改訂新版 世界大百科事典 「サムライアリ」の意味・わかりやすい解説
サムライアリ (侍蟻)
Polyergus samurai
膜翅目アリ科の昆虫。ヤマアリ亜科に属し,働きアリの体長は5~6mm,全体に黒色で腹部のみやや灰褐色,大あごは細く鎌状。初夏の日中に行われる婚姻飛行の後,雌アリはクロヤマアリの巣をさがして侵入し,鋭い大あごでクロヤマアリの女王アリをかみ殺す。数日後にはクロヤマアリの働きアリは侵入したサムライアリの女王(雌)アリに仕えるようになり,以後,巣ではサムライアリのみが産みおとされるようになる。サムライアリの働きアリは食物を集めたり幼虫を育てるといった労働能力を欠いているので,奴隷狩りを行っては労働力を補充する。夏の日中にサムライアリの働きアリ数百匹が隊列をつくって繰り出し,クロヤマアリの巣に侵入して幼虫や繭を略奪してもち帰る。それから生まれるクロヤマアリはサムライアリに労働奉仕して一生を終わる。巣はクロヤマアリがつくるのでクロヤマアリのものとまったく同じになる。本州,四国,九州および朝鮮半島に分布する。
執筆者:久保田 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報