ゴミムシ(読み)ごみむし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴミムシ」の意味・わかりやすい解説

ゴミムシ
ごみむし / 芥虫
[学] Anisodactylus signatus

昆虫綱甲虫目ゴミムシ科に属する昆虫。日本各地に普通で、朝鮮半島、中国、シベリアヨーロッパに広く分布する。体長12ミリメートル内外。黒色で頭に1対の赤い点紋がある。長形で背面はやや平たく、光沢は鈍く、上ばねは点刻がなく細い条溝を備える。地表性で昼間は石の下や草の根際などに隠れ、おもに夜間活動し、小虫など捕食する。灯火にもよく飛んでくる。幼虫は地中で幼根や腐植質を食べるという。成虫で越冬する。

 ゴミムシ科Harpalidaeは、広義オサムシ科に含めることもあるが、甲虫のなかでも種類の多い一群で世界中に分布し、極北域にも産し、およそ2万以上の種が知られている。日本産だけでも900に達する種がある。オサムシ類とは、前脚脛節(けいせつ)の内側に強い入り込みがあり、中胸の後側板が中脚の基節に達しないことで区別でき、両科は5節の跗節(ふせつ)と糸状触角などの特徴で共通している。大部分の種類は地表にいてほかの虫を捕食し、一般に黒っぽく、多くの亜科に分けられるが、樹上や葉上にみられるものや、草地にいるものなどにはモリヒラタゴミムシ類Colpodes、ジュウジゴミムシ類Lebia、アオゴミムシ類Chlaeniusのように金属色や色彩の美しい種を含む類がある。生息範囲は干潮線(ウミミズギワゴミムシなど)から高山の頂上(オンタケチビゴミムシなど)までと広く、地中や洞穴中にすむメクラチビゴミムシ類Trechiniなど特殊環境に適応した一群を除くと、前記のように石や倒木の下、落ち葉中、草の根際などに隠れ、おもに夜間活動してほかの虫を捕食する種類が多い。これらにはミズギワゴミムシ属Bembidion、ナガゴミムシ属Pterostichus、ヒラタゴミムシ属Platynus、マルガタゴミムシ属Amara、ゴモクムシ属Harpalus、アオゴミムシ属Chlaenius、ヨツボシゴミムシ属Panagaeusのような各属に代表される多数の種類が含まれる。樹上や葉上、花上にはモリヒラタゴミムシ、ジュウジゴミムシの類のほかにアトキリゴミムシ類に属するものが多いが、セスジヒラタゴミムシAgonum daimioのように田畑の葉上でほかの虫や卵を食べる有益なものもある。枯れ木キノコにみられる種類は主としてアトキリゴミムシ類のもので、コキノコゴミムシ属Coptoderaやアトバゴミムシ属Catascopusなどのものがある。ゴミムシの幼虫は細形で活動的なものが多く、成虫と同じく肉食でほかの虫を捕食するが、地表の陰あるいは地中に隠れて夜間活動するので、ほとんど目につかない。なお、マルガタゴミムシ類の種には植物種子を食べる例が知られている。

[中根猛彦]


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改訂新版 世界大百科事典 「ゴミムシ」の意味・わかりやすい解説

ゴミムシ
Anisodactylus signatus

甲虫目ゴミムシ科の昆虫。からだは黒色で頭部には1対の赤い斑紋がある。上翅の条の間には点刻を欠く。体長約13mm。日本全土のほか,朝鮮半島,中国,シベリア,ヨーロッパなどにも分布する。平地から山地まで生息し,落葉,ごみの下,石の下などに見られ,しばしば灯火に飛来する。成虫で越冬し春から出現,4月下旬ごろから土中に産卵する。成虫は昆虫などを捕食するが雑草の種子を食べることも知られている。幼虫はおもに土中で生活し腐植物や根,昆虫などを食する。

 ゴミムシ科Harpalidaeは各種がground beetleと呼ばれるように地上で生活する種類が多い。またほとんどの種が肉食性であり,夜行性でもある。世界から2万種以上,日本からはおよそ1000種が知られている。ハムシの幼虫などを食べるジュウジアトキリゴミムシのように樹上で生活するもの,クロチビカワゴミムシのように樹皮下に生活するものもいる。また水辺にすむ種類も少なくない。チビゴミムシ類は体長が3~5mmで小さく,鍾乳洞の中にすみ,複眼やからだの色素が退化した種類が多い。複眼にかわってからだに長い感覚毛がある。また移動力が弱く,限られた洞窟にのみ生息する種類も少なくない。ゴミムシ科の幼虫は一般に胸脚がよく発達しており,腹部の末端に1対の細長い突起がある。やや細長い体形で活発に歩行する。形がハネカクシの幼虫に似るが,胸脚が6環節からなることで区別できる。脚の先につめを2本もつものが多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴミムシ」の意味・わかりやすい解説

ゴミムシ
Harpalidae

甲虫目ゴミムシ科の昆虫の総称。オサムシに近い甲虫で,体長はより小さいものが多い。地中にすむものもあるが,大部分は地表にすむ。体は黒っぽく,おおむね平たく,上からは細卵形に見える。触角は糸状。肢は長く,節は5節。前肢の脛節に触角を清掃するためのはっきりしたへこみがあり,また中胸後側板が前肢の基節に達しないことでオサムシと区別される。世界に広く分布し,日本にも多数の種が知られる。ゴミムシ Anisodactylus signatusは体長 12mm内外で,頭頂に1対の赤い点紋をもち,日本全土のほか,アジア東部,ヨーロッパに分布する。

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百科事典マイペディア 「ゴミムシ」の意味・わかりやすい解説

ゴミムシ

オサムシ科の甲虫の1種。体長13mm内外,黒色。日本全土,朝鮮,中国,シベリアからヨーロッパに分布。やや乾燥した地の雑草の根ぎわ,石下などに潜み,夜間活動して主として他の小昆虫を食べる。オサムシ科は全世界に約2万種,日本にも1000以上の多くの種があり,地上,地中,樹上,湿地などにすむ。

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世界大百科事典(旧版)内のゴミムシの言及

【臭腺】より

…成虫は,胸部の後脚の根元に開口する1対の分泌腺を持っている。ゴミムシ類は,別名ヘッピリムシと呼ばれるように刺激性の悪臭のあるガスを腹端から噴射する。カメムシの臭腺分泌物には主にアルデヒド類が,またゴミムシ類の分泌物には脂肪酸,キノン,フェノールなどが確認されている。…

※「ゴミムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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