改訂新版 世界大百科事典 「クロヤマアリ」の意味・わかりやすい解説
クロヤマアリ
Formica japonica
膜翅目アリ科の昆虫。働きアリの体長は5~6mm,全体に黒色で短い軟毛を密生しているので光沢のない灰黒色を呈する。日当りのよい場所の地中に営巣し,巣は地下3m近くにまで達するものがあり,大きな巣では働きアリの数は数千匹となる。人家の周辺でもふつうに見られ,北海道から九州にまで分布し,国外ではシベリア東部,サハリン,中国,朝鮮半島および台湾の山地にも生息する。本州の中部では海岸地帯から山地にまで分布し,標高1500m付近でヤマクロヤマアリF.lemaniと入れかわるが,両種の分布境界は非常にはっきりしている場合が多く,動物の垂直分布の境界がもっとも明りょうなものの一例である。おもに昼間活動し,小動物を巣にもち帰るほか,アブラムシの排出液や花のみつを集める。羽アリは7月ころ,日中に婚姻飛行を行う。
執筆者:久保田 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報