クラブ(英語表記)club

翻訳|club

精選版 日本国語大辞典 「クラブ」の意味・読み・例文・類語

クラブ

〘名〙 (club)
① 共通の目的・利益を追求するための、何らかの政治性・娯楽性・趣味性を持つ団体。
(イ) 趣味・スポーツ・社交などを楽しむための団体。また、その集会所。
※朝日新聞‐明治一九年(1886)四月二八日「曾て横浜にクラブを創設せし以来、其大に利益あることを悟り、東京の紳士は鹿鳴館を以て東京クラブとなしたりしは」
(ロ) 会員が何らかの特典を受けるような営利団体。
※愛情について(1953‐54)〈田宮虎彦〉五「それだけの人数の会員をもっているクラブは、そのころのマネキンクラブとしては、もっとも大きいクラブであった」
(ハ) 学校でのクラブ活動をいう。
※絵合せ(1970)〈庄野潤三〉二「冬休みに陸上の練習をしていた時〈略〉途中で同じクラブの仲間である大沢君の家の横を通った」
(ニ) ボクシングで、選手の所属する団体。
※漫才読本(1936)〈横山エンタツ〉あきれた連中「この一戦にクラブの興廃を賭したマネジア吉岡さんや」
② 会員制をたてまえとするバー。
※太陽の季節(1955)〈石原慎太郎〉「キャバレーの女給達を連れてクラブに行った時」
※黯い潮(1950)〈井上靖〉一「警視庁のクラブから電話です」
④ ゴルフ用具の一つ。ボールを打つ棒。先端は木製または金属。ウッドクラブアイアンクラブ、パターの三種がある。
※真理の春(1930)〈細田民樹〉島の噴煙「ブルジョア共が、愉快さうに棒(クラブ)を振ってますわ」
⑤ 黒い三つ葉のクローバーの模様をつけたトランプの札。〔外来語辞典(1914)〕
※童謡・トランプ(1926)〈サトウ・ハチロー〉「クラブ の クインは さみしさう」
[語誌]①の意味では、最初は社交機関の名称として用いられていたが、次第にその用法を拡大し、明治二〇年代に入ると政治団体の名称としても用いられるようになる。また、これ以降、雑誌名にも盛んに用いられた。「倶楽部」とも書く。

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デジタル大辞泉 「クラブ」の意味・読み・例文・類語

クラブ(crab)

かにのこと。「クラブミートサラダ」

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改訂新版 世界大百科事典 「クラブ」の意味・わかりやすい解説

クラブ
club

18世紀末から19世紀にかけてヨーロッパ各地で成立した集団association。

ドイツでは協会(フェラインVerein)と呼ばれる。中世には人的結合の重要な単位として兄弟団があったが,これは宗教と家と身分という三つの柱によって支えられていた。兄弟団に加入する単位は家であり,兄弟団は共同の祭壇をもち,同じ身分の者からなりたっていた。ところが宗教改革によって宗教のきずなが緩み,フランス革命によって身分の枠が崩壊し,さらに産業革命によって家のきずなが解体しかけていた状況のなかで,主として都市において協会が生まれていった。それまでは家と身分と宗教のきずなに守られて生きていた個人が,大都市のなかで自己の存在を確かめる場として協会が生まれたのである。したがって協会ははじめ趣味と実益の享受を目的とし,入会・退会自由で,性別,身分を問わず,だれでも加入できる団体として出発した。ドイツの場合はとくに,ナポレオンによる占領のもとで統一国家が崩壊している状況のなかからこの運動が起こったから,協会設立運動は一種の政治的独立運動の様相をも呈していた。身分や職業による制限の撤廃,地方割拠的な政治的制度に対する新しい学術の交流がはかられ,それらはまず郷土の発見へと向けられていった。つまり国家・経済の枠が崩壊したとき,個々の人間は家族,友人,隣人などの関係を頼りとして生き,それらのきずなのなかで,啓蒙思想の理想を受け入れ,普遍的なものが目ざされていたのである。初期の協会は〈共同の利益と愛国心に基づく〉ものが多く,啓蒙思想はドイツ語による作品を通して新しいドイツの発見の一助となり,重農主義思想は農業社会と共同の福祉への関心を通して地域社会(郷土)の発見へと連なってゆく。そこでは,J.メーザーの《愛国者の幻想》(1774-78)にみられるように地域の開発と歴史研究とが結びついていた。

