避妊や性病予防の目的で用いられる薄いゴム製の袋で、性交時陰茎にかぶせて使用する。わが国には優れた製品が出回っており、輸出もされている。厚さは0.02ミリメートルと薄くなっていて、先端より根元を細くしたり、早漏防止用に先端を厚くしたものや、滑り止めにざらついた輪状部分をつくったもの、着色やゼリー(避妊用ではない)付きのものなど、多種多様のものがある。使用時にはかならず挿入前につけること、先端の精液だめの空気を抜くこと、爪(つめ)などで傷つけないこと、また射精後も抜去するタイミングがたいせつで、精液が腟(ちつ)内に漏出しないように根元を抑えて速やかに抜去する。コンドームは避妊のほかにも、エイズやクラミジア尿道炎、トリコモナス腟炎やカンジダ腟炎などの性行為によって感染する性感染症(STD)の予防にも役だっている。
なお、コンドームは16~17世紀ごろから使われた記録があるといわれ、梅毒予防の目的だった。リネン製のものやフィッシュスキンとよばれる動物の盲腸や膀胱(ぼうこう)、魚のうきぶくろを利用したもので、ラテックスゴム製のものは19世紀になって現れ、スキンとかサックとよばれた。名称の由来は、17世紀なかばごろイギリス王室の侍医コントンContonによるとも、ラテン語のCondus(容器の意)によるともいわれている。日本へは明治の初めに持ち込まれ、国産のゴムコンドームは1909年(明治42)ごろから発売された。おもに軍隊を通じて普及し、性病予防の目的で軍需品扱いを受け、マッチ箱様のケースに2個入った通称「衛生マッチ」が休暇外出のたびに手渡された。おもに陸軍では「突撃一番」、海軍では「鉄かぶと」とよばれた。
[白井將文]
ラテックスゴム製の袋状の避妊器具。勃起した陰茎にかぶせ,射精された精液が腟内にはいるのを防ぐことで避妊する。日本で最も普及している避妊法で,製品も外国製より薄くじょうぶで優れている。16世紀ころにイタリアのG.ファロピオがリネンで陰茎を覆って梅毒を防ぐことを考案したとされ,17世紀にイギリスのコンドンCondomという医者がこれをチャールズ2世のために作ったことから,この名が出たといわれる。古くは羊の盲腸や魚のうきぶくろなどが用いられた。コンドームには,手軽に入手でき,使用法が簡単で,原理もわかりやすい,感染を防ぐのに役立つ,などの長所がある一方,性交のたびに使用せねばならず,ムードを阻害する,性感に影響するため,男性はあまり使用を好まない,などの短所もある。
使用にあたっては,陰茎が十分に勃起してから,つめで傷つけないように注意して静かに根元までかぶせる。その際先端の精液だめの空気を抜いておく。射精後も運動を続けたり,そのままにしておくと,萎縮した陰茎とコンドームの間から精液が漏れて腟内にはいり妊娠することがあるから,早めに手をそえて抜去するなどの注意が必要である。
→避妊
執筆者:我妻 尭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…さらに,19世紀から20世紀にかけては,先進諸国は帝国主義時代を迎え,各国で〈富国強兵〉策をとったため,出産が奨励され,やはり避妊は禁止された。日本でも同様で,コンドームのみが性病予防器具として販売された。避妊法の指導普及が各国で許可されるようになったのは,第2次大戦以後のことである。…
※「コンドーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新