オオムラサキ(ツツジ科)
おおむらさき / 大紫
[学] Rhododendron pulchrum Sweet 'Oomurasaki'
ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑低木。よく枝を分け、枝に粗い毛がある。葉は互生し、狭い長楕円(ちょうだえん)形、長さ3~6センチメートルで両端がとがり、両面に褐色の寝た毛がある。夏葉は広倒披針(とうひしん)形で春葉より小さい。4月下旬から5月、枝先に漏斗(ろうと)状の大きい紫紅色花が2、3個開く。花冠は径6~7センチメートルで5中裂し、雄しべは10本あり、萼片(がくへん)は披針形、長さ1~1.5センチメートルでとくに粘らない。ケラマツツジとリュウキュウツツジなどの交雑種といわれている園芸変種である。関東地方以西で広く庭木、公園樹、街路樹に植える。園芸変種のアケボノ(曙)'Akebono'はオオムラサキの枝がわりによってできたもので、花は淡紅色、上面に濃紫紅色の斑点(はんてん)があり、縁(へり)は白くぼかしになっている。
[小林義雄 2021年4月16日]
オオムラサキ(チョウ)
おおむらさき / 大紫蝶
great purple emperor
[学] Sasakia charonda
昆虫綱鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に属するチョウ。日本の国蝶(こくちょう)としてよく知られており、75円の通常切手の図案にも使用された。日本では北海道から九州にわたって分布するが、北海道では南西部の札幌市、小樽(おたる)市、夕張(ゆうばり)市とその近辺に産地は限定される。東京付近では武蔵野(むさしの)の雑木林にまれではなかったが、現在ではほとんど絶滅した。日本南西部の暖地では山地帯のみに産し、一般にその数は少ない。日本における分布の南限は宮崎県小林(こばやし)市、鹿児島県伊佐(いさ)市。外国では朝鮮半島、中国に分布し、アジア東部の特産種。はねの開張90ミリメートル内外、一般に北方産、山地産は小形で、南方や暖地に向かうにつれて大形となる。雄のはねの表面は紫色に輝くが、雌にはこの紫色部がない。後ろばね裏面の地色は黄色のものと白色のものがあるが、白色のものは関西地方以南に多い。年1回の発生で、暖地では普通6月中・下旬から、寒冷地では7月中・下旬から発生する。ときに10月に第2化を生ずることがあるが、これは正常の経過ではない。幼虫の食草はエノキ、エゾエノキで、エノキ属以外の植物は食草とはならない。越冬態は幼虫で、食草(食樹)の根際の落ち葉中に潜んで冬を越す。
[白水 隆]
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オオムラサキ
Sasakia charonda
鱗翅目タテハチョウ科の昆虫で,同科の日本産のものでは最大種で,世界でも有数の大型タテハである。開張は雄が9.5cm前後,雌は11.5cm内外。東アジアの特産で,日本では本州を中心に北海道南西部,四国と九州中部まで分布する。和名は大型の紫色のチョウの意味である。翅の表面は濃褐色,中心部に白色紋が数個,外周部に多くの黄色紋,後翅肛角には紅色の1紋がある。雄の前翅の約半分,後翅の約1/7が鱗粉の構造により強く青紫に光る。雌にも鈍い赤紫色の光沢がある。大きさと黄色紋,後翅裏面の色調は地方差が大きく,北海道,東北産は小型で黄色みが強く,西日本産は大型で白みが強い。朝鮮半島,中国,台湾産のものでは後翅裏面に斑紋の輪郭が濃く現れる。九州産のものにもわずかながらこの傾向が認められる。年1回の発生で,6月下旬から8月中旬まで成虫が見られる。樹液に集まるが,腐った果物やムクゲの発酵した花にくることもある。幼虫はエノキ,エゾエノキの葉を食べ,寒地では3・4齢,暖地では4・5齢の幼虫で越冬する。1957年には日本の国蝶に選ばれたほか,78年には環境庁の自然指標昆虫10種の一つに指定された。
執筆者:高倉 忠博
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オオムラサキ
Sasakia charonda; great purple emperor
鱗翅目タテハチョウ科のチョウ。日本産タテハチョウ科の最大種で前翅長 40~50mm。翅表は褐色を帯びた黒色地に黄白色の斑紋が散在するが,雄では基半部が美しい紫色で,その部分の斑紋は白色である。雌は雄よりやや大きく,紫色部を欠く。裏面は前翅端と後翅全面が黄色。幼虫はエノキの葉を食べ,3齢で越冬する。成虫は6~8月に発生し,樹液を好み,樹上の高所を飛ぶ。日本全土,台湾,朝鮮,中国に分布する。 1957年日本昆虫学会によって日本の国チョウに指定。
オオムラサキ(大紫)
オオムラサキ
Rhododendron pulchrum; great purple emperor
ツツジ科の常緑低木で,かなり古くから庭園に植えられた。野生のものはなく,たぶんリュウキュウツツジとケラマツツジとの雑種起源といわれている。花は5月頃咲き,紅紫色で花冠の直径は6~7cmである。
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オオムラサキ
学名:Sasakia charonda
種名 / オオムラサキ
目名科名 / チョウ目|タテハチョウ科(タテハチョウ類)
解説 / 滑空しながら飛び、クヌギやヤナギの樹液に集まります。西日本では、はねのうらが白い個体が多く見られます。日本の国蝶に指定されています。
体の大きさ / (前ばねの長さ)45~60mm
分布 / 北海道南西部~九州
成虫出現期 / 6~8月
幼虫の食べ物 / エノキ、エゾエノキなど
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「オオムラサキ」の意味・わかりやすい解説
オオムラサキ
鱗翅(りんし)目タテハチョウ科の1種。日本産では最大種。開張90mm内外,雄は翅が美しい紫色に輝く。日本全土,朝鮮,中国に分布。幼虫はエノキにつき,成虫は6〜7月に現れ,樹液によくくる。1957年に日本昆虫学会によって国蝶(ちょう)に選ばれた。準絶滅危惧(環境省第4次レッドリスト)。
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世界大百科事典(旧版)内のオオムラサキの言及
【ツツジ(躑躅)】より
…花色は紅,紫,桃,白と多彩であり,早く育つので公園や街路植栽用によく利用されている。耐寒性が弱いので利用は西日本が中心になるが,オオムラサキのような耐寒種もこの仲間に入る。 リュウキュウツツジR.mucronatum G.Donは日本に野生のあるキシツツジとモチツツジの間の雑種性のツツジとみられる。…
※「オオムラサキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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