キタダケソウ(英語表記)Callianthemum hondoense Nakai et Hara

改訂新版 世界大百科事典 「キタダケソウ」の意味・わかりやすい解説

キタダケソウ
Callianthemum hondoense Nakai et Hara

山梨県北岳高山帯に特産するキンポウゲ科多年草。根生葉は叢生(そうせい)し,2回3出複葉,小葉身は欠刻し,やや厚く,白緑色。6,7月ころ,高さ10~20cmの花茎を出しふつう1個の花をつける。花は直径2~2.5cm,萼片は5枚あるが早くに落ちる。花弁はふつう6~7枚,黄みを帯びた白色で,基部暗赤色の部分がある。おしべは多数。めしべも多数。果実瘦果(そうか)の集りである。日本には本種のほか,北海道アポイ岳の蛇紋岩地帯に特産するヒダカソウC.miyabeanum Tatewakiがある。

 キタダケソウ属Callianthemumには16種があり,ヨーロッパ,ヒマラヤ地方,中央アジア,東アジアの高山帯に分布している。北極地方に分布せず,分布範囲のごく狭い種が多く,古い起源の高山植物とみなされる。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キタダケソウ」の意味・わかりやすい解説

キタダケソウ
きただけそう / 北岳草
[学] Callianthemum hondoense Nakai et Hara

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)ウメザキサバノオ属の多年草。南アルプス北岳の山頂付近の風衝地の小石混じりの草原に特産する高山植物。茎は高さ約10センチメートル。葉は3回3出複葉。花は白色、直径約2センチメートルで、6~7月、茎の先に一つずつ開く。本属はヨーロッパからアジアにかけての高山に約15種分布し、日本とその付近では本種のほかに、北海道アポイ岳特産のヒダカソウC. miyabeanum Tatewaki、北海道崕(きりぎし)山特産のキリギシソウC. kirigishiense (Ken Sato et Koji Ito) Kadota、朝鮮北部のウメザキサバノオC. insigne Nakaiがある。

[門田裕一 2020年3月18日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「キタダケソウ」の意味・わかりやすい解説

キタダケソウ

山梨県北岳に特産するキンポウゲ科の多年草。礫(れき)まじりの高山草地にはえる。高さ10cm内外,根出葉は3回3出複葉で多少粉白をおびる。花は1個つき,白色で径約2cm,萼片(がくへん)は5枚,花弁は6〜8枚。6月中旬〜7月上旬に咲く。近縁のヒダカソウは北海道アポイ岳に特産し,茎葉の基部が広がり,花は葉が展開しきらないうちに咲くことなどで異なる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android