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グリーンスパン Greenspan, Alan

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

グリーンスパン
Greenspan, Alan

[生]1926.3.6. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の経済学者,連邦準備制度理事会 FRB議長(在任 1987~2006)。ジュリアード音楽院でサクソフォーンとクラリネットを学んだのち,ニューヨーク大学で経済学を学び,1948年に学士号,1950年に修士号,1977年に博士号を取得した。1954~74年および 1977~87年に金融コンサルティング会社を経営。その間の 1967年に,1968年の大統領選挙に立候補したリチャード・M.ニクソンの選挙運動に携わった。1970~74年大統領経済諮問委員会 CEA委員,1974~77年にはジェラルド・R.フォード大統領のもとで同委員会委員長を務め,インフレーションの抑制を果たした。レーガン政権期の 1981~83年には社会保障改革委員会委員長を務めた。1987年ロナルド・W.レーガン大統領から FRB議長の指名を受け,ポール・ボルカー議長のあとを継いで就任。その後もジョージ・H.W.ブッシュ,ウィリアム・J.クリントン両大統領から指名を受け,2006年まで議長を務めた。実務能力にたけた自由市場経済の信奉者として知られ,1991年3月から 2000年2月までにわたる,アメリカ史上最長の景気拡大をもたらした。しかしその後の世界的な景気後退については,2000年代初期の住宅バブル期に証券化された「サブプライムローン」の取り引きを放置したことや,金融業の規制緩和を進めたことなど,グリーンスパンの政策の失敗が 2008年の世界金融危機を招いたと,超党派で構成される金融危機調査委員会が 2011年に結論をくだした。2000年レジオン・ドヌール勲章を受章,2002年ナイトに叙された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

グリーンスパン
ぐりーんすぱん
Alan Greenspan
(1926― )

アメリカのマネタリスト(通貨政策重視派)経済学者。1987年8月から2006年1月までアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めた。柔軟で的確な金融政策の運営で、アメリカ経済の黄金期をもたらした手腕は「マエストロmaestro」(名指揮者)と称される。市場との巧みな対話力や政界・金融界との太いパイプなどを駆使し、87年10月の「ブラック・マンデーblack Monday」(株価大暴落)、2001年9月の同時多発テロなどの経済危機を乗り切った。FRB議長在任期間は歴代2位。2006年1月末に、議長職をベン・バーナンキに引き継いだ。
 ニューヨーク市生まれ。父は株式ブローカーで、幼少期に大恐慌を経験している。高校卒業後、いったんは音楽家を志しジュリアード音楽院でクラリネットを吹いていたが、進路を変え、ニューヨーク大学で経済学を学んだ。1948年に同大卒、50年に経済学修士、77年経済学博士号を取得。53年に経済コンサルタント会社、タウンゼンド・グリーンスパン社を設立し、その正確な経済分析力から、1回の講演料が数万ドルとされる花形エコノミストになった。70年から74年までアメリカ大統領経済諮問委員会(CEA)顧問、74年から77年までフォード政権下でCEA委員長などを務めた。財務省やFRB顧問なども歴任。ポール・ボルカーの後任として87年、元大統領レーガンからFRB議長に指名された。
 議長就任直後こそ、その手腕を疑問視する声もあったが、機動的な金融緩和への転換でブラック・マンデーを乗り切って信頼の素地を築いた。その後1994年末のメキシコ金融危機、97年のアジア通貨危機などを次々に克服。市場経済の信奉者ながら、96年末には加熱気味のアメリカ株式相場を「irrational exuberance」(根拠なき熱狂)と表現するなど、ときに市場を牽制(けんせい)し、アメリカ経済の「great moderation」(大いなる安定)をもたらした。18年間の在任期間中、先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)には合計55回出席。レーガン、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)の4人の大統領から信任され、アメリカ大統領と並び、世界経済や国際社会にもっとも影響力のある人物といわれた。
 2005年には、アメリカ市民に与えられる最高勲章である「自由勲章」を受章。夫人はNBCテレビの著名ジャーナリスト、アンドレア・ミッチェル。[矢野 武]
『デービッド・B・シシリア、ジェフリー・L・クルックシャンク著、伊藤洋一訳『グリーンスパンの魔術』(2000・日本経済新聞社) ▽伊藤洋一著『グリーンスパンは神様か?』(2001・ティビーエス・ブリタニカ) ▽ラビ・バトラ著、ペマ・ギャルポ、藤原直哉監訳『グリーンスパンの嘘』(2005・あ・うん) ▽ボブ・ウッドワード著、山岡洋一・高遠裕子訳『グリーンスパン』(日経ビジネス人文庫)』

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