ギンバイカ(英語表記)common myrtle
Myrtus communis L.

改訂新版 世界大百科事典 「ギンバイカ」の意味・わかりやすい解説

ギンバイカ
common myrtle
Myrtus communis L.

アラビアやヨーロッパではミルテの名で古くから知られているフトモモ科樹木。祝の木(いわいのき)とも称され,結婚式の花輪にされるほかに,花木として庭園に植えられ,切花にも利用される。葉と果実が香るので,酒や食物の香付けや香水の原料ともなる。原産地は中近東から地中海地方。常緑低木で高さ3mくらい,枝は多く出てよく茂り,樹形は自然に整う。葉は披針形で先はとがり長さ4cmくらい,濃緑色で光沢があり革質,対生して枝に密につく。花は上向きに多くつき,葉とよくつり合う。花は5弁で直径1~5cmくらい,白色または帯赤色で糸状の長いおしべが多数生じ,美しさを増す。花期は夏から秋。葉や花から芳香ある精油が採れ,また薬用にもされる。葉形の変異から多くの園芸品種が区別され,日本でも暖地の切花生産では小葉系統のものが栽培されている。繁殖は実生でもよいが,通常は挿木による。性質は強健で乾燥にも耐え作りやすく,暖地では野外で育つ。寒冷地では霜除けが必要である。
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ギンバイカは美神アフロディテ(ウェヌス)の神木とされ,常緑樹であるところから〈不死〉や〈復活〉のシンボルともなり,外地に移民する際の護符として尊ばれた。その葉や実が芳香を発するため,ローマ時代には湯に浸けて入浴する習慣も生まれ,女神の美しさにあやかろうとする女性たちの間で流行した。またギリシアでこの花輪をナウクラティテスと呼んだのは,エジプトのギリシア植民市ナウクラティスの商船が大しけにあったとき,船内のアフロディテ像に加護を祈願したところ,船のあちこちにこの木が生え出て沈没を免れたという伝説に由来する。花言葉は〈愛〉。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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