 初期の協会としては,ライプチヒの〈ドイツ語と古代研究のドイツ協会〉のような尚古的性格のものが多かったが,やがて読書協会,博物館協会,歴史協会,農業技術改良協会,コーヒー・クラブなどの多彩な性格の協会が生まれ,19世紀はまさに協会の時代と呼ぶにふさわしい状況となっていた。協会のなかで人々はそれまでの身分のきずなや家族のしがらみ,そして宗教のきずなからも解き放たれて,それぞれの趣味について語りあい,その語らいは啓蒙思想に媒介されて普遍的なものへと連なっていると自覚されていた。協会の構成員は多彩であったが,歴史協会などには教師が多く,手工業の親方や肉屋,薬局の主人なども加わっていた。とくに歴史協会は各地の古文書の収集と刊行をみずから行い,現在の歴史学の基礎となる史料集を刊行している。学問が素人によって担われ,それぞれ異なった個性や環境の人々が一つの協会に結集することができた幸せな時代であった。後になると国家が介入しはじめ,協会の性格にも多少の変化がみられるが,ヨーロッパでは今日でも,このような協会が存続しつづけ,その基本性格は変りなく貫かれている。
執筆者:

イギリスのクラブは,支配階級であるジェントルマン層の生活様式の一部として発達し,今日では国民文化の基幹をなしている。中世にもいくつかの飲食クラブが知られているし,大陸でいう兄弟団,信心会(イギリスではフラターニティと呼ぶ)の類は無数にあった。産業革命期に広がった庶民の互助組織である友愛組合もクラブの一種とみられるし,19世紀に労働時間が短縮されると,労働者にも余暇が生じて彼らの組織もふえる。しかし,イギリスのクラブの最大の特色は,それが一般に上流・中産階級のステータス・シンボルとなっていること,都市的な余暇のすごし方の典型となったこと,近代に特徴的なものであること,などの点にある。それは支配階級の象徴であったから,政治クラブの性格をもつ場合が多かったが,ほかに文芸,芸術,学問を目的とするクラブ,スポーツ・クラブ,それらすべてに共通する遊興--ダンスやギャンブル--をもっぱら目的とする社交クラブなど,多様なものがある。

 近代的なクラブは,エリザベス時代にW.ローリーがつくった〈フライデー通り〉をもって嚆矢とするが,それが一挙に普及するのは,ヨーロッパ大陸よりも早く,コーヒー・ハウス(喫茶店)の群生した17世紀後半のことである。成立期のクラブの集会は,コーヒー・ハウスの特定の一室を定期的に借り切って行われたのである。このピューリタン革命期の政治クラブとしては,革命政権派の〈ロータRota〉,王党派の〈シールド・ノットSealed Knot〉などが知られる。18世紀になると市民勢力のいっそうの台頭を反映して,クラブは急成長を遂げる。なかには,マグハウス・クラブと総称された,乱痴気騒ぎやギャンブル,はては一般市民を襲撃するなど無軌道な行動に走るものも現れたが,1764年には社交クラブ〈ホワイトWhite's〉が〈オルマックAlmack's〉と改称され,トーリー党の牙城と化するとともに,ギャンブルで勇名を馳せる(オルマックは今日の〈ブルックBrook's〉の前身)。文学クラブの〈キット・キャットKit-Cat〉やジョンソン博士の〈ザ・クラブThe Club〉,料理で有名になった〈ブードルBoodle's〉などのクラブも成立した。19世紀にも,トーリー党の政治クラブ〈カールトンCarlton〉(1831設立)などクラブが生まれた。

 19世紀の上流のクラブは,著名な建築家の手になる専用の建物をロンドンのペル・メル街にもつようになる。また,職業や階層による分化が進行し,コーヒー・ハウス時代の自由で開放的な雰囲気とは対照的な傾向を示す。運営形態は各クラブで多様だが,一般に新会員の入会に厳格な制限が設けられてもいた。なお,1902年以降は会員名簿などの登録が法的に義務づけられている。

 クラブは本来ゲストとして以外には女性には開かれていなかったが,1883年に〈アレクサンドリアAlexandria〉,87年に〈女性大学人University Women's〉などの女性クラブが生まれ,20世紀に激増した。イギリス型クラブは,18世紀から大陸にも普及し,とくにフランスでは革命期の政治に決定的な影響を与えた。アメリカでは,その民主的な政治形態を反映して一般開放型の政治クラブも発達し,そのネットワーク大統領選挙などで威力を発揮している。なお,国際的なクラブにはロータリー・クラブ,ライオンズ・クラブなどがある。
執筆者:

