サボテン(仙人掌)(読み)サボテン

百科事典マイペディア 「サボテン(仙人掌)」の意味・わかりやすい解説

サボテン(仙人掌)【サボテン】

本来はウチワサボテン属の一種に付けられた名だが,一般にはサボテン科の植物の総称として用いられている。分類学者の見解にもよるが,約30〜200属1000〜2000種があり,旧世界に分布するリプサリスを除き,メキシコを中心として南北アメリカ大陸の乾燥地に広く分布している。しかし,なかにはアンデスなどの標高4000m以上の高冷地に生育するものや,熱帯多雨林の樹木に着生するものなどもある。あるいはウチワサボテン類のように,熱帯各地で野生化しているものもある。産地,種類により生態も変われば形態も千差万別で,植物の環境変異のよい見本となっている。多くは乾燥に耐えるため葉をなくし,水分の蒸散を防ぎ,茎は多肉質となって保水の役目を果たす。とげは外敵から身を守ると考えられている。花はふつう花弁とがくの区別がしにくく,おしべは多数,めしべは1本で子房は普通1室である。果実は液果で汁が多く,多数の種子ができる。サボテン科の植物は,1.葉状の葉をもつコノハサボテン亜科,2.早落性ではあるが鱗片状の葉をもつウチワサボテン亜科,3.まったく葉をもたないハシラサボテン亜科の3群に分類されるが,ほとんどの属はハシラサボテン亜科に属している。 日本へは寛永年間にオランダ船が長崎にもってきたのが初めとされ,以来民衆愛玩(あいがん)植物となり,特に明治30年代,大正の初め,昭和初期に大流行をした。現在でも日本園芸界の大きな部門の一つで,その収集と品種改良,栽培技術は世界に有名である。観賞以外の用途としてはL.バーバンクの改良したとげなしウチワサボテンの飼料用のほか,メキシコではウチワサボテン類の新梢を野菜として使い,果実も食用にする。薬用植物としての研究も盛んで,近年は果実からジャムやゼリーを作り,サボテンの漬物も作られている。最近は,ピタヤの名でハシラサボテンの一種の果実が果物として売られている。またサボテンに寄生するエンジムシからは染料コチニール)が採られる。繁殖は実生(みしょう),さし木,つぎ木によるが,栽培に当たっては灌水(かんすい)の要領をのみこむことが肝要である。
→関連項目熱帯植物

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