メスカリン(読み)めすかりん(英語表記)mescaline

翻訳|mescaline

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メスカリン」の意味・わかりやすい解説

メスカリン
めすかりん
mescaline

幻覚物質で、メキシコサボテン一種Lophophoria williamsiiの肉質茎に含まれるアルカロイドの一種。精神異常誘発物質として、マリファナとともに古くから知られ、メキシコや北アメリカのインディアン部族に広がっているサボテンの乾燥物であるペヨーテpeyoteは宗教上の儀式に欠かせないものであった。

 化学名は3・4・5‐トリメトキシフェニルエチルアミンで、化学構造上はエピネフリンアドレナリン)と類似している。正常な人に1キログラム当り5ミリグラム投与すると、不安や交感神経興奮作用とともに、生き生きとした幻覚を生ずる。耽溺(たんでき)性はない。メスカリン統合失調症やその他の精神病状態、あるいは幻覚をおこさせる実験的な手段としてのみ使用され、医薬品としては用いられない。

[幸保文治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メスカリン」の意味・わかりやすい解説

メスカリン
mescaline

アメリカ西南部,メキシコ産のサボテン科のウバタマ Lophophora williamsiiから得られ,合成もされている幻覚発現薬である。 1896年にベルリン大学の A.ヘフターと L.レビンがメスカリンを単離し,1919年に E.シューペットが化学構造を明らかにした。カテコールアミン類似の構造を有しており,弱いアドレナリン様作用を示す。幻覚発現にはLSDに比べ大量 (5mg/kg) を必要とするが,視覚の変化は LSDより強く,作用は長く,10時間以上持続する。その他,不安,交感神経様作用,反射亢進,振戦などが現れるため,精神病研究に利用される。

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