出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
クロム(Ⅵ)のオキソ酸H2CrO4であるが、この酸自体は単離されていない。酸化クロム(Ⅵ)CrO3の水溶液がクロム酸溶液であるため、酸化クロム(Ⅵ)がクロム酸といわれたこともあった。
CrO3+H2O→H2CrO4
低濃度のクロム酸溶液は黄赤色であるが、濃度が高くなるにしたがって赤色ないし濃赤色を呈し、黒ずんだ色となる。溶液中にはCrO42-、HCrO4-、Cr2O72-などのイオンが存在し、高濃度になるとポリ酸イオンCr3O102-、Cr4O132-を生ずる。クロム酸イオンは塩基性では安定であるが、酸性になると可逆的に二クロム酸イオンCr2O72-に変化する。
2CrO42-+2H+Cr2O72-+H2O
[岩本振武]
クロム酸塩MI2CrO4を生成する酸H2CrO4の名称。遊離状態ではとり出されていないが,酸化クロム(Ⅵ)CrO3の水溶液をこのように呼ぶことが多い。転じてCrO3そのものをクロム酸ということもあるが,誤称である。酸化クロム(Ⅵ)水溶液がきわめて濃度の低いときは,クロム酸塩水溶液に似た黄赤色で,
CrO3+H2O⇄2H⁺+CrO42⁻
に近い状態であると考えられるが,濃度が高くなるにつれて赤色となり,HCrO4⁻,二クロム酸イオンCr2O72⁻などが含まれてくるようになり,さらに高濃度になって赤黒色となると,三クロム酸イオン[Cr3O10]2⁻,四クロム酸イオン[Cr4O13]2⁻などのポリクロム酸イオンが含まれてくる。
執筆者:中原 勝儼
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…
[酸化クロム(III)]
化学式Cr2O3。二クロム酸アンモニウム(NH4)2Cr2O7を熱分解させるか,二クロム酸塩を硫黄などと熱して還元してつくられる。 (NH4)2Cr2O7―→Cr2O3+N2+4H2Oまた水酸化クロム(III)を熱しても得られる。…
…化学式H2Cr2O7。重クロム酸bichromic acidともいうが,これは誤称である。遊離の状態では得られず,酸化クロム(VI) CrO3の水溶液中でクロム酸H2CrO4と平衡を保っていることが知られている。…
※「クロム酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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