日本では,1872年(明治5)実業家西村勝三らが,ヨーロッパのクラブを範として,東京築地に建設した〈ナショナルクラブ〉が最初であろう。76年には福沢諭吉がクラブの性質をもった集会所を建てた。その趣意文〈万来舎之記〉には,〈今度,当邸内に於て,一棟の集会所を建設せり,之を万来舎と云ふ。其記文左の如し。舎を万来と名けたるは,衆客の来遊に備ふればなり。既に客と云へば主あるべきが,先づ来るの客を主とし,後れて来るの客を客とす。……江湖の諸君子,貴賤貧富の別なく,続々来舎して其楽みを洪ひにせよ〉(《明治事物起源》)とある。また,福沢は80年慶応義塾の出身者,縁故者を多く有して結成された,交詢社発会の中心人物でもあった。明治10年代に入ると各地,各階層にクラブが結成されるようになるが,その性格も必ずしも社交機関としてのクラブだけではなかった。長崎,横浜などの開港地には商人を中心としたクラブがつくられ,商業取引や外国交易に一役を担った。また,国会開設前後になると東北俱楽部,庚寅俱楽部,大同俱楽部など政社にクラブの名をつけるものが多くなった。

 このようななかで明治期の政治状況を顕著に表しているクラブが,井上馨外務卿が発起して84年に設立した東京俱楽部である。その主意には,〈修好の媒介を謀り,内外国人の交際を親密にせんが為め,海外諸国に現行するクラブの体裁に準拠し,茲に俱楽部を設立し,会員を募集す〉とある。東京俱楽部の結成は,その第1回会合が鹿鳴館で開かれたことに象徴されるように,不平等条約改正の準備の一環としてであった。その会員は,特別会員(皇族),名誉会員(在日外国公使,在日中の来遊外国貴紳,帰朝中の日本公使),通常会員(内外朝野の品行正良,紳士の資格を有する者)の3種類で,入会金5円,年会費24円であった(現在,入会金30万円,年会費1万2000円)。また,このようなクラブはイギリスの伝統を受け継いでメンズ・クラブ(いわゆる女人禁制)であることが規則で,本家イギリスでその伝統が崩されているにもかかわらず,東京俱楽部ではその設立以来,いっさいの女性の入室を禁じている。ちなみに,交詢社では食堂とロビー,日本俱楽部(1897設立)ではロビーと四つの会議室に限り女性の入室を認めている。なお,中等教育の大衆化にともない学校におけるクラブ活動が発展し,また近年,スポーツを主とするクラブの結成が多くみられる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラブ」の意味・わかりやすい解説

クラブ
くらぶ
club

結社の一形態。広義には、なんらかの共通の目的・関心を満たすために、一定の約束のもとに、基本的には平等な資格で、自発的に加入した成員によって運営される、生計を目的としない、パートタイムの機能集団のことである。クラブということば自体はクリーブcleave(執着する、団結する)という英語に由来する。ドイツ語のクラブに相当する語は同業組合、ギルド、宴会などを意味するツェッヘZecheであり、本来の意味は共飲共食のことであった。日本では「倶楽部」の字をあてた。

[綾部恒雄]

人類学からみたクラブ

クラブということばはイギリス起源であるが、同種の機能集団は人類史上古く、いわゆる未開社会においても、その存在がよく知られている。未開社会のクラブは、地域や種族によって、構造や機能、儀礼や目的が多様であり、秘密結社の形をとっているものも多い。一般に部族社会では、クラブの成員であることは高い社会的地位を意味しており、ナイジェリアのベニン人の王宮結社や、イボ人の「肩書のある首長」の会であるオゾ結社などは典型的なエリートのみのクラブである。ニューギニアのエレア人のハリフ結社やナイジェリアのヨルバ人のオグボニ結社は、政治的機能をもつクラブといえる。シエラレオネからリベリアにかけて住むメンデ人には女性によるクラブがあり、リベリアのクペル人にみられるポロ結社などは、少年を教育する目的をもったクラブである。イギリスの植民地政策に反対して闘ったケニアのキクユ人のマウマウ団は、革命的秘密クラブであった。ミクロネシアやアフリカの一部には、共食や演劇やレクリエーションを目的としたクラブも多い。

[綾部恒雄]

