日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラムスコイ」の意味・わかりやすい解説
クラムスコイ
くらむすこい
Иван Николаевич Крамской/Ivan Nikolaevich Kramskoy
(1837―1887)
19世紀ロシア美術を代表する画家の一人。貧しい町人階級の出で、若いころは写真師のもとで修正の仕事なども手がけ、のちサンクト・ペテルブルグの美術アカデミーに学んだ。しかし、当時のアカデミズムに反発して、移動展に積極的に参加し、肖像画の分野でも優れた仕事を残した。『荒野のキリスト』(1872年。トレチャコフ美術館)は苦悩するキリストの姿を全的に表現して、ロシア宗教美術の傑作の一つとなった。また、文豪トルストイと親交を結び、その肖像画(1871)も有名である。このほか、ニコライ・ネクラーソフ、サルティコフ・シチェドリン、シーシキンIvan Ivanovich Shishkin(1832―1898)なども描いている。晩年は明るく色彩豊かになり、その代表作として『見知らぬ女』(1883)がある。彼の肖像画ではその目の表情に独特のものが認められる。
[木村 浩]