日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギャング・エイジ」の意味・わかりやすい解説
ギャング・エイジ
ぎゃんぐえいじ
gang age
徒党時代と訳されることもある。小学校後半くらいになると仲間意識が強まり、同性・同年輩の閉鎖的集団をつくり、メンバーの間でだけ通用する合いことば、暗号、秘密の集合場所、特定の遊びなどを共有し、メンバーがそれぞれリーダー、連絡係などの役割を分担するという新奇な社会的活動がみられるようになる。この時期をギャング・エイジとよぶ。ギャング・エイジは、それまでの親や教師への一方的依存関係から脱却して、より対等で相互的な人間関係や自発的な組織構成を求め、幼いなりの自治組織をつくるための発達上かなり必然的な要求からおこると考えられる。ときとして、集団による権威への反抗という形に逸脱することもあるため、親や教師からはギャング・エイジの仲間集団は反逆や非行のしるしのようにみえるが、本質的には子供はこれによって相互性、責任感、役割分担、自他の個性、支配―服従関係などを学ぶと考えられる。『トム・ソーヤの冒険』『少年探偵団』などはギャング・エイジ物語の典型であるが、20世紀後半以降の日本では地域社会の衰退、遊び場の喪失、受験教育による余暇時間拘束などのため発達上肝要な契機をなすこの現象が、とくに都市部ではほぼ失われてしまった。このことは、学級集団におけるいじめなど、多くの子供問題を引き起こす一つの遠因として注目に値する。
[藤永 保]
『服部祥子著『子どもが育つみちすじ――愛と英知の親子学』(1989・朱鷺書房)』▽『鈴木和夫著『教師入門5 ギャングエイジと学級集団づくり』(1994・明治図書)』▽『江戸川乱歩著『少年探偵団・江戸川乱歩第2巻 少年探偵団』(1998・ポプラ社)』▽『楠凡之著『いじめと児童虐待の臨床教育学』(2002・ミネルヴァ書房)』▽『マーク・トウェーン著、坂下昇訳『トム・ソーヤの冒険』(講談社文庫)』