クワズイモ(読み)くわずいも

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クワズイモ」の意味・わかりやすい解説

クワズイモ
くわずいも
[学] Alocasia odora (Lodd.) Spach

サトイモ科(APG分類:サトイモ科)の多年草。地上をはう太い棒状の貯蔵茎があり、上部は直立し、頂部に葉と花序をつける。ときに葉は1メートルを超える長い柄があり、葉身は卵形で、基部は心形、長さ60センチメートルに達し、9~13対の側脈がある。5~8月、数本の花柄を葉腋(ようえき)から出して花序を展開する。仏炎包(ぶつえんほう)は長さ約15センチメートル、下部は筒状で花軸を包み、中央部でいったん緊縮したのち、ボート状の舷部(げんぶ)へと広がる。舷部は早く枯れるが、筒部は果実が熟すまで残る。花軸は、基部に雌花群があり、続いて雄花とよく似た仮雄蕊(かゆうずい)群があり、その上部に雄花群が続き、さらに上部は仮雄蕊群に覆われる。四国南部、九州南部からインドにかけてのアジアの暖帯亜熱帯に広く分布する。名は、本種が全体にシュウ酸カルシウムを含んでいて、食すると中毒症状をおこすことがあるため、食用とならないことによる。クワズイモ属(アロカシア)には観賞用のほかに、食用とするものもある。

[邑田 仁 2022年1月21日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「クワズイモ」の意味・わかりやすい解説

クワズイモ

四国〜沖縄,東南アジアオーストラリアに分布し,湿地の常緑樹林下などにはえるサトイモ科の多年草。茎は太く地にはい,葉はサトイモの葉に似ているが厚い。5〜8月,緑色包葉の中に,円柱状の肉穂花序ができ,雄花は上部に,雌花は下部につく。サトイモに似ているが,えぐく食用にむかないため,この名がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のクワズイモの言及

【アロカシア】より

…サトイモ科のクワズイモ属Alocasiaの多年草で,熱帯アジアに約70種がある。茎は多くは短いが,多肉状で太い。…

【タロイモ】より

…この太平洋諸島のタロは,作物としては日本でも栽培されているサトイモをもともとは指すものであるが,南アメリカから新しくもち込まれたヤウテアも,サトイモに似ているため,現地でもタロと呼ばれることが多い。しかし,食用にされているサトイモ科のクワズイモ類,キルトスペルマ類,コンニャク類などは,同じようにいもを食用にする作物であっても,現地ではタロと呼ばないことが多い。日本語のタロイモの概念はすこぶる広義で,南方の根栽農耕文化圏で栽植されるコンニャク類を除くサトイモ科植物のなかで,地下茎を食用としているものをひっくるめて指していることが多いので,南太平洋でのタロという呼名とは同一概念ではない。…

※「クワズイモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android