コマーシャル(読み)こまーしゃる(英語表記)commercial

翻訳|commercial

デジタル大辞泉 「コマーシャル」の意味・読み・例文・類語

コマーシャル(commercial)

民間放送などで、番組前後途中に行う広告コマーシャルメッセージCM
他の語に付いて、商業上の、宣伝のための、の意を表す。
[類語]広告宣伝PRピーアールアドバタイジングCMシーエムプロパガンダ触れ込みアナウンス周知コピー

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精選版 日本国語大辞典 「コマーシャル」の意味・読み・例文・類語

コマーシャル

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] commercial )
  2. ( 形動 ) 商業、通商に関すること。また、商業を主眼としたさま。〔外来語辞典(1914)〕
  3. ( 「コマーシャルメッセージ」の略 ) 商業放送ラジオテレビの宣伝・広告放送。CM。
    1. [初出の実例]「ヘンなコムマーシャルが出ないからとNHKにしたら」(出典:古川ロッパ日記‐昭和三〇年(1955)七月一七日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コマーシャル」の意味・わかりやすい解説

コマーシャル
こまーしゃる
commercial

民間放送であるラジオおよびテレビで行う商業的表示(広告)のすべてをいう。コマーシャル・メッセージcommercial messageの略で単にCMともいう。広告主が消費者へ訴求したい内容、たとえば企業名や商品名ないしはサービス、その特徴や価格、販売場所、スローガンなどが提示される。ラジオではアナウンスやナレーション、音楽などで構成され、テレビの場合は、そのほかに映像や文字などが加わる。なお、民間放送の草創期には、コマーシャル・メッセージは「商業文」と邦訳され、宣伝広告文一般をさしていた。が、民放が発達するにつれ、ラジオおよびテレビによる放送広告の代名詞として、コマーシャルということばは広く使われるようになった。日本初のラジオコマーシャルは、1951年(昭和26)9月1日午前6時30分に民放ラジオ放送第一号として産声を上げた中部日本放送が、同日7時に流した時報「精工舎の時計がただいま7時をお知らせしました」である。また、テレビコマーシャルは、1953年8月28日に日本初の民放テレビ放送として本放送を開始した日本テレビ放送網が、同日にスポットコマーシャルとして流した「セイコー舎の時計が正午をお知らせします」が第一号である。その際フィルムが裏返しだったため、3秒で中止したといわれていたが、後に当時の放送関係者の証言で「音がまったく出ず、音なしの状態で30秒間放送された」と訂正されている。

[伊藤誠二]

種類

コマーシャルは、その制作面から、次の5種類に分けることができる。

(1)生(なま)コマーシャル スタジオ放送中または中継放送中、テレビカメラを通してそのまま放送されるCMで、生CMあるいは生コマとも略称される。

(2)VTR・CM ビデオテープに収録されたCMをいう。生CMに比べ、効果的な演出や編集技術を駆使できる。また、コンピュータ・グラフィクス(CG)などによる制作技術の進歩もあって、かつてのコマーシャル・フィルムにかわって、CMの主流となっている。

(3)コマーシャル・フィルム 映像と音声を編集し、フィルムで一つのパッケージにしたCMで、CFと略称されることが多い。

(4)カードCM テロップ・カードにつくって放送するCM。

(5)スライドCM スライドにつくったCM。

 また、コマーシャルは、放送形態面から、「その種類をプログラム・コマーシャル、スポットコマーシャル、パーティシペーシング・コマーシャルおよび案内コマーシャルとする」と日本民間放送連盟の放送基準は規定しているが、実際の放送では前二者が中心となる。プログラム・コマーシャルは、番組提供スポンサーが番組の提供時間内に挿入するコマーシャルで、番組CMともよばれる。その許容放送時間量は、社団法人日本民間放送連盟(略称は民放連)の自主規制で規定されており、テレビの場合、5分以内の番組は1分、10分番組は2分、20分番組は2分30秒、30分以上の番組は番組放送時間の10%、となっている。ラジオの場合は、5分番組で1分、10分番組で2分、15分番組で2分30秒、20分番組で2分40秒、25分番組で2分50秒、30分以上の番組は番組の長さの10%、となっている。番組CMは、通常番組開始アナウンス直後の前CM、中間の中CM、終了アナウンス直前の後CMに分かれている。CMの長さは15秒が標準で、30秒以上のものは一般に長尺(ちょうじゃく)CMとよばれる。また、番組開始アナウンス直前に入れるものをカウキャッチャーcowcatcher、番組終了アナウンスのあとにつけるCMをヒッチハイクhitchhikeといい、いずれもスポット的効果をねらって挿入されるCMである。

 もう一つは、スポット・コマーシャルである。番組に関係なく、番組と番組との間(ステーション・ブレークstation break、略してステブレという)に挿入されるコマーシャルで、スポットCMあるいは単にスポットともよばれる。ステーションブレークは、テレビの場合通常1分間で、5秒、10秒、15秒、30秒、60秒のCMが収容されるが、そのうち15秒CMがもっともよく使われる。ラジオの場合のステブレは40~60秒間で、20秒スポットが比較的多い。なお、番組提供と銘打たずに番組内のCM枠のみを買うパーティシペーティング・コマーシャルparticipating commercialは、スポットCMと同じものと解することができる。案内コマーシャルは、一般に案内またはガイドなどの名称でよばれ、ステーション・ブレーク以外で局が編成する時間枠に集中して放送するコマーシャルをいう。

