(読み)カニ

デジタル大辞泉 「蟹」の意味・読み・例文・類語

かに【×蟹】

十脚目短尾下目の甲殻類総称。体は頭胸部にあたる甲と、一対のはさみ脚および四対の歩脚からなる。腹部は甲の腹側に折れ曲がって密着し、雌のほうが幅広い。海水淡水・陸のいずれにも分布し、食用とするものが多い。ふつう横向きに歩行するが、前または後方に歩ける種もある。サワガニスナガニガザミケガニなど。 夏》原爆許すまじ―かつかつと瓦礫あゆむ/兜太
蟹屎かにくそ」の略。
[補説]書名別項。→

かい【蟹】[漢字項目]

人名用漢字] [音]カイ(漢) [訓]かに
〈カイ〉節足動物の名。カニ。「蟹甲蟹行
〈かに(がに)〉「蟹座蟹玉蟹工船沢蟹山蟹
[補説]「蠏」は異体字
難読蟹股がにまた

かに【蟹】[書名]

河野多恵子短編小説。昭和38年(1963)発表。同年、第49回芥川賞受賞。

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精選版 日本国語大辞典 「蟹」の意味・読み・例文・類語

かに【蟹】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 甲殻類十脚目短尾下目に属する節足動物の総称。体は一枚の甲羅(こうら)でおおわれた頭胸部と縮小した腹部からなっている。腹部は普通七節あるが、筋肉が退化していて運動器官としては役に立たない。しかし、雌はこの内側に卵を抱いて保護する。五対の脚のうちの第一脚は、はさみになっていて餌をとったり攻撃などに役立つ。多くの種類が横這いで運動する。卵は雌の腹部に付着して発生がすすみ、ゾエア幼生になって卵から孵化(ふか)し、浮遊生活をしながらメガロパを経て幼ガニになる。脱皮のたびに成長する。ほとんどが海産で、純淡水産のものは日本ではサワガニただ一種である。日本特産のタカアシガニは世界最大のカニで、はさみ脚を開いた両脚の長さが三メートル以上になる。世界に約五〇〇〇種がいて、日本にはそのうちの約一〇〇〇種ほどがすむ。ガザミ、ケガニ、ズワイガニなど水産資源として重要なものが多い。かね。横行介士。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「この迦邇(カニ)や いづくの迦邇(カニ)、百伝(ももづた)ふ 角鹿(つぬが)の迦邇(カニ) 横去らふ 何処(いづく)に至る」(出典:古事記(712)中・歌謡)
  3. のように、横に歩き、あるいは広がってすわること。また、その人をいう。蟹行(かいこう)。「屋台店のかにをきめる」
  4. 遊女が客の目をぬすんで間夫(まぶ)に忍び逢いに行くこと。横番(よこばん)を切ること。
    1. [初出の実例]「けいせいは間夫のへのこでかにに成り」(出典:雑俳・末摘花(1776‐1801)三)
  5. 男根をはさむの意で、女陰、また娼婦(しょうふ)をいう俗語。
  6. かにくそ(蟹屎)
    1. [初出の実例]「ここら昔より、君達に仕うまつりつるに、程大きに、かにといふ物夢ばかりつき給はぬこそなけれ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
  7. 小児の水瘡(みずかさ)
  8. 紋所の名。を図案化したもの。蟹、丸に真向き海蟹、面蟹などがある。
    1. 丸に真向き海蟹@蟹
      丸に真向き海蟹@蟹
  9. 人形浄瑠璃で用いるかしらの一つ。の甲羅(こうら)のように横に広がった顔つきで、ちゃり役に用い、愚直な男のものと端敵(はがたき)のものとの二種類がある。
  10. 生け花の花留(はなどめ)の一つ。金属製で、の形をしたもの。

蟹の語誌

( 1 )霊異記‐中・八」に載る蟹蛙報恩譚の背景には、蟹には祝福性の強い霊威が備わっているという信仰があると考えられている。また、脱皮を繰り返す蟹の生命力から生じた蟹の霊威への信仰のあらわれとされている。
( 2 )民話「猿蟹合戦」で蟹が柿の種を育てるのも、小正月の行事である成木責め(果樹の実りを予祝する)との関連が考えられている。

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普及版 字通 「蟹」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 19画

[字音] カイ
[字訓] かに

[説文解字]

[字形] 形声
声符は解(かい)。〔説文〕十三上に「二敖(はさみ)り。旁行す。蛇鮮のに非ざれば、庇(かく)るる無し」とみえる。解に従うのは、脱皮する意か、あるいは、その全身が分節より成る意であろう。

[訓義]
1. かに。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕蟹 加邇(かに) 〔名義抄〕蟹 カニ

[語系]
蟹he、解keは声が近い。介keatはいくらか声が遠いようである。

[熟語]
蟹火・蟹殻・蟹眼・蟹匡・蟹戸・蟹甲・蟹羹・蟹行・蟹黄・蟹舎・蟹胥・蟹臍・蟹杯・蟹厄・蟹
[下接語]
蝦蟹・寒蟹・魚蟹・窟蟹・江蟹・蛤蟹・羹蟹・蟹・山蟹・嗜蟹・煮蟹・新蟹・鮮蟹・糖蟹・烹蟹・夜蟹・老蟹

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「蟹」の解説

蟹 (カニ)

動物。カニ類の総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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