コトネアスター(読み)ことねあすたー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コトネアスター」の意味・わかりやすい解説

コトネアスター
ことねあすたー
[学] Cotoneaster

バラ科(APG分類:バラ科)シャリントウ属総称常緑または落葉低木でまれに小高木になる。ヨーロッパ、北アフリカ、アジアに約50種があり、中国西部、ヒマラヤに多く分布する。日本には自生種がないが、多くの種類が輸入されている。

小林義雄 2020年1月21日]

種類

サンゴカマツカC. franchetii Boisは中国西部、チベット原産で、フランシェシャリントウともいい、葉は卵形、長さ2.5~3センチメートルで、裏面は黄白色で短毛を密生する。花は小さく、白色。果実は径約7ミリメートルのなし状果で、10月に赤く熟す。ベニシタンC. horizontalis Decne.は中国西部原産で、枝が水平に広がり、分枝が多い。葉は広楕円(こうだえん)形で、長さは0.5~1.5センチメートルと小さい。6月に淡紅色の小花を1~2個つけ、10月に径約5ミリメートルの果実が赤く熟す。ヤナギバシャリントウC. salicifolius Fr.は中国西部原産で、葉は長楕円形、長さ3~8センチメートル、裏面は灰白色で軟毛がある。6月に多数の小さい白色花が散房花序につく。果実は径約6ミリメートルで赤く熟す。これらはいずれも昭和初年に日本に入ったが、ネパール原産のシャリントウC. rotundifolia Wall. var. lanata Schneid.は明治初年に入ってきた。葉は広楕円形ないし広倒卵形、長さ8~12ミリメートルで裏面に毛があり、花は白色で中央が淡紅色。果実は赤く熟す。

 庭木鉢植えとして栽培し、花や果実を観賞する。耐寒性があり、栽培は容易で、日当りのよい適湿地でよく育つ。繁殖は実生(みしょう)または挿木による。

[小林義雄 2020年1月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「コトネアスター」の意味・わかりやすい解説

コトネアスター
cotoneaster

庭園生垣盆栽などに用いられるバラ科シャリントウ属Cotoneasterの低木。ときには小高木ともなる。常緑のものと落葉のものがあり,白色や紅色を帯びる花は杯状に開くものから平開するものまである。果実も紅熟するものから黒熟するものがあり,球形から楕円形まで多様である。刈込みに強く,春の花やとくに美しい秋の果実を観賞するために,欧米では30種以上が栽植されている。ヒマラヤから中国にかけて40種以上にのぼる多くの種が記載されており,中央アジアからヨーロッパにかけてもいくつかの種が分布する。日本でも落葉あるいは半常緑の低木で,水平に枝を多く出すベニシタンC.horizontalis Decne.や,よく似て常緑で,小さい葉(長さ0.8cm)をつけるヒメシャリントウC.microphyllus Lindl.が盆栽やロックガーデンに使用される。またやや高木性になるギンヨウシャリントウC.pannosus Fr.やヤナギバシャリントウC.salicifolius Fr.などは生垣に利用される。シャリントウ属は,トキワサンザシ属ピラカンサ)に似ているがとげを有していない。やや乾燥した陽地が適しているが,土壌が肥えている必要はない。繁殖は挿木や種子で行う。挿木の時期は6~7月,枝を挿木すればよくつく。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コトネアスター」の意味・わかりやすい解説

コトネアスター
Cotoneaster

バラ科の落葉低木の1属で,北半球の温帯に 50種ほどある。シャリントウ属ともいう。日本には数種が観賞用に栽培されているが,そのうち最も普通な種類は C. horizontalisで生垣などに栽植する。中国大陸の原産で枝は地面に沿って広がり,高さ 1mほどの茂みとなる。花は白色5弁で,ボケに似ている。果実はタチバナモドキに似た赤い球形の核果である。

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世界大百科事典(旧版)内のコトネアスターの言及

【ピラカンサ】より

…トキワサンザシ属Pyracanthaはヨーロッパ東南部からアジアにかけて数種ある。シャリントウ属Cotoneaster(コトネアスター)やサンザシ属Crataegusに近縁で,とげのあることや果実の形質によって区別される。花だけでなく果実も美しいので,切花や生垣に多く利用される。…

※「コトネアスター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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