日本大百科全書(ニッポニカ) 「メスカリン」の意味・わかりやすい解説
メスカリン
めすかりん
mescaline
幻覚物質で、メキシコ産サボテンの一種Lophophoria williamsiiの肉質茎に含まれるアルカロイドの一種。精神異常誘発物質として、マリファナとともに古くから知られ、メキシコや北アメリカのインディアン部族に広がっているサボテンの乾燥物であるペヨーテpeyoteは宗教上の儀式に欠かせないものであった。
化学名は3・4・5‐トリメトキシフェニルエチルアミンで、化学構造上はエピネフリン(アドレナリン)と類似している。正常な人に1キログラム当り5ミリグラム投与すると、不安や交感神経興奮作用とともに、生き生きとした幻覚を生ずる。耽溺(たんでき)性はない。メスカリンは統合失調症やその他の精神病状態、あるいは幻覚をおこさせる実験的な手段としてのみ使用され、医薬品としては用いられない。
[幸保文治]