フランス領ギアナ(読み)フランスりょうギアナ(英語表記)Guyane Française

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フランス領ギアナ」の意味・わかりやすい解説

フランス領ギアナ
フランスりょうギアナ
Guyane Française

南アメリカ北部にあるフランスの海外県。首都カイエンヌ。西はスリナム,南と東はブラジルと国境を接し,北は大西洋に面する。地質的には古期の岩石からなるギアナ高地の一部であるが,北流する河川による浸食が進み,南部に低い山地が散在するほかは北に向ってゆるやかに傾斜する平坦地となっている。北緯2°~6°の赤道地帯に位置するため気温は高く,カイエンヌの月平均気温 25~26℃。年較差はほとんどない。 12月~1月,4~7月が特に多雨で,沿岸部では年降水量 4000mmに上るところもあり,全土の約 90%が熱帯雨林に覆われる。住民の大半はクレオールと呼ばれる人々であるが,これは人種に関係なく,ヨーロッパ風の生活様式を取り入れている人々をさし,公用語フランス語のほかクレオル語 (現地語化したフランス語) を話す。人口はおもにカイエンヌを中心とした沿岸部に集中。 16世紀初めにスペイン人が沿岸部を探検。 17世紀前半フランス人が現在のカイエンヌの地に最初の植民地を建設。その後オランダ人,イギリス人による占領ポルトガルとの国境紛争などがあったが,18世紀前半徐々に人口が増加し,発展しはじめた。しかし 1848年の奴隷制廃止によりプランテーション経済が崩壊。 1852年以降サンローランデュマロニ,ディアブル島など数ヵ所に流刑植民地が建設された。ここに送られてきたヨーロッパ人の囚人熱帯気候のなかでの労働に耐えられず次々に死んでいったが,これら植民地はその後 90年以上にわたって存続フランス領ギアナ悪評の源となった。 1946年フランス本土の県と同等の地位をもつ海外県となり現在にいたっているが,現在南アメリカ大陸で唯一の非独立地域である。経済的には全面的にフランス本土に依存,農業も自給にほど遠く,食糧の輸入が年々増えている。膨大な森林資源はほとんど未開発。しかし近年漁業が発展し,エビを中心とした漁獲は輸出にも向けられている。エビの缶詰・冷凍工場もあり,製品はおもに日本,アメリカ合衆国に輸出される。鉱産物として金がある。鉄道はなく,道路も沿岸部を除くと未発達で,交通はおもに河川と空路による。カイエンヌに国際空港があり,クールーにはヨーロッパ宇宙機関 ESAのロケット打ち上げ基地がある。面積 8万3534km2。人口 24万3000(2011推計)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フランス領ギアナ」の意味・わかりやすい解説

フランス領ギアナ
ふらんすりょうぎあな
Guyane Française

南アメリカ北東部にあるフランスの海外県。北は大西洋に臨み、南と東はブラジル、西はスリナムに接する。面積8万3534平方キロメートル(2020)、人口15万7213(1999)、25万9865(2015センサス)。首都はカイエンヌ。南の国境地帯にギアナ高地の東端部をなすトゥムクウマケ山脈があり、最高点は860メートル。ここから国土は北東に向けて高度を下げ、内陸の熱帯雨林地帯とサバナを経て、海岸部には低湿な平野が広がる。おもな河川は西の国境をなすマロニ川と、東側国境のオヤポク川である。年平均気温は27℃、年降水量は平野でも3500ミリメートルに及ぶ。4~7月と、11~1月が雨期である。17世紀前半からの植民の歴史をもつが、沿岸にいくつかの植民地が開かれただけで未開発地が広い。耕地は沿岸平野にみられるのみで、米、トウモロコシ、コーヒー、カカオ、キャッサバ、バナナ、サトウキビなどが栽培される。鉱産物は1853年に発見された金と、ボーキサイトがある。主要輸出品はラム酒、木材など。住民はヨーロッパ系、アフリカ系、アジア系、先住民系に分けられるが、前2者がもっとも多い。大部分は海岸地帯に居住し、とくにカイエンヌには全人口の3分の1が集中する。公用語はフランス語で、宗教はカトリックが多い。1794年から1938年まで本国の流刑地として囚人が送られてきたが、1945年以後は流刑者は存在しない。1946年に海外県となり、現在、南アメリカ大陸唯一の非独立地域である。なお1964~1968年に建設されたヨーロッパ宇宙ロケット開発機構のギアナ宇宙センターは、カイエンヌの北西50キロメートルのクールーにある。

[山本正三]


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