コムラサキ(英語表記)Apatura substituta

改訂新版 世界大百科事典 「コムラサキ」の意味・わかりやすい解説

コムラサキ
Apatura substituta

鱗翅目タテハチョウ科の昆虫。南西諸島を除く日本全国に分布する褐色,中型のタテハチョウで,開張は6~7.5cm。雄の翅の表面には,見る角度によって紫色の構造色が浮かび上がる。和名は小型の紫色のチョウの意。近縁のオオムラサキと同様,雌は大型で翅は横長,紫色に光らない。成虫は渓谷沿いの山道のほか,公園,川沿いの低地などのヤナギポプラの多いところに見られる。樹液を好むが,雄は水たまりや汚物にも集まる。北海道の大部分と1500m以上の山地では年1回7月に,暖地では5月中旬と7月の2回発生するが,ときに9~10月に秋型が出現する。おもに3齢幼虫で越冬する。南九州,東海,北陸,北関東には翅の表面が黒く白い斑紋をもつ,一見イチモンジチョウ類を思わせる型が分布し,クロコムラサキA.s.form mikuniと呼ばれる。その裏面はふつうのコムラサキと同様である。この黒色型は,褐色型のふつうのコムラサキに対し,劣性メンデル遺伝をすることが1962年に確認された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コムラサキ」の意味・わかりやすい解説

コムラサキ(落葉低木)
こむらさき / 小紫
[学] Callicarpa dichotoma (Lour.) K.Koch

クマツヅラ科(APG分類:シソ科)の落葉低木で高さ1~1.5メートル。葉は対生し、倒卵状楕円(だえん)形、長さ3~6センチメートルで、両端がとがり、縁(へり)の3分の1以上に鋸歯(きょし)がある。6~7月、葉の付け根からすこし離れて集散花序をつけ、淡紫色の花を開く。果実は小球形、径3~4ミリメートルで10~11月に紫色に熟す。原野や山地の湿地に生え、本州から沖縄県、朝鮮半島、中国に分布する。庭木、挿し花によく用いられる。名は、ムラサキシキブに比べて葉など全体が小さいことによる。また、小式部内侍(こしきぶのないし)に例えられ、コシキブともよばれる。類似のトサムラサキC. shikokiana Makinoは葉が小形で先が尾状に長くとがり、果実は径約2ミリメートルで小さい。

[小林義雄 2021年9月17日]



コムラサキ(チョウ)
こむらさき / 小紫蝶
[学] Apatura metis

昆虫綱鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に属するチョウ。北海道より九州まで広く分布。種子島(たねがしま)、屋久島(やくしま)およびそれ以南の南西諸島には分布しない。外国では朝鮮半島、中国、ヨーロッパ南東部に産する。日本のコムラサキは従来一般にヨーロッパに産するアパツラ・イリアApatura iliaの1亜種とされてきたが、近年の研究でそれとは別種A. metisの1亜種とする説が有力である。はねの開張は70ミリメートル内外。はねの地色は茶褐色で橙黄(とうこう)色のバンドがあり、雄の表面は見る方向によって紫色に輝く光沢がある。はねの地色が黒褐色で白色のバンドをもつ遺伝型があり、これをクロコムラサキとよぶ場合も多い。寒冷地では年1回の発生(7~8月)、暖地では多化性で5~10月にわたって出現する。樹液、腐果に飛来するが花にはこない。幼虫の食草は各種のヤナギ、ポプラの類(ヤナギ科植物)。越冬態は幼虫である。

[白水 隆]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コムラサキ」の意味・わかりやすい解説

コムラサキ(小紫)
コムラサキ
Callicarpa dichotoma

別名コシキブ。クマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木。日本,朝鮮半島,中国などに分布する。樹高は1~2m。葉は長楕円形で,対生する。葉腋から1~4mmほど上に集散花序をつける。花は藤色で,果実は鮮かな紫紅色。白実の変種も流通する。長い枝は,しだれるように湾曲する。一般にムラサキシキブの名で流通するが,ムラサキシキブは近縁の別種。ムラサキシキブは葉腋に花序をつけ,コムラサキのように枝がしならない。日当りと水分に富む土壌を好む。乾燥に弱いため,鉢植えの場合は水切れに注意。特に病虫害の心配はない。放任してもよく育つが,丈を高くしたくない場合は冬期に枝を切戻す。

コムラサキ
Apatura ilia

鱗翅目タテハチョウ科のチョウ。前翅長 36mm内外。翅表は暗褐色地に橙色の斑紋があるが,雌の地色は淡く,黄褐色である。雄の翅表は,外縁部を除き,見る角度によって美しい紫色に光るが,雌ではこの紫色光沢を欠く。また,全体黒色で翅の中央にある橙色帯が白色になった一見別種のようにみえる型が本州中部と九州中南部にのみに産するが,これを特にクロコムラサキと呼ぶ。成虫は年2~3回出現する。幼虫で越冬する。幼虫はヤナギ類の葉を食べる。北海道,本州,四国,九州,朝鮮,中国北部,シベリア,ヨーロッパに分布する。原亜種はヨーロッパ産で,日本に産するものは亜種 A. i. substitutaという。

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「コムラサキ」の解説

コムラサキ
学名:Apatura metis

種名 / コムラサキ
目名科名 / チョウ目|タテハチョウ科(タテハチョウ類)
解説 / かっ色型と黒色型(クロコムラサキ)の2つの型があります。
体の大きさ / (前ばねの長さ)30~40mm
分布 / 北海道~九州
成虫出現期 / 6月と7~8月
幼虫の食べ物 / バッコヤナギ、シダレヤナギなど

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百科事典マイペディア 「コムラサキ」の意味・わかりやすい解説

コムラサキ

鱗翅(りんし)目タテハチョウ科の1種。開張60mm内外,黒褐色地に黄褐色の紋があり,雄は美しい紫色に光る。日本全土,朝鮮半島,シベリア〜ヨーロッパに分布。幼虫はヤナギ類の葉を食べ,幼虫で越冬。成虫は年2〜3回発生し,樹液を好む。

コムラサキ

ムラサキシキブ

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世界大百科事典(旧版)内のコムラサキの言及

【ムラサキシキブ】より

…日本,朝鮮,中国に分布する。 コムラサキC.dichotoma (Lour.) K.Koch(英名Chinese beauty‐berry)はやや葉が小型で下半部に鋸歯がなく,花序は葉腋のやや上につく。日本,朝鮮,中国の湿地付近に自生し,ときに庭に植えられる。…

※「コムラサキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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