グランド・ホテル(読み)ぐらんどほてる(英語表記)Grand Hotel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グランド・ホテル」の意味・わかりやすい解説

グランド・ホテル
ぐらんどほてる
Grand Hotel

アメリカ映画。1932年作品。ビッキ・バウムのベストセラー小説をウィリアム・A・ドレイクWilliam A. Drake(1899―1965)が戯曲化。さらにそれをもとにエドマンド・グールディングEdmund Goulding(1891―1959)監督が流麗な技法で映画化した。ベルリンのグランド・ホテル。社長と彼に雇われた速記係、プリマバレリーナ、工場帳簿係、なぞめいた男爵などが宿泊していた。彼らはもともと面識はなかったが、時間がたつにつれて、互いに縁ができる。それにつれて彼らの実情や背景もみえてくる。特定の主人公がいるわけではなく、ただ各人物のエピソードを並べた群像ものでもない。来合わせた人々それぞれの2日間の交わりを描きながら、総体として人の世というものを浮かび上がらせる。グレタ・ガルボやジョーン・クロフォードらMGM社のドル箱スターが何人も顔をあわせ、構成も巧みに、人生の縮図を端的に描き出し評判をとった。以後、同工の作品が続き、ある場所を舞台に多くの人物のドラマを交錯させる手法をグランド・ホテル形式というようになった。

[出口丈人]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のグランド・ホテルの言及

【オムニバス映画】より

…アメリカの映画史家によると,最初のオムニバス映画はパラマウントの《百万円貰ったら》(1932)で,思いがけなく転がり込む大金を巡る八つの挿話からなるこの映画は,18人の脚本家と7人の監督が名まえを連ねているが,MGMをライバル視していたパラマウントが企画の目新しさを意図したものであった。一方,MGMの,一つのホテルに出入りする人々の挿話を組み合わせて人生の明暗を描いた《グランド・ホテル》(1932)は,アカデミー作品賞を受賞し,その立体的な構成が〈グランド・ホテル形式〉ということばまで生んだが,そもそもは〈空の星より多いスター〉と誇ったMGMがオールスターキャスト作品として企画したもので,〈オムニバス・ストーリー映画〉,あるいは〈エピソード映画〉と呼ばれた。燕尾服を巡る六つの挿話からなるJ.デュビビエ監督の《運命の饗宴》(1942)は,〈オムニバス・エピソード映画〉と呼ばれた。…

※「グランド・ホテル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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