翻訳|cork
樹皮からとりだされる軽くて弾力のある物質。瓶の栓などに使われる。ヨーロッパ南部,北アフリカに生えるコルクガシQuercus suberなどがおもな資源植物である。20年生以上の樹木からはぎとったものを砕き,必要なときには接着,成型して使う。化学薬品や有機溶剤にほとんど侵されず,断熱性,電気的絶縁性,吸音性などにもすぐれている。比重は0.13~0.16。上記の性質の因となる化学成分はスベリンsuberinと総称されている。スベリンはヒドロキシ脂肪酸を中心成分とする高分子化合物で,フェノールも含む。スベリンが細胞壁の内側にへばりついているため,それら細胞の集合体であるコルクは上記の性質を示す。保冷庫の断熱材,卓球のラケット,靴底など用途は広い。日本の樹木ではとくにアベマキQ.variabilisが発達したコルク組織をもつ。日本では使用量のすべてをポルトガルなどから輸入している。
執筆者:善本 知孝
植物が茎や根で肥大成長するとき,コルク形成層cork cambiumのはたらきで作られる組織。コルク形成層は形成層に次いで普遍的な分裂組織で,外側に向けてコルク組織,内側に向けてコルク皮層cork cortexをつくる。コルク形成層ができるときには,その部分の細胞が液胞を失って細胞層がいっぱいに詰まり,やがて分裂組織となる。コルク組織を横断面でみると,四角形か六角形の細胞がびっしり規則正しく配列して細胞間隙(かんげき)がなくなっており,さらに細胞壁にスベリンが堆積して,水,空気を通しにくくしている。そのため,コルク組織の外側の組織は内側との連絡が断たれ,やがて枯死してはがれるが,これが樹皮である。コルク組織の内外の空気流通のために生じる通路が皮目である。コルク組織をつくる細胞の壁の肥厚の程度は種によって異なるが,細胞内に大量の空気を含み,組織は弾性に富む。1665年にR.フックがこの組織を顕微鏡でみて,生物のからだが〈細胞〉という単位でできていることをはじめて報告した。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
肥大成長をする植物の幹、枝、根のいちばん外側にある保護組織で、植物体が傷を受けた部分や葉の落ちた跡にも形成される。形成層から外側に細胞分裂してできた二次篩部(しぶ)は順次外側に押し出されてゆき、通道組織としての機能を失ってゆく。この部分にはふたたび細胞分裂の能力をもったコルク形成層が新たにできる。これは、その外方にコルク組織を、内方にコルク皮層を細胞分裂によって形成し、周皮となる。コルク組織の細胞は規則正しい配列を示し、原形質を欠いた中空の死細胞で、細胞壁はスベリンとよばれる脂肪酸の重合体の厚い層からなり、水や空気を通しにくい。また細胞壁にスベリンが堆積(たいせき)することをコルク化という。コルク組織がつくられると、それより外方にある二次篩部の組織は水分などの供給が受けられなくなり死んでゆく。
スペインや南ヨーロッパに分布するブナ科のコルクガシなどではこのコルク組織が多量に蓄積する性質があり、これは一般にコルクとよばれ利用される。コルクは断熱、防音、電気的絶縁性、弾力性、耐薬品性に優れ、軽く、さまざまなプラスチック製品が開発された現在でも多方面に利用される。日本産のものでは同じ属のアベマキもコルク層が厚くなるが、品質ははるかに劣る。また、生物の体が細胞からできていることを発見した17世紀、イギリスの科学者ロバート・フックが用いた材料がコルクで、彼は死んだ細胞を観察したことになる。
[鈴木三男]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
…耕地が少ないため,近年都市部や国外への人口流出が著しい。他方,南部は標高200m以下の平原が6割以上を占め,起伏の乏しい小麦の単作地帯やコルクガシの林が続く。完全な地中海式気候帯に属し,年間降水量は700mm以下と極端に少なく,気温が40℃を超える日もまれではない。…
…板状にはがれる樹皮を建築・構造物に利用したり,あるいは柔軟な樹皮をつめものにすることは,世界各地で行われている。さらに,木本性の植物の一部のものでは,樹皮のコルク形成層の発達により,厚いコルク質樹皮が作られるものがある。特に地中海沿岸のコルクガシが有名で,コルクは断熱性,耐薬品性にすぐれ,軽いため,各種の液体貯蔵瓶の口栓,断熱材,あるいは浮材(救命胴衣など)に多く用いられた。…
※「コルク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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