」の代表者と目された。また、たとえばプロテスタントとカトリックのように相異なる神学の折衷はシンクレティズムsyncretism(混合主義)とよばれ、宗教的折衷主義であり、神仏混淆(こんこう)などもその一例といえる。
折衷、混合はいずれも創造性の欠如と稚拙さ、安直と姑息(こそく)、皮相性などを意味する侮蔑(ぶべつ)的含みをもつ。しかし、程度の差はあれ、思想や哲学的見解が他の立場や伝統的遺産の取捨選択のうえに成り立つ総合的営為である限り、総合と折衷との現実の区別は発見しにくい場合もある。ただし、独創的で正しい総合は、他の見解との異同が細部にわたって明らかであり、自己の積極的基準に基づく批判的精神と新たな洞察を宿す点において、単なる折衷や混合とは異なる。
[杖下隆英]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…パリに生まれる。ワトレClaude‐Henri Wateletとグロに学び,新古典主義的技法でロマン派が多く行った歴史画の主題を描くという,いわゆる〈折衷主義〉(〈ジュスト・ミリューjuste milieu〉と呼ばれた)の代表的画家である。主題の扱いは感傷的なものを好み,新興ブルジョアジーに多く顧客を持ち,非常な好評を得た。…
※「折衷主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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