コニャック(その他表記)cognac

翻訳|cognac

デジタル大辞泉 「コニャック」の意味・読み・例文・類語

コニャック(〈フランス〉cognac)

フランス西部のコニャック地方で産する上質ブランデー。白ぶどう酒を蒸留し、かし材の樽に詰めて熟成させ、香りと味をつける。

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精選版 日本国語大辞典 「コニャック」の意味・読み・例文・類語

コニャック

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] cognac ) フランス西部コニャック産のブランデーの名称。同地方のぶどう酒を蒸留、精製してつくる。酒精度四〇~四三度。また、一般にブランデーの通称として用いられることもある。
    1. [初出の実例]「それから珈琲を一つ拵へてくれ、コニャックを些(ち)と余計に入れて」(出典:金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉後)

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改訂新版 世界大百科事典 「コニャック」の意味・わかりやすい解説

コニャック
cognac

フランス産ブランデーの一種。ブランデーの同義語として使われることが多いが,本来はフランス南西部のコニャック市を中心とするシャラント県シャラント・マリティーム県にまたがる地域内で,一定の規格のもとに造られたブランデーのみに与えられる呼称である。また,この地方の中心部にあるグランド・シャンパーニュ,プチト・シャンパーニュ両地区産のものだけをブレンドした製品は,フィーヌ・シャンパーニュと表示され,最高級品とされる。もともとこの地方のブドウ酒はアルコール分が低く,酸分の多い安物であった。たまたま1630年がブドウの豊作ですっかりブドウ酒をもてあました結果,アルザス地方でやっていたブドウ酒を焼く(蒸留)ことを見習って蒸留を始めたところ,思いもかけずすばらしい酒ができたという。これがコニャックの起源で,以来ルイ14世,さらにはナポレオン家代々の愛顧を得て,不動の名声を確立した。コニャックの原料ブドウにはサンテミリヨン,コロンバールなど酸度が高く糖分の少ない品種が使われる。これらの搾汁のみを発酵させてアルコール分7%くらいの白ブドウ酒にし,シャラント型と呼ぶポットスチルで2~3回蒸留,アルコール分70%くらいの蒸留液をとる。これをリムーザン地方産のオーク材のたるに詰めて最低3年の熟成を行うが,貯蔵中にたる材から種々の成分の溶出分解などが起こり,無色の酒はしだいにこはく色を帯びるとともに,独特の芳香と味をもつようになる。熟成年数の多いほど美味になり,価格も高くなるが,製品は年数のちがうものをブレンドし,水を加えてアルコール分40~43%として瓶詰する。コニャックのラベルにはふつう熟成度の表示がある。これはメーカーの決める等級で統一された規格ではないが,だいたい三つ星で3年,VSOP(very superior old pale)で8年,Napoléonで12~20年,Extraで30年以上と思われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コニャック」の意味・わかりやすい解説

コニャック(ブランデー)
こにゃっく
cognac フランス語

フランスの西部、コニャック市を中心としたシャラント地方(シャラント県とシャラント・マリティーム県)のみでつくられるブランデー。1909年の政令によって原産地呼称令が定められたが、その後改定され、現在は地域を六つに区分してその区域内でつくられるブランデーは、コニャックの名称のほかに区域名を呼称してもよいとされている。このうちグランド・シャンパーニュ、プティト・シャンパーニュ産のものが良質で、この2地区の生産品に限りフィーヌ・シャンパーニュfine champagneと表示できる。フィーヌはフランス語で「上等」の意味である。

 原料のブドウは大部分がシャラント産のサンテミリオン種で、これから得られる酸味の多い白ワイン(アルコール分は約9%)を蒸留する。蒸留にはシャラント型ともいわれる特殊な単式蒸留機が使用されて、2回に分けて行われる。加熱方法は直火式で、まずアルコール分25%程度の粗留液をとり、これをふたたび蒸留してアルコール分60~70%にする。コニャックの貯蔵に使う樽(たる)はリムーザン産のカシ材で、樽中で長い間熟成させる。この間に新酒の粗さが消え、丸くなり、色も琥珀(こはく)色に変わっていく。最後にブレンドして風味を調製し、出荷する。

