コートールズ(英語表記)Courtaulds PLC

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

かつてのイギリス最大の合成繊維メーカー,化学メーカー。1816年イギリスの商人サミュエル・コートールドが,絹撚糸,絹織物の生産を開始したのが始まりで,1891年サミュエル・コートールズ・アンド・カンパニー設立,1904年ビスコース法の特許購入により人絹(レーヨン)の製造に着手,1913年社名をコートールズに変更,約半世紀の間に一大レーヨン王国を築いた。この間アメリカ合衆国に人絹工場ビスコース・カンパニーを設立したのをはじめ,ヨーロッパ各国にも系列会社を設立して市場を拡大した。第2次世界大戦後は合成繊維の分野に進出,国内市場ではステープルファイバースフ),人絹,アセテート繊維ナイロン繊維アクリル繊維の分野で,一時は 80~95%の市場占有率を誇った。1990年に伝統の織物事業を分離ポリマー,表面技術中心に移行。以後は建築資材から玩具までを扱う合成樹脂部門,包装材,パルプ塗料,化学品などの分野にも進出,また繊維機械の製造から工場建設などのエンジニアリング部門を設立した。グループの製造工場は 41ヵ国にも及んだ。1998年オランダの化学会社アクゾノーベルに買収された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

イギリスの大手化学繊維・化学メーカーであったが、1998年、オランダの大手化学グループ、アクゾノーベルに買収された。
 サミュエル・コートールドSamuel Courtauld(1793―1881)が1816年、絹のクレープ織製造のために創業したのが始まりである。1828年には合資会社に改組し、19世紀末には世界最大のクレープ織製造会社に発展した。1891年株式会社サミュエル・コートールズSamuel Courtaulds & Co.に組織を変更し、1904年ビスコース法による人絹糸製造にも進出、1913年から社名をコートールズCourtauls Ltd.に改称してその後の組織体制を固めた。
 第一次世界大戦後、激しい国際競争にさらされたが、1925年独自のステープルファイバー(短繊維)、フィブロを開発し、1934年から1936年にかけて大規模な生産を展開した。第二次世界大戦後、化学繊維部門にも業務を拡大し、アクリル繊維生産を独占的に行った。1957年ブリティッシュ・セラニーズ社を合併、さらにブリティッシュ・ナイロン・スピナーズ社をICI(イギリスの化学工業会社)とともに支配した。
 その後、コートールズは繊維部門に加えて塗料・密閉剤部門およびポリマー部門を三つの柱とした。繊維部門ではポリエステル長繊維事業を1989年に日本の東レに売却、1990年には繊維部門をまとめてコートールズ・テキスタイル社Courtaulds Textiles PLCとして分離、子会社化し、ほかの二つの部門へ重点を移した。分離したコートールズ・テキスタイルは1992年に開発した新素材テンセルTencel(紙パルプを原材料とする精製セルロース繊維)の成功など、レーヨン、アクリル、アセテートで世界的に大きなシェアを占めた。
 塗料・密閉剤部門では、アメリカに本拠を置くインターナショナル・ペイントInternational Paint Co.を傘下に収め、船舶用塗料をはじめ、建築物構造材皮膜などを生産した。ポリマー部門では食品・医薬品などのプラスチック包装や産業用フィルムが中心であった。
 1990年代後半になると、化学産業の競争激化で、経営が悪化した。1998年3月には部門別の分社化を含め、大規模なリストラクチャリングを計画したが、その結果が出る前の同年7月、オランダのアクゾノーベルによって買収された。買収前の1998年3月期におけるコートールズの売上高は19億5700万ポンド、海外の売上比率は86%、従業員数約1万7000人であった。部門別では塗料・密閉剤の47%、繊維の42%が大きく、ポリマーは11%であった。
 また、コートールズ・テキスタイルは、日本を含めたアジア系企業の進出や全体的な繊維価格の下落などの影響もあり、経営は悪化し、2000年にアメリカの多国籍企業、サラ・リーSara Lee Corporationに1億5000万ポンドで買収された。買収後もコートールズ・テキスタイルの名前は存続したが、採算性に優れなかったため、サラ・リーは香港(ホンコン)に拠点をもつ総合衣料メーカーのPDエンタープライズPD Enterprise Ltd.に売却をした。この時点で、コートールズ・テキスタイルの売上げは5億6000万ドル、従業員数5000人、うちイギリス国内1000人という規模であった。[湯沢 威・上川孝夫]

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