欧米などにおけるクラブ

クラブは古代ギリシア・ローマ時代には宗教的な組織の一部で、ともに食事をしながら政治や商業のことなどを話し合う場所の意味であった。イギリスでは16世紀ごろから宗教的な活動をするクラブがつくられ、のちに目的が多岐になっていったが、多くは上流社会の社交クラブで、階層別・職業別につくられた親睦(しんぼく)団体であった。17世紀初頭にコーヒーがトルコから輪入され、コーヒーハウスやターバン(宿屋)でクラブの集会が行われるようになった。職業的なものとは別の、趣味や文学・芸術などの愛好団体が生まれてくるのは17世紀後半から18世紀前半で、ヨット、ボート、クリケットなどをはじめスポーツのクラブもほぼこの時代に形成され始めた。登山を目的とするアルパイン・クラブの成立は比較的遅く、1857年のことである。婦人をおもなメンバーとする婦人問題や趣味のクラブが形成されたのは18世紀末であった。地域にはそれぞれルーラル・クラブがつくられ、地域の人々のコミュニティの中心として憩いの場となっていた。イギリスにおけるこのようなクラブの発達は、自治を重んじる民主主義形成の母胎であった。クラブの自治の要素が極度に発達したものとしてイギリスのジョッキー・クラブがあげられ、競馬に関して法律の範囲内での準司法的権能をもつに至っている。

 アメリカでは20世紀に入って郊外でスポーツを楽しむためのカントリー・クラブがゴルフを中心に発達した。このようなクラブの運営は会員の醵出(きょしゅつ)金や寄付金によって行われ、営業行為は行わない。役員も会員のなかから選出される。クラブライフはクラブハウスを中心に行われ、クラブハウスは集会に必要な各施設、飲食、娯楽、宿泊施設も設けられているものが多い。イギリスやアメリカのいわゆる名門大学においても学生のクラブが古くからあるが、依然として社会の階層を反映した構成が崩れたとはいえない。1902年プリンストン大学学長となったウッドロー・ウィルソンは閉鎖的な学生クラブを大学改革のおもな対象としたが、理事などの猛反対で失敗したことは有名である。ドイツの学生組合(ブルシェンシャフト)も時代により多様な性格をもつが、学生のクラブといってもよい。

 中国では明(みん)代以降、同郷・同業をはじめ多くのグループが活動の本拠として会館をもっている。会館にはさまざまな形態があるが、仲間相互の便宜や互助を図ることは共通している。

[徳久球雄]

日本のクラブ

日本においてはこのような個人の自主的行動によるクラブの形成は歴史が浅く、明治初期に欧米の模倣をして一部上流階級の社交場が存在し、だんだん趣味やスポーツの団体として発達した。しかし本来の民主主義の母胎としての個人の自由な意見の表現や奉仕の団体としての発達は少なく、主としてスポーツや趣味の同好会としての意義に定着し、また飲食の場としてのみの場所や社交場の意味に用いられている場合が多く、欧米とは異なった形のクラブが発達しているといえよう。

[徳久球雄]

『小林章夫著『クラブ』(1985・駸々堂)』

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音楽用語ダス 「クラブ」の解説

クラブ

昔、ディスコ、今やクラブである。クにアクセントで、サッカーや陸上、学校のクラブ活動のそれとなる。ラブを同じトーンにし、クより少々上げ目に発音するのが、ここで言うクラブである。DJがターンテーブル(レコード・プレーヤー)でビニル盤(アナログ盤=LP)を回し、それに合わせ客が踊るというのが基本。DJは、新しい時代を象徴するアーティストである。選曲のセンスが問われ、スクラッチなどのDJテクニック(2台のターンテーブルとサンプラー、エフェクターなどを駆使してオリジナルサウンドを彼ら流に再構築していく)が問われる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラブ」の意味・わかりやすい解説

クラブ
club

娯楽,レクリエーションなどを目的として結成される人為的社会集団。集団類型的には機能的集団の一つ。しかし,集団としての統制が弱く開放的で,集団意識が薄い。アメリカの社会などではクラブがよく発達しており,一部は政治クラブの形で拡大し,圧力団体になることもある。

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デジタル大辞泉プラス 「クラブ」の解説

クラブ

ゲームソフト、アニメ「ポケットモンスター」シリーズに登場するキャラクター。さわがにポケモン、「みず」タイプ、高さ0.4m、重さ6.5kg。特性は「かいりきバサミ」「シェルアーマー」、かくれ特性は「ちからずく」。後に「キングラー」に進化する。

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世界大百科事典(旧版)内のクラブの言及

【棍棒】より

…棒状の狩猟具および武器。棍棒(クラブclub)は世界に広く分布するが,造作は文化によって異なる。アフリカのサンでは,野ウサギに投げつける狩猟具として手ごろな木の棒にほんの少し加工して用いる。…

※「クラブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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