コケシノブ(その他表記)Mecodium wrightii (v.d.Bosch) Copel.

改訂新版 世界大百科事典 「コケシノブ」の意味・わかりやすい解説

コケシノブ
Mecodium wrightii (v.d.Bosch) Copel.

深い山の森林中の湿った岩の上や樹幹に着生するコケシノブ科の小さなシダで,葉身の長さはせいぜい5mmまで。根茎は細く,ところどころで分枝しながら長くはう。葉は根茎上にまばらにつくが,多く集まってマット状のコロニーをつくる。葉身は2~3回羽状に分岐し,濃い緑色,裂片はやや長く伸び,葉脈は単生する。胞子囊群は裂片の頂端につき,包膜は2弁状に深く裂ける。北海道から本州,四国,九州北部にみられ,さらに朝鮮南部,アムール地方,サハリンから千島に分布し,カナダのバンクーバー近くのクイーン・シャーロット諸島でも発見された。

 コケシノブはその名の示すとおり,コケのような生活形をもち,葉には細胞間隙かんげき)などはなく,乾燥してちりちりに縮みあがっていても,湿度が高くなれば元の葉の形に戻る。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コケシノブ」の意味・わかりやすい解説

コケシノブ
こけしのぶ / 苔忍
[学] Mecodium wrightii (v. d. B.) Copel.

コケシノブ科の常緑性シダ。根茎は細く、もつれ合って長く伸び、長さ3~5センチメートルの葉を密生する。葉身は薄い膜質の長楕円(ちょうだえん)形で暗緑色、2~3回羽状に分裂する。羽片は中軸から30度ないし45度の鋭角に分出する。中軸、羽軸には翼がある。裂片は線形で幅1.5~2ミリメートル、末端胞子嚢(ほうしのう)群が生じ、2弁に深裂した広卵形の包膜で包まれる。亜高山帯の多湿の森林の岩石上、または樹幹に着生する。コウヤコケシノブHymenophyllum barbatumはコケシノブよりやや大きく、葉は長さ3~10センチメートル、裂片の縁には鋭い鋸歯(きょし)がある。岩上や樹幹に着生するほか、各地の低山の森中の乾いた所にも生える。キヨスミコケシノブM. oligosorumは関東以西の暖地の森林の樹幹に着生し、葉は小形で長さ2~4センチメートル、裏面の脈上に毛が生えているので他のコケシノブ属と区別できる。ホソバコケシノブM. polyanthosは大形で長さ10~15センチメートル、羽片は中軸から鈍角(45~70度)に分出し、裂片は細く幅0.5ミリメートル。関東以西の暖地に分布。

西田 誠]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コケシノブ」の意味・わかりやすい解説

コケシノブ
Mecodium wrightii; filmy fern

コケシノブ科の繊細なシダ植物で,日本と北アメリカの暖帯から亜寒帯にかけて広く分布する。山地の岩上に多く,ときには樹幹にも着生する。葉は薄く,大きなものでも 5cmほどで,2回羽状に分裂し,縁辺は全縁である。胞子嚢群は裂片の先端に達する葉脈の先に頂生し,包膜は2弁状である。2弁状の包膜とは,ハマグリの貝殻のような形の膜が2枚重なった状態をさし,同じコケシノブ科のシダでも,コップ状の包膜をもつものと明らかに区別される分類学的に重要な性質である。コケシノブという名は,葉が小型でコケのように薄く,葉の形がシノブに似ていることによる。

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