ギリシア語シュンクレティスモスsygkrētismosに由来する語。本来は〈統合〉を意味し,のち相互に対立・相違する神学上・哲学上の見解を和解・融合させようとする試みを指すようになった。無節操,折衷などしばしば軽べつ的なニュアンスで用いられることもある。具体的にはルネサンス期における東方教会とローマ・カトリック教会の合同の試み,17世紀におけるルター派と他のプロテスタント諸派,ローマ・カトリック教会との合同の試みなどがあげられる。転じて心理学(混同心理)や言語学(融合)の用語としても使用された。日本の宗教では平安時代になって発達した神仏習合の試みがそれにあたる。外来の〈仏〉を本地(原型),土着の〈神〉をその垂迹(変型)とみて,神信仰と仏信仰の融合を説いたものである。またこのような現象は,成立宗教が異地域で大衆化する場合とか,一神教が多神教と接触するような場合にも生ずる。たとえばキリスト教世界におけるマリア信仰や,仏教世界における密教やラマ教などにそのような傾向が見いだされ,一般的には信念体系の重層化,並列化の過程としてとらえることができる。
執筆者:山折 哲雄
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異なる複数の文化・宗教が接触して混交している状態・現象。この言葉が現代につながる意味で使われ始めたのは17世紀で、プロテスタントとカトリックの対立を超える全世界の教会の一致がシンクレティズムと呼ばれた。その後、初期キリスト教に対する異教の諸影響が明らかにされるなか、比較宗教学の進展とともに宗教や文化一般を論じる言葉として定着した。文化・宗教間の接触に伴う現象一般をさすこともあるが、諸宗教の多元的共存などとは区別されることが多い。日本宗教での典型例には中世以降の神仏習合があり、修験道(しゅげんどう)もその成立に際して仏教・道教・神祇信仰など諸宗教間の接触が不可欠だった。
[遠藤 潤]
…グアテマラのマヤ・インディオの居住するチチカステナンゴの町のサント・トマス教会では,公然とマヤ古来の宗教行事が教会の内外で行われている。こうした習合現象syncretismは,インカ帝国の版図であったペルー,ボリビア,エクアドルなどの高地住民の間にも顕著にみられ,人口集中地域でのキリスト教化が集団改宗の形をとらざるをえなかったことに,その原因の一端がうかがえる。強制と集団洗礼からは内実のある改宗を望むことは無理である。…
※「シンクレティズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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