改訂新版 世界大百科事典 の解説
コンプリヘンシブ・スクール
comprehensive school
イギリスの総合制中等学校。20世紀初頭以来世界的におこった,すべての国民に開かれた単線型学校体系を求める運動の延長上に位置づけられる。〈すべての者に中等教育を〉という労働党が掲げた目標は,1944年教育法(バトラー法)によりモダンmoden,テクニカルtechnical,グラマーgrammarという3種の学校のどれかに,だれでも11歳の年齢段階での試験(イレブン・プラスeleven-plus)でふりわけられて進学できる制度とともに一応実現した。しかし大学進学に有利なグラマー・スクールへ志望が集中し,しかも11歳で選別することの不合理と不公正が明らかになったため,3種の学校の教育課程を一つの学校に集め,同一地域のすべての生徒を入学させ,在学中に時間をかけて生徒の選別をすることになった。コンプリヘンシブ・スクールは,労働党政権下で1960年代に各地で増加したが,保守党政権下の財政的圧迫もあり,また特権的中等学校であるパブリック・スクールが別個に存在するため,教育の機会均等の理念を制度的に保障するこの種の学校は停滞している。
執筆者:宮沢 康人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報