翻訳|kuru
パプア・ニューギニアの食人の習慣のあるフォレFore族にのみみられた慢性進行性の神経疾患。現在では,食人の習慣がなくなるとともに消失している。とくに成人女性に多く,失調歩行と振戦(不随意の律動的な震え)で始まり,言語障害,眼球運動障害,情動変化も加わり,やがて起立も歩行も不能となり,3~6ヵ月で死亡する。小脳,脳幹,大脳基底核などの神経細胞の変性・脱落とともに組織の海綿状変化,クールー斑と呼ばれる嗜銀性構造物を特徴とする。1964年D.C.ガイジュセック(1923- 。1976年ノーベル生理・医学賞受賞)らは,クールー患者の脳乳剤をチンパンジーの脳内に接種し,18~30ヵ月後に同様な脳症を発症させることに成功し,伝播性であることを示した。その後の研究によりこの伝播因子は現在プリオンと呼ばれており,多くの疾患がプリオンの異常蓄積によることが知られるようになりプリオン病と総称されている。クールーはこのプリオン病研究の発端となったのである。
執筆者:水沢 英洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…脳実質の炎症による神経疾患で,病原体の脳実質への直接の影響によるもの,各種感染症に続発したり予防接種後などにおこるアレルギー性機序の考えられるものがある。(1)病原体が脳実質を直接侵すことによる脳炎 日本脳炎,エコノモ脳炎,単純ヘルペス脳炎などをはじめ病原体はほとんどがウイルスである。症状は発熱,頭痛,吐き気,嘔吐などで始まり,意識障害や精神症状を呈するようになる。回復後も後遺症を残すことがまれではない。…
※「クールー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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