カルパート山脈(読み)カルパートさんみゃく(その他表記)Carpathian Mountains

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルパート山脈」の意味・わかりやすい解説

カルパート山脈
カルパートさんみゃく
Carpathian Mountains

東ヨーロッパ中部にある大きな山系。古代スラブ語のハルバートすなわち「山脈」から派生した名称。長さ 1500kmに達する弧状の山脈で,東に凸面を向け,西からハンガリー盆地が入り込む。平均すると標高 1000mといわれ,最高点は北部の高タトリ山地(ビソケタトリ。→タトリ山地)のゲルラホフスキーシュチート(2655m)。カルパート山脈は古第三紀アルプス造山運動によって隆起したが,ヨーロッパアルプスほどの隆起エネルギーをもたず,平頂丘の部分も各所に見られる。しかし北部のベスキジや高タトリでは山頂付近に氷食(→氷河作用)の跡を見せて鋭い山容を示している。現存氷河はない。年降水量は東ヨーロッパとしては多く,南部で 800mm,北部で 1500mmに達する。山麓はよく発達し,山腹にかけてはブナ,カシワの美林,中腹以上はマツモミの林となり,氷河湖などとともに国立公園とされる地域も多い。2007年ウクライナとスロバキアに点在するブナ原生林が世界遺産の自然遺産に登録され,2011年にはドイツ領域にも拡大された。おもな河川はドナウ水系ではバーフ川ティサ川ムレシュ川などがあり,東斜面ではプルト川ドネストル川などがある。上流部から中流部にかけては急流で,各地にビストリツァ早瀬)を冠した地名があり,電源地帯とされている。カルパートは歴史的にいわゆる移牧が盛んであったが,今日ではヤギ飼育の禁止,集団農場組織化により,山の植生を破壊することはなくなった。山麓には石油(プロイエシュチ),鉄,鉛,亜鉛(スロベンスケルドホリエ山脈など),岩塩スラニク)などの地下資源が多く,各地に鉱泉も湧出し,保養地となっている。

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