カロンヌ(英語表記)Charles-Alexandre de Calonne

改訂新版 世界大百科事典 「カロンヌ」の意味・わかりやすい解説

カロンヌ
Charles-Alexandre de Calonne
生没年:1734-1802

フランス政治家。フランドル地方ドゥエに,高等法院院長の息子として生まれる。1754年に弁護士となるが,59年ドゥエ高等法院検事となったのをふりだしに,以後,宮内審理官を経てメッスリールの地方長官を歴任し,83年,金融界との親交を買われて財務総監就任,巨額の負債を抱えていた国家財政の立直しにあたった。しかし,その財政再建計画は,特権身分の利益を擁護する高等法院によって阻まれたため,87年2月,彼は国王の諮問会議である名士会を召集し,身分にかかわりなく全土地所有者に課せられる平等な地租の制定,また全土地所有者によって選出され課税の配分権を持つ〈州議会〉の設置など一連の改革を提案した。財政制度の近代化を目的とする彼の改革案は,確かに聖職者や貴族の免税特権を侵害し,ブルジョアと土地所有農民に対する配慮を示してはいたが,根本的には身分制を否定しているわけではなかった。それゆえ,国王の権威をもって臨めば名士たちは提案に従うであろうとカロンヌは考えた。しかし,彼の予想に反して名士たちは強く反発し,結局この名士会が契機となって,実質的にはフランス革命の第1段階を形成するといわれる〈貴族の革命〉が開始されるのである。彼は88年4月罷免され,高等法院の告発を避けるためイギリスに亡命。革命中は国外で反革命運動を組織した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カロンヌ」の意味・わかりやすい解説

カロンヌ
かろんぬ
Charles-Alexandre de Calonne
(1734―1802)

フランス革命直前の財務総監。ドゥエに生まれ、パリの大学に学んだのち、アルトアの高等法院、メス、リールの知事を経て、1783年にネッケルの後を受けて財務総監に就任した。財政赤字解消のための増税は不可能として、ネッケルに倣い放漫な公債政策をとったが、たちまち窮地に陥り、政策を急転回させた。1786年、特権2身分への課税を目的とする臨時地租の新設、塩税の全国的賦課、国内関税の廃止、穀物取引の自由、賦役の廃止など18か条の財政改革計画をたて、名士会の承認を得ようとしたが、その否決にあい孤立、1787年4月辞職を余儀なくされブリエンヌに席を譲った。

 1789年、革命の勃発(ぼっぱつ)とともにいち早く亡命し、1791年から反革命活動に参加した。しかし、たいした効果もなく、ナポレオンの権力掌握後に許可を得て帰国、その後もなすところなくまもなく死去した。革命勃発直後のフランスの状況についての著書がある。

[樋口謹一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カロンヌ」の意味・わかりやすい解説

カロンヌ
Calonne, Charles-Alexandre de

[生]1734.1.20. ノール,ドゥエ
[没]1802.10.29/30. パリ
フランスの政治家,財政家。メッス,リールのアンタンダンを歴任後,1783年 11月財務総監に就任。国庫の赤字解消のため,J.ネッケルにならって放漫な公債政策をとったが,かえって身動きできなくなり,政策を変更して性急な改革のプログラムを立案 (すべての階層からの地租の徴税,政府の短期負債償還の長期化,穀物流通に対する政府統制の撤廃,国王賦役の金納化など) ,87年2月名士会の承認を得ようとしたが反対され,同年4月財務総監を罷免された。フランス革命の勃発とともにイギリスに亡命し,反革命運動の財政的援助を行なった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カロンヌ」の解説

カロンヌ
Charles-Alexandre de Calonne

1734~1802

フランスの政治家。1783年財務総監に就任。当初は積極政策により国庫の危機克服を試みたが成功せず,87年地方議会設置,財政改革などを含む広範な改革案を作成,名士会を召集しその支持を得ようとしたが,予想に反し強硬な反対を受け失脚した。

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百科事典マイペディア 「カロンヌ」の意味・わかりやすい解説

カロンヌ

フランスの政治家。1783年財務総監に就任。州議会設置,特権階級への課税などの広範な改革案を出したが,その承認のため1787年召集した名士会で猛反対を受け失脚。英国に亡命。

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旺文社世界史事典 三訂版 「カロンヌ」の解説

カロンヌ
Charles Alexandre de Calonne

1734〜1802
フランスの政治家
1783年,ネッケルの後をうけて財務長官に就任した。彼は特権階級への課税を計画し,1787年,名士会を召集して承認を求めたが,否決されて辞職し,のちイギリスに亡命した。

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367日誕生日大事典 「カロンヌ」の解説

カロンヌ

生年月日:1734年1月20日
フランスの政治家
1802年没

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