スペインおよびその植民地でみられた直任官吏の一つ。中世後期,スペインのカスティリャ王国は政治的・社会的混乱に陥り,都市自治体においては,寡頭支配層の党派的争いや,彼らと都市住民の対立が激化した。このような情況の中で王権は,都市自治への介入を強め,直任官吏を都市へ派遣した。この役人をコレヒドールと呼ぶ。彼らは自治体選出の裁判官と執行吏の役職を停止し,代わって自らが裁判官になる場合と補佐裁判官を置く場合があったが,いずれにしろ裁判権・警察権を掌握し,市会の主宰者として自治体統治機構の頂点に立った。当初その任期は1年で,派遣対象都市も限られていたが,王権の伸張とともに漸次普及していき,15世紀末にはカスティリャ王国の全都市に対して2年交代制で継続的に派遣されることになった。この制度は,近世カスティリャ王権の地方統治のかなめとなり,さらに18世紀にはアラゴンの諸王国にも適用された。その廃止は,1835年である。
執筆者:立石 博高 スペイン領植民地では,コレヒミエントという地方管轄区を統べる国王任命の官吏をいう。任期は原則として3年。1530年の勅令により,原住民インディオの保護とエンコメンデロ(エンコミエンダ)の勢力台頭防止を目的として,ヌエバ・エスパーニャ(現,メキシコ)に新設され,のち植民地一帯に設けられた。アウディエンシアに従属し,その任務は年に1度の管轄区視察,エンコメンデロの義務遂行の監視,インディオ間もしくはインディオとエンコメンデロ間の民事・刑事訴訟を管轄,インディオからの租税の徴収,インディオの改宗の促進,街道や宿駅の維持など多岐にわたった。エンコメンデロ,土地および鉱山所有者,植民地官吏の親族はコレヒドールにはなれず,コレヒドールは商行為や,インディオの私的利用を禁じられた。しかし,実際にはしばしばエンコメンデロと共謀してインディオを虐待した。18世紀後半,インテンデンシアが導入された結果,コレヒドールの官職は消滅した。
執筆者:染田 秀藤
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…その際,アウディエンシアの長官は統治者として行動したが,一般に軍事的権威は副王に留保されていた。一方,地方行政は普通コレヒドールと呼ばれる王室官吏に任され,彼らはそれぞれの領域内で最高の司法および行政権を行使し,カビルドでは国王の利害を代表した。コレヒドールにはスペイン人の町を統轄するものと王室への貢納義務を負う先住民インディオの村や町を治めるものの2種類があり,後者はコレヒドール・デ・ロス・インディオスと呼ばれ,任期は3年で,白人による不正行為からインディオを保護することを主要な任務とした。…
…(3)商業レパルティミエント。地方官コレヒドールが職権を濫用して,管轄地域の原住民に物財を強制的に売りつける慣行をいう。いくつかの地域では,地方官がやがて商人の代理人となり,資金や原料を強制的に原住民に貸し付けて特定商品を生産させ,これを買い取るようになる。…
※「コレヒドール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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