 テレビメディアの広告計画をするにあたって、広告主は、それぞれの広告目標によって、番組CMとスポットCMを効率的に使い分けている。たとえば、新商品発売キャンペーンで商品知名度を上げようとするときはスポットCMを、消費者に対して特定のイメージを持続的に訴求しようとするときは、番組を長期にわたって提供している。このように、番組CMおよびスポットCMには、それぞれ特性がある。とりわけスポットCMは、地域、放送局、時間帯、期間などの選択の自由性があるだけではなく、訴求の迅速性やそのインパクトの大きさから、購買へ結び付ける力が強い、とされている。そのため、番組を提供する広告主は広範囲に及ぶが、スポットCMの広告主は、購買と直結しやすい食品、飲料、化粧品、洗剤、薬品など消費財に偏在している。

 また、スポットCMを実施する場合、対象となる視聴者(ターゲット・オーディエンス)の1週間のライフスタイルに合わせて、彼らにもっとも効率的に訴求していく露出パターンが考慮される。そのパターンには以下の七つの基本的な型がある。

(1)逆L型 相対的に若い会社員を対象とする型で、このタイプの層が七つの基本系のなかでもっとも多く、平日の夜から深夜、および土・日曜日の全日に投入する。

(2)全日型 専業主婦を主に対象とする型で、平日および土・日曜日のほぼ全日に投入する。

(3)ヨの字型 自営業者等を主に対象とする型で、平日の朝、昼、夜から深夜および土・日曜日の全日に多く投入する。

(4)コの字型 相対的に経済観念が高く、規則正しい生活を営み、比較的年齢層が高い勤労者層を対象とする型で、2番目に多いタイプ。平日の朝、夕方から深夜および土曜日の全日に多く投入する。

(5)逆F型 有職の若年層等を対象とする型で、平日の深夜を重点に、平日の昼と夕方以降および土・日曜日に投入する。

(6)深夜型 18~20歳代の若者や学生等を対象とする型で、平日と土・日曜日を通して深夜に集中的に投入する。

(7)全日昼型 リタイアした高年齢者層等を主に対象とする型で、平日と土・日曜日の全日に投入し、とくに午後の投入が多い。

[伊藤誠二]

自主規制

ところで、日本で民間放送が発足する初期のころ、民放関係者は、日本人の放送コマーシャルへの拒否反応を、真剣に恐れていた。長い間のNHKラジオのみの聴取習慣や日本人の商人蔑視(べっし)意識から、番組の途中や番組と番組の間に「物売り」の声を挿入することへの反感が予想されたからである。商業放送という呼称を避けて「民間放送」という呼び方を選んだことや、民放ラジオが開局した1951年(昭和26)に初めて決められた日本民間放送連盟の「放送基準」のなかに「コマーシャルは、短いほどよい」という一節があることなどに、それは示されている。民放連放送基準は、当時、番組提供の場合のプログラム・コマーシャルの長さについて、「5分番組では1分以内」、「30分番組では3分以内」などCM量の自主規制を設けていた。

 だが、番組CMの規制外にあったスポットCMの量は、時代とともに増加している。1960年代後半以降その勢いはとりわけ顕著で、1990年代に入ると、スポットCMの扱い額はテレビ局の年間総扱い額の半分を各年とも超え、民放テレビ局経営の根幹を担うに至っている。この状況は当分の間続き、経営の在り方が変化しない限り不変だと思われる。同時に、コマーシャルは国民生活のなかにすっかり定着し、生活情報として現代生活になくてはならないものとなり、時代の気分を豊かにする存在にすらなっている。反面、その社会的影響についての論議も盛んになされ、CM過剰論の声も聞かれた。そのため、民放連は1975年に、テレビCMの総量をスポットCMやガイドを含め、「週間放送総時間の18%以内」とする放送基準の改正を行っており、2011年(平成23)時点でもこの基準は遵守(じゅんしゅ)されている。21世紀に入って、放送界の多チャンネル化、デジタル化はさらに進んでいるが、コマーシャルが日常生活に不可欠のものであることに変わりはないといえる。

[伊藤誠二]

『広告批評編『広告大入門』(1992・マドラ出版)』『全日本CM放送連盟編『ACC CM年鑑』各年版(宣伝会議)』『電通出版事業部編・刊『電通広告年鑑』各年版』『東京コピーライターズクラブ編『コピー年鑑』各年版(宣伝会議)』『日本民間放送連盟編『日本民間放送年鑑』各年版(コーケン出版)』『日本広告業協会教育セミナー委員会編『広告ビジネス入門』各年版(日本広告業協会)』

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世界大百科事典(旧版)内のコマーシャルの言及

【CF】より

…本来は映画用フィルムで製作されたテレビのCM(commercial message)のことであったが,現在ではビデオテープにより製作されたものも含めてテレビCMそのものをさすようになった。CFはcommercial filmの略で,日本での造語であり,日本では単にコマーシャルといわれることが多い。テレビCMはアメリカで生まれ,初期には,スタジオや中継現場からテレビカメラを通して放送された。…

※「コマーシャル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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