 コニャックとして市販されるものには製造年の表示はない。これは、異なった年数のものがブレンドされているからである。ただ商業上、各メーカーによっては熟成年数の目安として、マークや記号をつけて貯蔵年数の古さを表示している。コニャックの古さを示す記号と貯蔵年数の関係は、三つ星が3~5年、VSOPは10~20年、ナポレオンは30~40年、エキストラは40~50年といわれている。ただしここで注意すべきことは、この年数はブレンドされたブランデー原酒のうち、もっとも古いブランデーの年数を表しており、酒の古さのだいたいの目安にすぎない。なお法律的には、VD、VSOPは最低4年以上、ナポレオン、エキストラは最低5年以上となっている。

[原 昌道]


コニャック(フランス)
こにゃっく
Cognac

フランス西部、シャラント県の町。シャラント川に臨む。人口1万9534(1999)。ワインを蒸留したブランデーの一種コニャックの産地として有名で、関連産業であるコルク加工、瓶・樽(たる)製造などの工業もある。16世紀以来、新教徒の中心地の一つであったが、1685年の「ナントの勅令」廃止により衰退する。しかしフランス革命以後コニャック酒生産の発達とともに繁栄を取り戻した。フランソア1世の生誕地。

[青木伸好]

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百科事典マイペディア 「コニャック」の意味・わかりやすい解説

コニャック

フランス産高級ブランデー。高級ブランデーの代名詞となっているが,正確には南仏シャラント県のコニャック市周辺の地域で造られるブランデーをいう。有名な銘柄品はエネシー,クルボアジエ,マルテルなど。カシだるで長期間熟成される。熟成期間15〜40年のものが風味がよいとされている。
→関連項目アルマニャック

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コニャック」の意味・わかりやすい解説

コニャック
Cognac

フランス西部,シャラント県西部の町。アキテーヌ盆地のシャラント川左岸にのぞむブドウ栽培地の中心で,コニャックと呼ばれるブランデーの産地として世界的に有名。マーテル,ヘネシー,オタールなどの会社の酒倉があり,樽,栓,瓶の製造なども盛ん。ユグノー戦争 (1562~98) ではプロテスタントの拠点となり,ナントの勅令廃止により一時衰退したが,1787年ブランデー製法発見以来再び繁栄。要塞門跡 (13世紀) ,バロア家の旧城址,空軍航空学校などがある。人口2万 247 (1982) 。

コニャック
cognac

フランスのコニャック周辺で造られるブランデー。ヘネシー,マーテル,クルボアジエなど多くの会社があり,いずれもその地方の農家や小醸造家の製品を集め,ブレンド,貯蔵して出す。

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飲み物がわかる辞典 「コニャック」の解説

コニャック【cognac(フランス)】


フランス南西部のコニャック地方でつくられるブランデー。「シャラント式蒸留機」(シャラントはコニャック地方を流れる川や、コニャック市のある県の名)と呼ばれる独特の形状の単式蒸留機で2回蒸留する伝統的な製法が採用されている。代表的な高級ブランデーとして知られ、芳醇な香りとまろやかで華やかな風味をもつ。

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栄養・生化学辞典 「コニャック」の解説

コニャック

 フランス北西部のコニャック地方で作られるブランデーで,特定のブドウの品種から作られポットスチルで蒸留したものとされる.

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世界大百科事典(旧版)内のコニャックの言及

【蒸留酒】より

…すなわち,アレクサンドリア時代のアランビックは,細口,首長の円底フラスコに,下向きのくちばしをつけた帽子形の頭部(アランビック)を,空冷用としてかぶせたものであった。これを改良して胴太の蒸留缶にアランビックを連結固定したものがコニャックで使われているシャラント型で(図),この型式の蒸留機を一般に単式蒸留機またはポットスチルと呼んでいる。東洋へ伝えられたアランビックは,金属製の釜(かま)やなべと木製の甑(こしき),竹管などを使って組み立てられ,14世紀以降東洋各地に蒸留酒を生んだ。…

※「コニャック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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