サハリン島(読み)さはりんとう

日本歴史地名大系 「サハリン島」の解説

サハリン島
さはりんとう

宗谷海峡を隔てて北海道の真北に位置し、九四八キロにわたり南北に細長く延びる島。国際的には「サハリン島」とよばれるが、その語源は「黒」を意味する満州語で、清国の康熙帝が作製させた中国全図「皇輿全覧図(一七一七年)に「サハリン・ウラ・アンガ・ハタ」(黒竜江口の峰)と記されたことに由来する。わが国では古くから「からとしま」もしくは「からふとしま」とよんでおり、「唐太」という漢字を当てることがあったが、それはカラヒト(唐人)の訛音だろうという(北夷分界余話)。「樺太」という当字は明治二年(一八六九)に蝦夷地探検家の松浦武四郎が与えたものである。

サハリン島の東西の最大幅は約一五〇キロ、最小幅はわずか二八キロで、その面積約七万六〇〇〇平方キロは北海道よりわずかに小さい。標高一〇〇〇メートル前後の東サハリン山脈と西サハリン山脈が南北に延びているので、概してなだらかな山地が多いが、北部には北サハリン低地が広がり、中部のトゥイミ川・ポロナイ川・ルータカ川流域には平野も発達している。海岸線は単調で天然の港に乏しく、南西岸は地盤の隆起運動による海岸段丘が顕著である。気候は亜寒帯に属し、冬季にはシベリア大陸からの季節風やオホーツク海の寒流の影響を受けて同緯度の他地方と比べると著しく寒冷である。ただ対馬暖流に洗われる南西沿岸は比較的に温暖で、ホルムスク(真岡)以南の港は冬季も結氷しない。その他の沿岸では一二月から四月までは結氷し、アムール河湾では大陸との氷上交通が可能となる。植物相はシベリアから連なる針葉樹林帯(タイガ)で、全島の半ばが森林に覆われている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サハリン島」の意味・わかりやすい解説

サハリン島
サハリンとう
ostrov Sakhalin

日本名樺太 (からふと) 。ロシア東部,サハリン州を構成する島。西はタタール海峡によってアジア大陸東岸からへだてられ,南は宗谷海峡をはさんで北海道に相対する。南北約 950km,東西 30~160kmの細長い島で,面積7万 6400km2。北部に北サハリン平野があるほかは大部分が中山性の山地から成り,ポロナイ川とトゥイミ川の河谷をはさんで,東・西サハリン山脈がある。最高峰は東サハリン山脈のロパチン山 (1609m) 。気候は冷涼で,全島森林地帯に入るが,北部にツンドラがみられる。日本では古くは唐太と書き,松前藩がその経営にあたったが,1807年江戸幕府の直轄領となり,09年北蝦夷と公称した。一方ロシアも 17世紀なかば以降この地の探検を行なっており,ロシアの南下に対抗するため日本政府も数回にわたり調査隊を派遣,1809年間宮林蔵によりサハリンが大陸の一部でなく離島であることが確認された。 49年にはロシアの G. I.ネベリスコイ間宮海峡 (タタール海峡) を確認し,サハリンのロシアへの併合を宣言,60年代からはロシアの流刑地として利用された。明治維新後の 69年日本政府は樺太と改称し,翌年樺太開拓使をおいたが,75年樺太・千島交換条約により全島が公式にロシア領となった。その後日露戦争の結果,1905年ポーツマス条約により北緯 50°以南の南樺太が再び日本領となり,07年樺太庁がおかれ,以後南樺太の日本領有が続いたが,第2次世界大戦後,サンフランシスコ講和条約で日本はソ連に対しサハリンにおけるすべての権利,権限,および請求権を放棄した。その後は,千島列島とともに,全島がロシアのサハリン州に編入されている。漁業,木材加工,鉱業 (石油,天然ガス,石炭) などが行われる。州都ユジノサハリンスクのほか,コルサコフ,ホルムスク,オハなどの都市がある。北部のオハ沖の大陸棚では 77年以降日本との共同で石油,天然ガスの探鉱,開発が進められている。人口 71万 7500 (1991推計) 。

サハリン島
サハリンとう
Ostrov Sakhalin

ロシアの作家 A.チェーホフの長編ルポルタージュ。 1893~94年発表。 90年チェーホフが約3ヵ月間単身シベリアを横断してサハリン島 (樺太) に旅行したときの記録。調査カードが1万枚以上に及んだと伝えられる膨大な報告書

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世界大百科事典(旧版)内のサハリン島の言及

【チェーホフ】より

…1887年の戯曲《イワーノフ》の上演は,劇作家としてのチェーホフの地位を不動のものとした。90年結核の身をおしてサハリン(樺太)に旅行,《サハリン島》(1893‐94)と題するルポルタージュを書いた。92年モスクワ州メーリホボに別荘を求めて住んだ。…

※「サハリン島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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